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構造不況の地域銀行 再編の先に見据えるべき姿〜地域情報プラットフォーマーの道〜視点(2/2 ページ)

携帯料金引き下げとともに菅政権目玉政策となった地銀再編。背景にあるのは地銀の苦境だ。

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打開の鍵(2):収益源の多様化

 2020年 3月期、業務粗利益に占める資金利益は、都市銀行の 56%に対し、地銀は 86%。 預貸金利鞘の低下圧力を踏まえ、手数料関連業務の強化は急務だ。とはいえ、これが難しい。 FinTech企業やデジタルプラットフォーマーが、銀行機能をアンバンドル化して顧客接点と決済機能を掌握(ネオバンク※2、チャレンジャーバンク※3)、大手銀行が BaaS(Bank as a Service)事業者となったとき、地銀の収益源は多様化どころか消滅しかねない。

※2)ネオバンク:銀行免許を持たず、既存銀行と連携して金融サービスを提供

※3)チャレンジャーバンク:銀行免許を取得し、既存銀行に依存せず銀行業務を提供

打開の鍵(3):地域創成の先導

地銀の構造不況は、合従連衡を通じた経営効率改善や従来型手数料ビジネスの拡大だけでは乗り越えられない。大手銀行とも異業種参入組とも異なる「パーパス(存在意義)」、地域密着型金融機関として地域創生に正面から向き合う覚悟が必要だ。中途半端な地域密着に価値はない。狭域高密着の信金・信組とは異なる価値創造主体となれるか。人口減少、少子高齢化、脆弱な交通基盤、商店街・繁華街の衰退、観光資源の不在など、地域課題の解決者となれるかが問われる。

地域情報プラットフォーマーとして

 価値創造主体とは、金融機関にとどまらず、物融・人融機関へ進化することを意味する。地域産品を地域外に販売する地域商社の設立。地域企業の付加価値生産性向上を支援する経営人材の供給。生活者の行動特性や嗜好を捉えた持続可能なスマートシティ/ MaaS (Mobility as a Service)の構築。 QOL(Quality of Life)向上に向けたデータ駆動型地域ヘルステックの確立。地域コミュニティーを活性化する地域通貨の流通。いずれも、地銀の信頼性やブランド力は大きな武器だ。地銀自ら、生活者と地域企業と自治体とをつなぐプラットフォーマーとなり、統合的な地域創生パッケージを機能させてこそ、構造不況打開の道は開ける。

 独禁法適用除外の特例法施行は一時しのぎにすぎない。地銀再編(だけ)で地域は再生しない。地域が再生しない限り地銀は再生しない。預貸業務偏重から脱却し、地域情報プラットフォームの運営主体として異業種連携を推し進め、地域情報の「核」となれるか。今こそ、顧客接点のデジタル化や業務の RPA (Robotic Process Automation)にとどまらない「真の DX(Digital Transformation)」 が求められる。

著者プロフィール

田村誠一(Seiichi Tamura)

ローランド・ベルガー シニアパートナー

外資系コンサルティング会社において、各種戦略立案、及び、業界の枠を超えた新事業領域の創出と立上げを数多く手掛けた後、企業再生支援機構に転じ、自らの投融資先企業3社のハンズオン再生に取り組む。更に、JVCケンウッドの代表取締役副社長として、中期ビジョンの立案と遂行を主導、事業買収・売却を統括、日本電産の専務執行役員として、海外被買収事業のPMIと成長加速に取り組んだ後、ローランド・ベルガーに参画。


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