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「お前がやったんだろ! 吐け!」は幼稚園レベル――コミュニケーションの極意を検事に学ぶITmedia エグゼクティブ勉強会リポート(2/2 ページ)

「お前がやったんだろ!」――刑事ドラマでよく見る光景だが、これでは実際の被疑者は口を割らない。敏腕検事は、いかにして口を割らせるのか。元検事が明かすコミュニケーションの極意とは。

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 いかに本当のことを言わせるか、自ら話をさせるかが検事の腕の見せ所である。「最初は、大変だった」と大澤氏。自白には、3つのポイントがあるという。まず捕まって3日目が最初の自白のポイント。次に10日間の勾留の発布日、最後に勾留満期直前のときである。「しかしこのパン泥棒は、しゃべらなかった」(大澤氏)。

 指紋は残っているし、被害者に顔を見られているなど、客観的な証拠がそろっている。そこで、起訴状を部長に提出したところ、「"こんな事件の自白も取れないのか!"と怒鳴られ、"これから警察署に行って自白を取ってこい。俺の車に乗って行け。それと検察事務官を連れていけ"と言われた」と大澤氏は語る。

 一般的に検事には、検察事務官がつき、2人で取り調べを行う。しかし新人の検事には、4人に1人程度しか検察事務官はつかなかった。その時は、新人検事である自分に、部長が自ら警察署に連絡し、検察事務官と一緒に部長の車に乗って行けと言った意味が分からなかった。

 警察署につくと署長自らが出迎え、応接室に通された。その後、取調室に入った。言いたくないことは言わなくてもいい。ただし、話すのであれば、本当のことを話してほしい。残された証拠を見ると、どう考えても犯人は君しかいない。本当のことを言ってくれと語りかけた。

 すると被疑者が、「検事さん、私がやりました」と自白した。すぐに調書を作成したが、なぜ自白したか理解できなかった。そこで、なぜ自白したのかを聞いてみると、部屋に入ってきたときの検事さんの真剣な顔を見てウソはつけないと思ったと告白した。

 「私自身、本当に追い込まれ、真剣さが伝わったのだと思う。これは、非常に貴重な体験だった。自白をとるということを実感し、自信もついた。説明しにくいが、極意と呼ばれるものかもしれない。これを学ばせるために、部長はプレッシャーをかけてくれたのだと思っている」(大澤氏)。

 大澤氏は、「ラジオは、周波数を合わせないと番組を聞くことができない。取り調べも同じで、相手の周波数に合わせなければ、相手は聞こえない。周波数を合わせて相手の言葉を聞く姿勢を見せれば、聞いてないことも話してくれる。特別なことは言わなくても、同じ土俵に上がれば、口を割ってくれる。捜査手法はいろいろだが、徹底した捜査や情熱、真剣さがあれば、相手に伝わる。ビジネスのコミュニケーションも同じだ」と締めくくった。

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