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心と感情をコントロールして、怒らない技術を身につけるビジネス書著が語る、リーダーの仕事術

ビジネスシーンで怒ることを選択していないか。怒りで人は動かない。組織で成果を上げるために必要な行動とは。

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 現代社会には「怒り」がまん延しています。家庭生活や職場環境など、わたしたちを取り巻く生活環境の中で、心理的なストレスはかなり多く見られます。 家庭内や経済的な問題、職場での悩み、その他の不満など、現代社会がつくり出すさまざまなストレスがどんな人にもあります。そのストレスは「イライラ」を招き、やがて「怒り」につながるのです。

 さて、これまで「怒った」場面を思い出してみると、すべての場面に「怒る」「怒らない」という選択肢があったはずです。そして、自ら「怒る」ことを選択し、怒っています。それは一瞬の判断だったかもしれません。では、「怒らない」ことを選択していたら、その場はどうなっていたのでしょうか?

自分の感情が「怒り」を生む


『怒らない技術』

 わたしの例で説明してみましょう。わたしは自ら独立、起業し会社を株式上場まで導き、ビジネスマンとしてもそれなりに成果を上げてきました。もともと短気な性格だったこともあり、「怒り」でマネジメントをし、常に「緊張感」を持たせることが成果を上げることだと思い込み、部下に対して朝から晩まで「恐怖、脅迫、ドツキ」を繰り返すマネジメントを行っていました。業績が勢いに乗っていたときはそれなりの成果を上げていました。

 ところが、しばらくすると業績は落ち、ソコソコのレベルを保つも成績は鈍化する一方。わたしの「怒り」は頂点に達し、「怒り」マネジメントはエスカレートしました。部下は疲弊し、負のスパイラルに陥ったのです。今から思うと、それは小心者であるがゆえのマネジメントであり、自分の個人的な感情を部下にぶつけていたのです。

 自分の心に余裕があるときなら、どうだったのでしょうか? イライラしていると、物事をネガティブに受け止めやすく、冷静に判断できません。同じ言葉、態度でも全く違うように感じてしまうものです。部下を教育しようという思いが「怒り」につながり、全てが悪い方向へ向かってしまいました。

「考え方」を変えれば、人の心はコントロールできる

 部下は上司を見て育ちます。部下を変えたいと思ったら、まず自身が「上司とはどうあるべきか、モノの見方、考え方」を学び実践しなければなりません。そして、心を開き合える関係でなければ、上司のどんな言葉も部下には届かないのです。魅力的な上司となり、部下と最高の人間関係が築けたならば、その組織には不機嫌、イライラ、怒りといったマイナスな感情、人生をつまらないものにする不要なエネルギーがなくなるのではないでしょうか。

 そのために、わたしは、「彼らに成果を上げてもらうために、どうすればいいか?」と考えるようになり「彼らが悪い」のではなく、「自分のマネジメントの仕方が悪い」ことに気付きました。つまり、「自責の念」が強くなったのです。

 人を威圧しなくなり、いつも笑顔でいるように心掛けました。すると、人から声をかけてもらいやすくなり、やがてわたしの周りに人が集まるようになりました。人が集まるということは、そこに情報が集まります。情報が集まると、たくさんのチャンスが生まれるようになり、自然と「得」することが増えるようになりました。

 以前と同じように生きているのに、笑顔になって人が話しかけやすい雰囲気をつくるだけで、人生「得」をするようになったのです。毎日眉間にしわを寄せている人間より、包み込むようなオーラを持っている人のほうが声をかけやすいし、集まりやすくなります。何事も、どうせなら楽しいほうがいいに決まっています。そのことを意識しはじめると、自己中心的な自分から、楽しいことや嬉しいことを相手にも共有、提供できるようになり、自分も周りもハッピーになりはじめました。

「疲れた、忙しい、時間がない」は禁句

 毎日疲れた顔、眠そうな顔をして、ため息をついている上司を見たら、部下たちはどう思うでしょうか? 上司が部下に「忙しいから後にしてくれ」などと言ったらおしまいです。なぜなら、部下は上司に対して同じせりふは決して言えません。部下は「部課長になったらこんなに大変なんだ……」と更にヤル気を低下させ、楽しいどころか、辛くやるせなく、将来に夢も希望も持てなくなってしまいます。

 「働くってこんなに素晴らしいことなんだ!」と輝く上司を身近に見ていれば、それだけで将来に夢と希望が持てます。モチベーションもアップし、業績も向上、それは会社の利益にもつながり相乗効果が生まれます。物事の捉え方、考え方、自分の感情さえコントロールできれば、人生や周りが変わるのです。

常に最悪の事態を考えておく

 世の中には、「考えてから動く人」、「考えながら動く人」、「動いてから考える人」がいると言いますが、わたしは一番目の「考えてから動く」タイプです。実際に物事に取り組み始めると、想定していたリスクが本当に起きます。それでも対処法を持ったうえで、実行に移しているので気持ちに余裕があります。最悪の事態に直面しても、被害を最小限に抑え、回復に向かわせることができたという体験の積み重ねが、「最悪を考えて最高を生きる」ことができるようになるのです。

 わたしは新規事業を始めるとき、ネガティブ情報をたくさん拾い集めます。「こういうことが起きたら一巻の終わりだ、仕事はなくなる」など考えて、それでも「やる!」と思えたときに、事業をスタートさせます。この方法の良いところは、「最悪」をあらかじめ分かっているということです。それが分かっているから、失敗しても「こんなもんか」という気持ちで、時には大胆にもなれるのです。最悪なケースを設定していないと、不安になったり、多大な期待をして失敗したり、決断力を鈍らせます。「最高もあるけど最低もある」では良い結果は得られません。最悪を低く抑えることで、アベレージを取ると結局は右肩上がりになるのです。

一流と二流との違い

 一流と二流の違いを一言でいうと、「成功者の多くは感情コントロールの達人」です。その秘訣は、「Who am I ?」です。一流は自分を良く理解し、感情コントロールにより、情緒的に安定しています。仕事に取り組むときは集中力を発揮し、冷静に励むことができるのです。

 心と感情をコントロールする術を身につけ、リーダーの存在意義とは何なのか? リーダーが果たすべき本当の役割と何か? リーダーは人、企業、社会に何をもって貢献するのか?を意識して、元気で憧れられるような素晴らしいリーダーになってください。

著者プロフィール:嶋津良智(しまづ よしのり)

株式会社リーダーズアカデミー 代表取締役社長兼CEO。大学卒業後、IT系ベンチャー企業に入社。同期100名の中でトップセールスマンとして活躍、その功績が認められ24歳の若さで最年少営業部長に抜擢。就任3ヶ月で担当部門の成績が全国ナンバー1になる。その後28歳で独立・起業し、実質5年で52憶の会社まで育て、2004年5月株式上場(IPO)を果たす。2005年、次世代を担うリーダーを育成することを目的とした教育機関、株式会社リーダーズアカデミーを設立。現在シンガポールへ拠点を移し、アジアを中心に講演・企業研修・コンサルティングを行う傍ら、顧問・社外役員として経営に参画。業績向上に寄与する独自メソッド「上司学」が好評を博し、世界13都市でビジネスセミナーを開催。最新著書「怒らない技術」(フォレスト出版)が40万部を超えるベストセラーとなる。


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