第26回:個人がやりがいを持ち成長し、組織が理想的に回る「3つの望ましい状態」とは:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
上司と部下、お互いが「Will・Can・Must」についてしっかり話し合う、共有し合うことで、共に未来に進む推進力が増す。
部下たちが腑に落ちる、納得できる決め方をできる上司と、そうではない人がいます。それが、伊庭さんが言う論理思考を踏まえた決め方、背景の説明、「何故ならばこうだよね。だからこう思うよ」という部分に現れると私も思います。
そこで何か筋が通っていなかったりして、部下は「ん?、なんでこの人はそう思うんだろう」と感じられたりする上司は、気をつけたほうがいいでしょう。
論理思考が不足していて経験則だけで語るとそうなる可能性が高いですが、さらに言うと、論理思考、決断力ともにあるのに部下たちからして腑に落ちない決定をしてしまったり、判断を間違えてしまったりする上司がいます。
これはなぜそうなってしまうかと言うと、正しい現場情報を取っていないからなのです。
経験則だけで判断してしまうのは危険ですが、一方でしっかり現場の事実、情報を入手して、その上で論理的に判断しているか、さらにはそこに自分の意志を交えて決断できることが、上司にも、プロジェクトを推進するような部下にも必要です。
こうしたことを正しく進めるために、正しい現場情報がしっかり流通するようにすることこそもっとも大事なのです。
ここに至って、ぐるりと一周して、改めて1on1での部下たちとのコミュニケーション、情報交換が重要であることを認識してください。
望ましい状態<その3>:全社のあらゆる階層・組織がそれぞれ「方針はトップダウン、やり方はボトムアップ」で行動できている企業は伸びるし強い
「方針はトップダウン、やり方はボトムアップ」は、課や部を率いる管理職のみならず、トップマネジメントにも有効です。
「こういう方向で行こうぜ」というのは強烈にあっていいでしょう。
オーナー企業の社長、鬼軍曹のような役員・部長が問題となるのは、「方針はトップダウン」だからではありません。「やり方はボトムアップ」が欠落しているからです。
上司、経営者には改めて「聴く力」が非常に大事になっています。
社長や組織長が「この方向で行こう」と提示しました。では、各事業や各部門がそのためにどうするかについては、あくまでもその組織を預かっている人がしっかり考えて決めているのが、「やり方はボトムアップ」の意味するところです。
社長や組織長は、このどうするかの決定をしっかり任せているか、任せているリーダーたちや現場の考えをしっかり「聴けて」いるかが重要です。
こうしたお膳立てがしっかり整っていて、その上で各責任者がちゃんと主体的に考えて動かなければ、強い会社にはならないでしょう。
伸びていて強い会社は、ここでいうところの「ボトムアップ」側にいるマネジメントやリーダーが、ちゃんと責任感を持っていい動きをしている。逆にいうと、トップが全てできるわけではないので、よく言われる話ですが、トップよりも、各部の責任者よりも優秀な人がその配下にいるかどうかが、企業の成長率や規模感を決めるのではないでしょうか。
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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