「一流の人たち」も人の子
本書に登場するマイケル・ジャクソン、マイケル・ジョーダンをはじめKFCのカーネル・サンダース、ペプシのロジャー・エンリコ、ナイキのフィル・ナイト、LVMHのベルナール・アルノーといった「一流の人たち」は、それぞれがわたしにとっての恩師であり恩人である一方、彼らの多くは仕事上の上司、仲間、同志そして友人でもあった。
仕事の付き合いを通じて垣間見た彼らも「人の子」つまりは今の地球に生まれ、生き、時には悩み、迷い、感動し、失敗し、成功し、歓喜し、敗北し、絶望し、勝利しといった体験を持ったわたしたちのような普通の人間であり、はじめて会った時に期待したような特別な人ではなかったと知った。しかし一方、わたしたちの問いである「これからをどう考え、どう生きたら良いのか」への答えへのきっかけがここにあった。
彼らは「しらけ」や「あきらめ」という言葉に無縁な人たちだ。そして十分な時間を掛けて、若き日の夢を執拗に追い求め、結果的には地球を舞台に成功を収めたのだ。
そういう彼らにも、かつてそしてどこかで人生の初舞台や初めてのフィールドに立ったことがあった。そして今もその舞台に立ち続けている。
それは「小さな勇気」から
調べてみると、実はごく個人的と思える「小さな勇気」が根底にあった。行動とそれによってもたらされる独特な達成感と課題を生み、その舞台やフィールドにスクッと立つ行動力と、それを毎朝繰り返せる忍耐力を支えていることが分かった。
読者には彼らの実践したこの小さな勇気を持ち、今日のグローバルでダイナミックなビジネス環境の中で、本来の実力を発揮して勝ち抜く方法を見つけてほしいと考え本書の執筆をはじめた。
それぞれの個人の性格や性質はまったく異なっていたが、共通した部分もたくさんあった。
例えば:
- 夢や目標に直面して、したたかに立ち向かう勇気や精神力、的確で正確な情報の収集分析力、俊敏な行動力を持っている。
- そうした行動で得た成功や失敗の経験から養われたスキル、良質な感動体験による「勘」によって、常に創造的で戦略性に富んだ正しい計画を立案できる。
- 説得と感動を生み出すコミュニケーション力を駆使し、精度の高い実施をすることで成功をもたらすことができる。
「WACCの4原則」の実践:
本書に登場する「WACCの4原則」は、このような彼等からの「学び」をわたし自身の体験とも併せて、より解りやすく分類・整理した結果生まれた。具体的には:
- 「W」 Will to live with vision
グローバルに説得力のある「志」。勇気、意思といった精神力
- 「A」 Act to win
勝利へのこだわりと達成意欲に裏打ちされた俊敏な行動力
- 「C」 Create aggressively
既存概念や利害関係を超えて創造的破壊を生み出す発想力
- 「C」 Communicate 360°
感動と結束力を生み出すコミュニケーション力
過去40年あまりの間、わたしが「一流の人たち」とビジネスを供にしてきた体験談と、最後にまとめた5つのW、4つのA、5つのC、6つのCの提案が、読者自身がその小さな勇気を発揮し、新たな一歩を踏み出すきっかけになれば幸いだ。もちろんもっと適切で斬新な方法の提案や自身による実践も大いに歓迎したいと思う。
「地球一」を目指す
確かに現在の世界は、そして地球は問題だらけのように見える。しかし果たしたこれらの問題は単なるリスク、危機や脅威だけなのか。答えはノーである。
少なくとも今日の会社にとってもそしてわたしたち個人にとっても、地球が抱える問題の解決は大きなチャレンジであり、同時に事業的な成功や自己実現のための大いなるチャンスでもある。スピードの速いグローバリゼーションの進展は、ダイナミックな新たなチャンスを生み出し続けているのだ。このチャンスを放っておいたり、そこから逃たりする手はない。
そして時代は変わる。今や成功はグローバルな説得力のある志の有無と、絞り込まれた戦略を展開できる能力にかかっている。誰もが、今やいきなり「世界一」いや「地球一」になれる時代にいるのだ。その朝、その場所にスックと立つ小さな勇気。それだけがあればできる。
著者プロフィール:秋元征紘 (あきもとゆきひろ)
ワイ・エイ・パートナーズ(株)代表取締役、ジャイロ経営塾代表。日本企業の海外事業の経験の後、KFC、ペプシコーラ、ナイキ、LVMHゲランなど米国・欧州の代表的外資4社のトップマネージメントを務める。現在、“新たな日本的経営の提案”として「ジャイロ経営」を提唱。戦略的経営コンサルティング、「WACCの原則」に基づく独自の幹部社員養成研修・講演を始め、執筆活動など、広範かつ精力的に展開中。
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