サイバーエージェント出身起業家が教える「ズバ抜けた結果」を生むメンバーの育て方:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
サイバーエージェントで史上初の新人賞上期・下期で連続制覇するなど、ズバ抜けた結果を出したリッチメディア創業者坂本幸蔵の失敗を恐れない部下の育て方とは。
資料をすべて「ダメ出し」しない
メンバーに指示を出すときにも、必要以上に出さないように意識しています。
僕が入社2年目にサイバーエージェントの子会社の立ち上げを共にした上司から教えられたことです。その上司は、資料ひとつとっても非常にていねいに仕事をする人でした。
あるときに、罫線が二重になっているなど、人があまり気づかないようなミスを指摘されました。細かいところにまで徹底して目を配る理由をたずねると、その上司は言いました。「神は細部に宿る。細部をおろそかにすることはきみの価値を下げることだ」と教えられました。
僕は経営者なので、いまは資料をチェックする立場にあります。メンバーの作成した資料をチェックして修正すべきポイント10個に気づいたとしても、一番重要なところを1つしか指示しません。すべて伝えてしまうと、指摘された部分しか見ようとしなくなるからです。
仕事では1つのミスが命取りになることもあります。その緊張感を身につけなければ、何度も同じ失敗を繰り返すことになります。時間に追われることが多いリーダーが、細かく具体的に修正の指示を出したくなる気持ちも分かります。ただリーダーの指示とチェックを待たないと動けない人になってしまう懸念もあります。中長期的にチームに貢献してくれるように育つのは、自分できちんと見直す人でしょう。
メンバーに正解を教えすぎてしまうと、メンバーは「正解はリーダーが教えてくれるもの」と認識してしまうのです。
新卒メンバーでも「若手扱い」しない
若手がチームにいたとしても、僕は若手扱いしないようにしています。年齢やキャリアは言いわけの理由にならないからです。サッカーでチームにキングがいたとしても、ピッチに出てしまえば年齢やキャリアなどは関係ありません。
新卒だからと言われると、どこか安心してしまうものです。今年は結果を出さなくてもいいから、しっかり勉強して来年から結果を出せばいいと考えてしまいます。
僕は「◯◯してから」は信じていません。絶対やらない。現時点でリスクをヘッジしている人が、時間が経ってからリスクに挑むとは思えません。
周囲から1年目だから仕方がないと許されてしまうことも、成長の妨げです。「1年目だったらここまでできれば十分」などと、人がつくった曖昧なモノサシで、メンバーを見る必要はありません。
リーダーのほうから、「お前のことは若手扱いしないから。そのつもりで仕事をするように」と伝えてもいいと思います。そう宣言することで責任が生まれ、責任が生まれれば行動も変わります。
入社18日目のメンバーにインドネシア事業の立ち上げを任せた理由
リッチメディアでは、入社18日目の新卒入社1年目のメンバーを、インドネシア事業を立ち上げる責任者にしました。「新卒に新規事業を任せるなんて、ずいぶん思い切ったことをしたな」そう思われるかもしれません。
しかし、仮にうまくいかなかったとしてもチャレンジした新卒社員が気づきを得て成長してくれることで、組織全体でみれば投資に対するリターンは生み出せると確信していました。それ以上に彼自身の財産にもなると考えていました。
「できないこと」にチャレンジするからこそ「できること」が増えます。そのときに大切なのが裁量権を委譲することです。自分が何をやるか自由に意思決定できて、それに対する責任も与える状態を提供するのです。
これは普段の仕事であっても同様です。周囲が「まだ早い」というぐらいの難度の高い仕事を任せたほうが、かえって任せたメンバーの実力が大きく伸びます。
拙著『「ズバ抜けた結果」を出す人の行動習慣』は若手向けに書いたものですが、失敗を恐れないメンバーを育てる参考にもなると思いますので、ぜひご一読いただければ幸いです。
著者プロフィール:坂本幸蔵(さかもと こうぞう)
株式会社リッチメディア代表取締役CEO。
1982年生まれ。摂南大学卒業後、2006年4月、サイバーエージェントに入社。ネット広告の販売で売上月間1億円を突破するなどの実績を残し、同社史上初の新人賞を上期・下期と連続制覇。その新人離れした実績を評価され、入社2年目には子会社CAテクノロジーの役員(当時グループ史上最年少)に抜擢され同社の立ち上げに参画し、サイバーエージェントグループの中核企業、SEOのトップ企業に成長させる。10年6月に独立しリッチメディアを起業。ネットサービス「スキンケア大学」「KamiMado」やウェブサイト製作などを手がけ、月刊『ベンチャー通信』主催の「ベストベンチャー100」に選ばれるなど、急成長中のベンチャーとして注目を集める。
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