話題の著者に聞いた“ベストセラーの原点”
『田舎の紳士服店のモデルの妻』著者 宮下奈都さん(3/3 ページ)
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
自分がおもしろいと思える本を一冊ずつ書いていきたい
――宮下さんにとって“おもしろい小説”とはどんな小説ですか?
宮下:「読み手の立場で言うと、仕掛けとか話の筋よりも“あの一行が忘れられない”っていう本のことをよく覚えているんですよね。だから描写のおもしろさだと思います。
書き手としては……この本の主人公もそうなんですけど、途中で“何かが変わる”瞬間があるんです。そこを書けた瞬間に自分の中でおもしろいっていう感じがするんです。
読んでくださる人も、その部分を読んでハッと気付くわけではなくても、“ああ何かちょっと変わったな”というのを手ごたえとして感じてもらえたら、おもしろいと思ってもらえるんじゃないかと期待してるんですけど…(笑)“成長”ではなくただの“変容”であったとしても、やっぱり何か変わっていてほしいんですよ。生きて様々なことを経験しても全く変わらない人っていないと思うので」
――宮下さんがこれまでの人生で影響を受けた本がありましたら三冊ほどご紹介いただければと思います。
宮下:「一冊目は、山田太一さんの『沿線地図』です。高校生の最初の頃に読んで眼が覚めたっていうか、小説として読んだっていうよりも、それこそ人生に直接影響を受けたという感じです。“こんな寝ぼけた生活はダメだ!”って思って(笑)何だか走り出したいような気持ちになったのをはっきり覚えています。それと山本周五郎さんの『柳橋物語』と、最後はジョン・アーヴィングの『サイダーハウスルール』。私がいいと思う小説は“あーおもしろかった!”というものじゃなくて、私は私として生きて行くんだという気持ち、燃えるような気持ちにさせてくれる本なんです。この三冊はそういう共通点がありますね」
――今後の作家としての目標がありましたら教えていただけますか。
宮下:「売れる売れないという意味じゃなくて、純粋に“これ、読んでみて”と言える、自分が自信を持っておもしろいと思える本を一冊ずつ書いていくことですね。一番身近であり大きな目標です」
――最後になりますが読者の方々にメッセージをお願いします。
宮下:「読んでおもしろいと思っていただけたらうれしいです。ぜひ読んでみてください」
取材後記
書くことも読むことも大好きな点といい、小説を書き始めた動機といい、作家になるべくしてなった方、という印象を受けた。
今回、発売された『田舎の紳士服店のモデルの妻』はご本人が語る通り、淡々と物語が進むが、それは読んで退屈だということでは全くない。淡々と書くことでしか表現できない“何か”を是非読みとってほしい。
(取材・記事/山田洋介)
著者プロフィール
宮下奈都
上智大学文学部哲学科卒。2004年、「静かな雨」が文學界新人賞佳作に。長編『スコーレNo.4』(2007年)も各メディアで絶賛された。その他の著作に『よろこびの歌』(実業之日本社)、『遠くの声に耳を澄ませて』(新潮社)、『太陽のパスタ、豆のスープ』(集英社)などがある。
Copyright(c) OTOBANK Inc. All Rights Reserved.
話題の著者に聞いた“ベストセラーの原点”
関連記事
ITmedia エグゼクティブのご案内
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。 勉強会のスケジュールはこちら
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入して申請ください。審査のうえ登録させていただきます。
- 入会条件:
- 上場企業および上場相当企業の課長職以上
※入会は無料です
エグゼクティブコンテンツ
SpecialPR
アクセスランキング
-
1
「大企業は一朝一夕には変わらない」 NTTデータ冨安寛氏がAI時代に重視する原理原則
-
2
イギリスの食材で仕上げる江戸前寿司「英国鮨」が池袋にオープン
-
3
初心者向けの料理教室、男性受講生が過半数に 家庭での調理頻度も増加
-
4
ほんのちょっと心の持ちようを変えるだけで、人生も毎日も変わる
-
5
なぜ答えが揺れ、堂々と間違えるのか ―― 確率で動く生成AIの正体
-
6
イオン、フィジカルAIで物流改革 配送拠点の自動化率5割達成 深刻な人手不足に対応
-
7
なぜコーポレートITはコスト削減率が低いのか――既存産業を再定義することでDXを推進
-
8
子供の夢をYouTuberからホワイトハッカーに! 具現化を進めるCISO - GMO 牧田氏
-
9
第55回:「誰が言ったか」で判断していないか──SNS時代、エグゼクティブに必要な「空気に逆らう力」
-
10
経営と現場の板挟みになりがちなガバナンス、優先してやるべきことを明確に――リクルート 鴨志田昭輝氏
ITmedia エグゼクティブ SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaエグゼクティブをフォロー