「任せ方の教科書」〜部下を動かし成果を上げる「任せ方」とは〜:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(3/3 ページ)
任せると部下のモチベーションが一番上がると分かっていても、なかなか任せることができない上司の悩みを解決。
経験の浅い部下への指示は複数のステップに分けて出す
仕事の完成形や流れを教えたからといって、経験の浅い部下に「後は任せた」と丸投げしていいわけではありません。相手の能力や仕事への慣れ具合も踏まえ、適切な指示を出すことが必要です。
例えばパワーポイントで資料を作成させる場合は、まず「A4用紙1枚に、手書きで資料全体のストーリーを作ってみよう。できあがったら見せるように」と伝えます。部下が作ったものを確認して問題なければ、「次はパワーポイントに落とし込んでほしい」というように、2段階に分けて指示するのです。
調べ物をしてレポートを作成してほしいなら、「○○について5年間のデータを集めてほしい。続きはデータが集まったらそれを見ながら話し合おう」、新しいプロジェクトを検討するなら「まずこのプロジェクトを推進する場合のメリットとデメリットを上位5つずつ挙げてみよう」などというように、まずは中間地点までの指示を出し、それができたら次の指示をするのが現実的なやり方でしょう。
大きな仕事であれば、複数のステップに分けてもかまいません。大切なのは、プロセスを分けて指示を出し、途中でチェックしてやることです。
経験の浅い部下に指示を出す際、簡単なメモを作って部下に渡しておくのもいいと思います。私のかつての上司は、指示を出す際にA4の4分の1サイズの紙に指示を書いたメモを渡してくれたものでした。右も左もわからない新人だった私は、そのメモを頼りに仕事をしたものです。
メモを渡しておくと、部下への指示が明確になるだけでなく、指示の行き違いも防ぐことができます。
ほかにも「まずはたたき台を作ってほしい」と少しレベルを下げる方法や、「中身は違うがこの書類を参考にしてみて」と前例を見せる方法などもあります。リーダーが指示の出し方を少し工夫するだけで、部下は安心して仕事を進められるようになるのです。
いかがでしょうか。どれもすぐにできる具体的な方法ですので、仕事の任せ方に悩んでいる上司、リーダーの方にぜひ一度試してみてもらえればと思います。
著者プロフィール:古川裕倫(ふるかわ ひろのり)
1954年生まれ。早稲田大学商学部卒業。1977年三井物産株式会社に入社し、エネルギー本部、情報産業本部、業務本部投資総括室にて23年間勤務。その間、ロサンゼルス、ニューヨークに通産10年駐在。2000年から2007年まで株式会社ホリプロの取締役を務める。
現在、株式会社多久案代表、日本駐車場開発株式会社社外取締役、情報技術開発株式会社社外取締役。「先人・先輩の教えを後世に順送りする」「日本と世界の小さな架け橋になる」を信条に、2008年から塾長として「世田谷ビジネス塾」(無料読書会+交流会)を定期的に開催している。また、最近は「女性幹部を目指す人のために志と人間力を磨く場と機会を提供する」一般社団法人彩志義塾を設立。2013年より女性幹部を目指す女性社員向けの私塾である『女性社員のための「立志塾」』および講演活動に従事している。
著書に『他社から引き抜かれる社員になれ』(ファーストプレス)、『課長のノート』(かんき出版)、『「バカ上司」その傾向と対策』(集英社新書)、『コーチング以前の上司の常識 「教え方」の教科書』(すばる舎)、『女性を活用できる上司になる』(扶桑社)など多数。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 「問題解決のジレンマ」――「仕事ができるアリ」と「発想が豊かなキリギリス」は真逆の思考をする
- 鷹は、自らの爪・羽根・くちばしを折ることで、生まれ変わる
- あなたに合ったリーダーシップが見つかる! 40のリーダーシップと4つのマネジメントスタイル
- 99%の人がやせると話題のライザップ、その快進撃の秘密とは?
- 今の会社に残るか? 移るか? 独立か?――70歳まで働く「社会人人生50年時代」到来のいま、30代以降の転職を成功させる方法
- 挨拶ができる人は、会話ができる
- 「社長の覚悟」守るべきは社員の自尊心
- 優秀なリーダーほど、コンサルタントを上手に使っている! ――自社、自部門の業績を向上させる、本当のコンサルティング活用策
- 「やわらかい頭の作り方」――自ら柔軟に変化していくためのヒント
- 頑張らなくても、すごい成果がついてくる! ――「いいひとマネジメント」から「ずるいマネジメント」への転換のススメ
- 最速で成果を出すために、「やることを絞る」人になる
- 今日も208回謝った! でもそれは、チャレンジの証
- 方針浸透のカギを握るマネジメント職――真意を伝えるために「チーム」の力を生かす
- なぜ、あのリーダーには、自然と人がついてくるのか?――人を引きつける「おもしろさ」の流儀
- 怒ったって良いじゃないか――リーダーは怒りをエネルギーに転じよ
- 僕たちは「会社」でどこまでできるのか?――モーニングピッチ「創業者」塩見哲志氏は、いかにしてイントレプレナーになったか?
- 器の大きい人は、メールラリーを、相手のメールで終わらせる度量がある
- 権威を後ろ盾とした思考停止は、一刻も早く改めたほうがいい
- 「“具体的”であることだけが本当に良いのか?」――「具体と抽象の往復」で考える
- リーダーは「孤独」を楽しめ――死ぬ気で働くリーダーにだけ人はついてくる
- 学歴や能力以上に大切なモノがある。それは、「好かれる」こと
- 銀座のママが教える、ビジネスパーソンが持つべき「心意気」とは?
- サイバーエージェント出身起業家が教える「ズバ抜けた結果」を生むメンバーの育て方
- 90日プランで見える結果をすぐに出す「初速思考」
- 吉田美和の歌詩で心を耕し、仕事への活力を養う
- 日本にこそ「クラウドファンディング」。その魅力とは?
- メンタルヘルスに強いリーダーになる! 簡単な方法
- 一流の人は真正面からうけとめない。「正攻法」を放棄するという「成功法」
- 物事の本質を見極めれば、グローバルに成功できる
- 葛藤を引き受ける覚悟がリーダーを成長させる
- 「仕事ができる人」より、「品のある人」が、チャンスをつかむ
- 「仕事づくり」でもっとも大切な考え方と行動
- 説得せずに説得する
- 「第8の習慣」が提示する、真のリーダーシップとは
- ダメ会議をやめたら会社が生まれ変わる!
- 逆境を一瞬で打破した人々が体得した「努力」×「閃き」の法則
- うまくいく人とうまくいかない人の違いとは?
- ビジネスに効く最強の「読書」
- 行動科学で組織の成果を上げる
- コーヒー業界から最新ビジネス戦略が分かる――「戦略は“1杯のコーヒー”から学べ」
- 「社畜脱走計画」のために知っておかなければならないこと
- 仕事に効く教養としての世界史
- 上司の機能を使い倒せる社員こそが、会社を成長させる
- 10年後も見た目が変わらない人
- 「本物の勉強法」──「試験」「仕事」に、一生使える勉強法
- 成功者になれる人にしか理解できない!? プラスの現実逃避
- チームシップが企業に与える影響とは
- 「三菱商事の鈴木です」と言う自己紹介は世界標準ではありません!──グローバルに活躍する技術
- 稼ぐ人はなぜ、1円玉を拾うのか?