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ディズニーは「夢と魔法」で企画をつくる――ヒットを生み出すための10のストーリーITmedia エグゼクティブ オープンセミナーリポート(2/2 ページ)

ディズニーは、なぜ常にたくさんの人を集める企画を生み出せるのか。それは「夢」と「魔法」から生まれてくる。感動を生む企画の秘密を紹介する。

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6、1番重要な要素:すべての始まりはストーリー

 ディズニーでもっとも重要な企画の要素は、「ストーリー」である。商品でも、映画でも、アトラクションでも、企画を伝える手段は問わないが、どのようなストーリーなのかを明確にすることが必要である。

 例えば、ディズニーのアトラクションは、4つのストーリーで構成されている。まず行列で飽きさせないための「キューライン」、アトラクションの背景を紹介する「プレショー」、実際のアトラクションである「メインショー」、出口までの「ポストショー」の4つである。これは「BEAR」によるストーリーの伝達である。

 BEARとは、「Before、Enter/Enjoy/Experience、AfteR」という体験時間の考え方のこと。Before(前)で「気持ちを作る」、Enter/Enjoy/Experience(中)で「背景を知る」と「実際の内容」、AfteR(後)で「出た後も続く」という4つのストーリーで企画が考えられている。

 アトラクションを待っている間も、終わってからもワクワクした気分が続いていたのは、ディズニーの企画通りだったのだ。


4つのストーリーで企画が考えられている

7、インターナルブランディング:チームで書初めをする

 企画では、インターナルブランディングが重要になる。毎年、1月にチームで書初めを行い、7月に七夕で短冊に願い事を書いていた。1月は上期の目標を、7月は下期の目標を書いていた。メンバーが何を考えているかを発表することで、応援する環境を作ることが目的だった。

 自分のやりたいこと、会社の方向性、ゲストの気持ちの3つがすべて共通していることが理想である。大畠氏は、「どれだけ共通化できるかを模索することが必要だった。会社にやらされているのではなく、自分でやっていることが重要。夢は生産性を向上することができる」と話している。

8、マーケティング:ミッキーを消せ

ディズニーの企画は、ミッキーが登場することではない。例えば、ディズニーがハワイに造ったリゾートホテルには、アトラクションやショーは1つもなく、あるのは、「らしい」ホスピタリティだけである。

 「ディズニーらしさとして、ストーリー、イノベーション、クオリティ、オプティミズム(ハッピーエンド)、コミュニティ、ディセンシー(礼儀)、エンターテインメントの7つを実践している。これがディズニーのブランドであり、ミッキーがいることではない」(大畠氏)

 大畠氏は、「重要なのは"らしさ"を考えることである」と話している。

9、PDCA:ディズニーランドは永遠に完成しない

 ゲストの気持ちは、常に変化する。そこでゲストの標準値、期待値を意識する。標準を超えると「感謝」になり、期待を超えると「感動」になる。リピーターは、標準値と期待値が1段高くなるので、同じことをしていたのでは感動は生まれない。ディズニーに限らず、現状維持は後退していることと同じである。

 そこで、PDCAサイクルではなく、STITCHサイクルで考えることが必要になる。STITCHサイクルとは、STory(方向性を考える)、Idea(アイデアに落とす)、Traial(まずやってみる)、CHange(変更する)の繰り返しで企画を改善する手法である。

 「考えるよりも動き、失敗を歓迎することが、ディズニー流感動を生む企画の秘密である。"ディズニーランドは永遠に完成しません。創造力がある限り、成長し続けます"という言葉がある。お客様にとって最高のものを考えると、作って終わりではない」(大畠氏)


企画は改善し続ける

10、終わりに:夢は叶う

 ディズニー・ピクサー映画「トイストーリー」のキャラクターであるバズ・ライトイヤー(バズ)は、自分は宇宙から来たと思い込んでいる。そのバズのフィギュアを、NASAが本当に宇宙に連れて行ったことで、バズとバズが好きな子どもたちの夢がかなった。大畠氏は、「たった1体のおもちゃかもしれないが、それがゲストの夢をかなえる手段、希望にもなる」と語る。

 「ディズニーが人を集めることができる理由として"魔法使いがいるから"と話したが、実は今でも"やっぱり魔法使いがいるから"だと思っている。ただし、その魔法使いとは企画者自身である。お客様の声を聴き、いかに夢をかなえるかは、企画者の心1つである。"夢は叶う、もしそれを追い求めるならば"」(大畠氏)

 ディズニー流企画の秘密を自身の仕事にも取り込んでいきたいが、それ以上に大畠氏がこの秘密を自分で咀嚼し発展させ、分かりやすくチームメンバーに伝え、巻き込み新たなサービスに次々と取り組んでいる姿勢に敬服した。「仕事を楽しもう。夢は生産性をあげるのだから」は印象的な言葉でした。

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