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ビジネスアナリスト導入に向けた考慮ポイントビジネスとITを繋ぐビジネスアナリシスを知ろう!(2/2 ページ)

日本でもビジネスアナリシスへの理解が深まり、ビジネスアナリストの配置や育成に力を入れる企業も増えてきている。「ビジネスアナリストをどう育て、どう活かすか」押さえておきたいポイントを紹介する。

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ビジネスアナリストの配置

 ビジネスアナリストをどの部門に配置すべきか?

 これは多くの企業で関心の高いテーマのひとつではないでしょうか。

 任せたい役割だけでなく、事業の特性や組織の規模によっても、最適な配置先は変わります。実際、IIBAがグローバルで実施した調査によると、ビジネスアナリストの所属先はIT部門に限らず、ビジネス部門、PMO組織、CoE(Center of Excellence)など多岐にわたっています。ビジネスアナリストは組織の目的や状況に応じて、さまざまな形で活躍していることが分かります。


IIBA 2022 Global State of Business Analysis Reportよりアンケート回答者の所属部門

 配置を検討する際には、期待する役割を発揮しやすい環境や、関係部門とのコミュニケーションの取りやすさ、組織間の力関係、評価体系などを総合的に考慮することを勧めます。

 例えば社内のシステム導入を任せたい場合、IT部門に配置すれば、ユーザー部門に対して“第三者”というより“IT部門の一員”として接するケースが多くなります。一方、業務理解を重視してユーザー部門側に配置する場合は、ユーザーの立場に寄り添い、IT部門との橋渡し役や交渉役を担うことが増えます。

 筆者が所属するビジネスアナリストチームでは、自社のIT導入・保守から全社変革プロジェクトの企画・推進、さらにはPMO機能まで、幅広い領域を担当しています。

 そのため、事業部門にもIT部門にも属さず、独立したチームとして活動しています。この独立性が、全社的な視点で変革を進めるうえで大きな強みになっていると感じています。

ビジネスアナリストの処遇・育成

 中途採用や社内異動で人材を確保したあとに大切なのが、「どう育て、どう評価するか」です。ビジネスアナリストを配置したのに思うような成果が出なかった、という声を耳にすることがありますが、原因をたどると多くの場合、評価や育成の仕組みが十分に整っていないことに行き着きます。

 特に難しいのが“評価”です。ビジネスアナリストの仕事は短期間で結果が見えるものではなく、中長期的な視点で見なければ本来の価値を測れません。一方で、多くの企業の人事制度は半期、長くても1年単位で運用されているため、努力や貢献が十分に評価に反映されにくいのが現状です。

 成果主義を掲げる企業ほど、ビジネスアナリストは評価されにくく、モチベーションの維持にも課題が生まれます。だからこそ、成果だけでなくプロセスも含めて評価する視点が必要です。

 育成の仕組みも同様に重要です。ビジネスアナリストは、チームで一体となって働くというより、それぞれが参画先の現場で個々に活躍するスタイルが多い傾向にあります。 そのため、日々の業務の中では先輩の仕事ぶりから学ぶ機会が限られ、どうしても我流になってしまうこともあります。

 だからこそ、意識的に“横のつながり”をつくることが大切です。プロジェクトを一歩離れた場所で、悩みや学びを共有し、フィードバックを得る、そうした対話の積み重ねが内省や学習を促し、スキルの磨き上げにつながります。

 任せたい役割の定義、所属先、評価や育成の仕組みといったポイントを丁寧に整えながら、配置したビジネスアナリストが真に活躍できるまでには、数年単位の時間がかかります。決して簡単な道のりではありません。しかし変化の激しい時代だからこそ、ビジネスアナリストの存在が組織変革の鍵を握ります。 本稿で挙げた考慮ポイントが、みなさんの組織でビジネスアナリストを活かす一助になれば幸いです。

著者プロフィール:大井悠

2009年に株式会社エル・ティー・エス(LTS)へ入社。

以降、業務変革・業務改善プロジェクトに多数参画し、企画構想から業務設計、IT導入支援、定着化までをビジネスアナリストとして担当。

特に、IT導入を伴う業務改革において、業務構造の可視化・モデル化を通じた課題分析や、ビジネス要求の整理、移行・教育計画策定などを得意とする。

現在は自社内で社内外のビジネスアナリシス知見の体系化と人材育成を推進し、「変革を外部依存にせず、組織が自ら変革を実行できる力を持つこと」をテーマに、ビジネスアナリスト職の確立・普及活動にも注力している。

著書に『Process Visionary ― デジタル時代のプロセス変革リーダー』(共著、翔泳社)がある。


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