第25回:メンバーが「自然に本音を話せる1on1」になるまでの3ステップ:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
ブームともいえる1on1面談で、聞くのは良いが、ただ聞きっぱなしで、受け止めて対応する形になっていない企業も多くあるようだ。「業務」「職場」「今後」の3つの選択肢を提示して話題の幅を与え、自分で選べるようにしてはどうだろうか。
例えば、「最近どう?」という会話から、元気がなさそうな人がいれば、体調の話を聞くのもありです。「これはみんなに聞いているんだけど、教えてもらっていい?健康状態、心身ともに何の問題もなくて、心地が良いのが10点だとすれば、今何点くらい? 誰にでも聞いていて、変な質問でごめんね」と、ちょっとエンタメテイストでやるといいです。逆にシリアスに聞くのはNGですね。
「ええーっと、2点ですかね」「ああ、そう、低いね!」その時に「え、何かあるの?」「いやいや、昨夜配信見すぎて寝不足なだけです」と。特に深刻な問題ではないと分かったら、「ああ、そっかそっか」と言ったあとに、もし褒めてあげられることがあったら、次に褒めてあげる。
「あ、そうそう、イノウエさんに聞いたんだけど、イバくん、○○やってくれたんだってね。ありがとうね。喜んでたよ」ふだんから部下たちの観察、情報収集をしておかないと、良い1on1は成立しにくいのです。
なので褒めてあげるとか、何かいいことについてはフィードバックをしたあとで、「じゃあイバくん、今日はよろしくお願いします。今日は何の話をしようか」「今日は実は聞いてほしいことがあるんですよ」「何?」「いやぁ、イケダさんと○○さんがうまくいっていないんですよ」。とか、「先輩がちょっとキツイです」とか出てきたりします。大抵、人間関係の話題が出てきますね。
メンバーが「自然に話せる1on1」になるまでの3ステップ
1on1で自然な会話になることは思っている以上に容易ではなく、実際にそこに悩む上司は非常に多いですねと伊庭さんは言います。
トークライブで伊庭さんが、ある企業のうまくいっている例を紹介してくれました。
その企業の役員は、3ステップに分かれるといっているそうです。1つ目のステップが「何かないの?」と言った時に、「いや、特に……」と沈黙が始まるそうです。3つの選択肢でも仮に何も出てこなかったら、それを否定するのではなく、その時は仕方ないので雑談でもOKだと。
ずっと雑談、さすがに3回目、5回目もまだ雑談ではダメなので、「次はこの3つについて何か話せるように、また考えてきてもらっていい?」「うーん、分かりました」。
で、2つ目のステップでは当たり障りのない会話が出てきたそうです。「いやぁ、ちょっと気になっているとすれば、こんなところぐらいですかね」。これでOKだそうです。
次に、「実は悩んでいることがありましてね」とか、「実はどうしても言いたいことがありましてね」が3番目のステップに出てきます。1on1の回数とともに、ここに到達するとのことです。
最初は雑談でも良いし業務の話でも良く、場作りをして、一定の回数を経て、ようやく徐々に本来話したいテーマで会話ができるようになるのです。
メンバーはどうしても最初は、上司に対しては「こんなことを言ったら不利になるかな」と思うものです。部下の立場からすれば、不利になるのは怖いことです。ここをしっかり理解し、そんなことにはならないよということを部下が本音で思うようになるまで、対話を続けることが大事なのです。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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