9割の人ができるのに、やっていない仕事のコツ:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
どんな企業でも「優秀な社員」には共通点がある。その共通点は他の人でもできるのにやっていないことだったりする。優秀な社員の秘密とは。
「バランス感覚」と「意思決定」の微妙な関係を理解する
経営幹部や人事関係者による昇進、昇格人事の議論に多頻度で出てくるのが「バランス感覚」というキーワードです。バランス感覚とは、いわゆる、「常識的な尺度」という意味でのバランス感覚ではありません。ビジネスパーソンに求められる「バランス感覚」とは、利害調整能力のことです。「営業」と「技術」、「設計」と「製造」、といった二律背反的なことに対し、うまく調整していこうという意味合いが強いと言えます。
ただ、20代から30代前半のビジネスパーソンには、利害の調整なんかより、優先すべきことがあります。「実力を蓄える」、その一点に全力集中すべきだと思うのです。
20代から30代前半という、「仕事の基礎体力」を養う時期に、利害調整などといったことばかりしていると、肝心の「仕事の基礎体力」がついていきません。もちろん、そうしたマネジメント業務がメインの仕事であれば話は別ですが。
今は、「スペシャリストが求められる時代」です。かつては、利害調整の能力が秀でているだけで評価をされましたが、今はそのような時代ではありません。ですから、30代前半まではとにかく仕事の基礎体力を養い、仕事の「突破力」を身につけることに全力を傾けてほしいと思います。
突破力とは、問題に直面している時にその問題を解決し、前に進める力のことです。正解が分からない時でも、試行錯誤しながら前に進む実行力とも言えます。眼前にそびえ立つ「壁」を破壊するパワー、それが突破力に違いありません。
ただ、ある程度、経験を積んだ中堅以上の人には、もちろんバランス感覚が必要です。例えば、営業部門で言えば、「取引先」と「社内の関連部門」との対応を調整することが不可欠となります。具体的には、「顧客第一主義」ということで、顧客の要求にすべて応じていると、設計や製造といった後工程を担う部門でトラブルが発生してしまうことも少なくありません。そこをうまく調整する必要が出てくるのです。
バランス感覚の本質とは、「バランスを取るところが何なのか」を設定する力のことです。それにはまずは、自分の立場をつくらなくてはなりません。「YesなのかNoなのか」「A案に賛成なのか、B案なのか」という自分の立場を。
一番大切なのは、「バランスを取ることより、意思決定をすること」なのです。このビジネスの鉄則を、ぜひ、中堅のみなさんは、押さえておいてください。その意志決定を的確に行なうためにも、つねに、「自分だったらどうする」と自分の立場をつくることを意識して、業務に臨みましょう。
40代以降のビジネス人生において、自分は、「突破力のあるスペシャリスト」として生きるのか、それとも、「バランス感覚のあるゼネラリスト」として生きるのか……。
どちらを目指すかは、各自の自由です。組織というのは組み合わせです。「突破力のある人に、参謀役としてバランス感覚のある人を組み合わせると、最高のパフォーマンスを発揮しやすい」こうした鉄則があるのです。
自分にはどちらが向いているのか、どちらに自分らしさを感じるのかで選択しても構いません。「周りが求めるほうに進む」ということもありでしょう。それを具体的にイメージしておくことが、あなたのキャリアにとって大切なのです。
著者プロフィール:大塚 寿
1962年、群馬県生まれ。株式会社リクルートを経て、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)でMBAを取得。現在、現場の取材を重ねた上で事務局と一緒に作り上げるオーダーメードの営業研修、マネジメント研修を展開するエマメイコーポレーション代表取締役。
著書に累計25万部のベストセラー「40代を後悔しない50のリスト」「30代を後悔しない50のリスト」「ビジネスパーソンのための結婚を後悔しない50のリスト」(以上ダイヤモンド社)、「1万人の体験から学んだ聞く技術」(PHP研究所)、「9割の人ができるのに、やっていない仕事のコツ」(三笠書房)などがある。
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