「○○」を「××」することが明日への第1歩――ドラッカーの答えは「昨日」を「廃棄」すること:ITmedia エグゼクティブ オープンセミナーリポート(2/2 ページ)
ピーター・ドラッカーは、企業経営に最も影響を与えたひとりいわれている。ドラッカーの理論から最強の経営チームのつくり方を学ぶ。
そこで、なぜパワーショベルやブルドーザーが必要なのかを調べてみた。答えは、庭を日本庭園のようにしたかったので、ホームセンターや造園会社に相談してみたが、満足できる回答が得られなかったため、パワーショベルやブルドーザーを持っている会社ならできるのではないかと考えたためだった。
これによりこのリフォーム会社は、それまで見えていなかった「ガーデニング」という予期せぬ顧客の要望を発見した。ガーデニングを会社の新たなサービスとして提供を開始したところ、一気に業績を回復することができた。
この業績回復は、経営者や管理職のアイデアや発想、ひらめきなどではなく、見えていなかった顧客のニーズ、思ってもいなかった顧客の情報から発見したものである。顧客は悩みを打ち明けていることが多いが、自社の商品を売り込むことで頭がいっぱいのため、顧客の悩みを聞いていないのが実情である。
「予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ要望、予期せぬ出来事を、日報、週報、月報のような形で提出させることにより、顧客のニーズを聞く文化が醸成され、情報が蓄積されることにより、あらたなビジネスを創出しやすい環境を実現できる」(山下氏)
御社から買いたい! と言われるために
「基本と原則に反するものは、例外なく破たんする」――ピーター・ドラッカー
この言葉が意味するのは、当たり前のことを当たり前にやらなければ、100パーセント失敗するということである。パンの材料を用意するので、おいしいパンを作ってほしいと言われても、パン屋よりおいしいパンを作ることは困難である。いくら材料がそろっても、おいしいパンを作る原理、原則を知らないためである。
マネジメントや経営も同じで、同じ材料(資源)を使っても、おいしい作り方(マネジメント)を知っている場合とそうでない場合では、出来上がり(成果)がまったく違ってしまう。また、同じ斧(労力)を使っても、切れない斧(ムダ)では、目標を達成する速さ(売上)が違う。学ぶ組織と学ばない組織はここで差が出る。
もっとも重要なのは、「何のための事業か」「誰のための事業か」「お客さまが得たいのは何か」「お客さまの良い変化とは何か」「どう進めていくか」の5つを問うことである。どう進めていくかは、具体的なゴールを見据えた計画を立て、その計画に基づき、顧客の良い変化とは何かを考え、その計画が適切かを考えながら実行することだ。
「顧客にとって現実でありながら、わが社に見えていないものは何か?」――ピーター・ドラッカー
例えばある芳香剤のメーカーは、取引先から「透明のパッケージが欲しい」との要望を受けた。芳香剤の機能は、「臭いにおいを消す」「いいにおいを出す」の2つであり、芳香剤のパッケージは何色でも関係ないと考えていた。そのため、当初は特注に難色を示していたが、要望どおり製造して販売したところ売り上げが約13倍に伸びた。
「調べてみるとデザイン会社やホテルなどに、シンプルなデザインの芳香剤が求められていた。透明の芳香剤が顧客の現実でありながら、メーカーや販売店に見えていなかったのである。自分たちの事業が、誰のための事業なのかを明確にしておくことが必要。顧客を明確にすることで、何のための事業かも明確にできる」(山下氏)
「ミッションからスタートしなければならない。ミッションを失えば、われわれは、迷い、資源を浪費する」――ピーター・ドラッカー
社会は大きく変化している、いろいろな会社がこれまでにない明日を実現するために模索している。明日を実現するための第1歩が、「○○」を「××」することである。
最後に山下氏は「あなたの会社は、"○○"と"××"にどのような言葉が入るだろうか。正解があるわけではないが、ドラッカーは"昨日"を"廃棄"することだと語っている。新しい未来を築くには、過去の成功体験をすべて忘れ去ることである。過去の成功への執着を捨てることで、新たな価値を生み出すことができる。それらの仕事を実践する結果として、将来にわたって繁栄する経営基盤となる最強の経営チームになる」と締めくくった。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 会社で人の話を聞かないリーダーは家庭でも聞かない――成功するリーダーの人づきあい術を学ぶ
- 尊厳ある人生を享受するために――病から自分を守る予防術とは
- 型に始まり型に終わる能の精神――文化や伝統を守りながらも革新性を追求
- 必要なときには上手に怒り、理不尽に怒らない――怒りはコントロールできる
- 実は変化や多様性に強い日本人――自分と違う考えを認める勇気を持つ
- 伝える文章ではなく伝わる文章を
- 大人が夢中のブロックによる作品で想いを共有
- 20代男性が好きなサッカー選手は?――つぶやきの分析でマーケティングが変わる
- リーダーこそ挑戦を――トライアスロンでチーム力と時間のマネージメントを学ぶ
- 途上国に必要なのは寄付ではなく「もの作り」――バングラデシュから始まったマザーハウスの挑戦
- 事件発生! そのとき検事は――検事の観察力、推理力、行動力をビジネスに生かす
- 映画の世界はノンフィクション?――ミッション・ポッシブルなサービス事例を一挙放映!
- 「ルンバ、トリダス、UCCミルクコーヒー」――ヒットの影にニーズの断捨離あり
- 業績向上の秘訣とは――ナレッジファシリテーションで暗黙知を見える化する
- ビジネスを成功に導くための「人の動かし方」
- 相手7、自分3の聞き上手になる──大切なのは「またあの人に逢いたい」と思わせること
- 禅的マネジメントの実践──こだわりを捨て、集中し、仕事とひとつになり、愚直に努力する
- 「んっんっんっんっ、おぬしも悪よのう」──悪代官でボイストレーニング
- 自分自身のキャリアを客観的に把握――キャリアを生かして問題にチャレンジ
- 意外に楽しい自分史づくり――平均寿命80歳以上の今セカンドライフを考える
- 女性の活躍は日本を救うか?――会社役員を目指す女性社員を育てよう!
- オオクワガタは男のロマン!――オオクワガタの飼育でサービスサイエンスを検証
- 常識も東西南北――アイデア外交官が42年の外交を振り返る
- いかにデータを読み、実務に落とし込むか――人を育て、データを見て、毎日改善する
- ビジネスモデル・キャンバスを学ぶ――2日間で事業イノベーションをデザイン
- ビジネスの新指標「B.Q.」――知的感性時代の革新型リーダーの開発
- 100時間悩んでも売上は上がらない――大切なのは"考える"こと!
- よいアイデアを素早く実行して素早く失敗――学習主義で沸き立つ会社になる
- マジンガーZの格納庫は72億円――独創的なアイデアで広報活動を活性化
- ビジネスに直結するプレゼンテーションのテクニックを学ぶ
- 声のスイッチ「横隔膜」を鍛えてビジネスボイスを手に入れる
- 記録により何を残すか――「継続するということ」を東大寺1300年の歴史に学ぶ
- ソーシャルメディアの活用で事前期待のマネジメントを実践
- これからの企業は21世紀型市場に適した持続可能な事業戦略を
- 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
- 検索キーワードから中国市場を探る
- あらゆるマーケティング活動はデータを取って分析・活用を――ネットイヤーグループ石黒CEO
- 人と本と旅から考える力を学び、自分のいる場から世界を変えていく ――ライフネット生命保険 出口社長