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コーヒー業界から最新ビジネス戦略が分かる――「戦略は“1杯のコーヒー”から学べ」ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)

いま多くの企業が注目しているホットなビジネス。ひとときの安らぎを提供するコーヒーは差別化の手段となり得る。その戦略とは。

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 どうすればよいのか?日本企業のビジネスパーソンも定石を身につければ、高い現場力を生かすことで、今よりもずっと上手にビジネスができるはずだ。

 しかしここで問題がある。世の中の多くのマーケティングやビジネス戦略に関する本は、良書が多い反面、正しい情報を正確に伝えようとするあまり、現場のビジネスパーソンにとって敷居が高いのだ。実際、ビジネス戦略本を敬遠して読まないビジネスパーソンはとても多い。しかしそのような人たちこそ、いまの仕事ですぐに役立てることができる「戦略の定石」を必要としている。ただし、戦略の詳細な方法論は不要だ。「要は、こういうこと」というエッセンスが分かれば、あとは自分の経験に照らし合わせて消化できるのだ。

 どのようにこれを伝えるか?私が試行錯誤し辿り着いた結果が、『100円のコーラを1000円で売る方法』で確立した「ビジネスエンターテイメント小説」のスタイルだ。 2011年から2013年にかけて上梓した『100円のコーラを1000円で売る方法』では、会計ソフトウェア業界を舞台にして、「顧客中心主義」、「競争戦略」、「イノベーション」といったテーマをそれぞれ3巻で学ぶストーリーに仕上げた。おかげさまで、ビジネス書を読んだことがない人たちからも、「いまの自分たちの仕事でとても役立つ」という多くの言葉をもらった一方で、熟練の経営者からも「自分が長年の仕事を通じて学んだエッセンスが、分かりやすい言葉にまとまっている。部下に読ませたい」との評価を得た。

 新刊となる『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』では身近にあるコーヒー業界の事例をもとに、下記目次のとおり最新ビジネス戦略を学べるようになっている。

  • 1杯目:ドトールが150円コーヒーで成長した本当の勝因――ブルーオーシャン戦略を実現する4つのアクション
  • 2杯目:「邪道」と言われた缶コーヒーでUCCが成功した理由――アンケートでは顧客の隠れたニーズは分からない
  • 3杯目:マクドナルドがプレミアムローストで目指したもの――商品はポートフォリオで考える
  • 4杯目:「コーヒーの香り」を失ったスタバが考え続けたこと――経営合理化と業績悪化のパラドクス
  • 5杯目:ネスレはなぜコーヒーマシンを無償で提供するのか――継続的に収益を生むための「ジレットモデル」
  • 6杯目:5度目の正直で大ヒットしたセブンカフェ――顧客の課題より先に自社の強みを見極める
  • 7杯目:「コーヒー界のアップル」ブルーボトルの第三の波――オープン&シェアの文化がつくる新しい市場
  • 8杯目:お客様はカフェの何にお金を払うのか――新規事業の製品設計は3つのレベルで考える
  • 9杯目:サステイナブルではいコーヒーは生き残れない――企業の社会貢献とマーケティング3.0
  • 10杯目:スタバが広告費をほとんどかけない理由とは――顧客とのきずなを強化するブランドスパークス

「自社ならではの価値」を創り上げるフレームワークを提示

 では、本書は何が新しいのか?

 2011年に上梓した『100円のコーラを1000円で売る方法』のテーマは顧客中心主義だった。顧客の言いなりにならず、顧客が本当に必要とする価値を創造する大切さ、特にバリュープロポジションの考え方を紹介した。バリュープロポジションについて知らない人も多く、その後さまざまな講演や研修を行った。一方で、昨年の2013年頃から、「バリュープロポジションの大切さは分かった。では具体的にどうすればいいのか?」という質問が増えてきた。日本の企業は、着実に進化しているのだ。

 そこで本書では、バリュープロポジションの作り方を具体的にご紹介している。バリュープロポジションを作るには、「顧客の課題」と「自社の強み」の2つを考え抜く必要がある。しかし「顧客中心主義だから、顧客の課題をまず検討しよう」と考えると、顧客の言いなりになってしまい差別化できない。最初に考えるべきは「自社の強み」、言い換えれば「自社らしさ」だ。

 本書ではバリュープロポジションを具体的に考えるフレームワークを提供している。「自社ならではの価値」を創り上げるための方法論だ。これは数多くのクライアントとのワークショップを通じて検証し、チューンアップしてきたものだ。具体的には、下記の4つについて、お互いに連携させた形で、具体的に考える。

(1)自社ならではの強みは何か?

(2)その強みを必要とするお客様は誰か?

(3)そのお客様は何を必要としているか?

(4)お客様が自社を選ぶためには、どうすればいいか?

 一見、簡単だ。しかし実際には、これを作り上げるのはとても難しい。実際に多くの企業で、このフレームワークに沿ってバリュープロポジションを作り上げるのにとても苦労している。本書では、主人公がこのフレームワークに挑戦して悩みながら学んでいく様子も描かれている。実際には、優れた業績を上げている現代の企業は、この枠組みに沿って価値を創り上げているのだ。本書では実在する企業を例に、いかにこのフレームワークでバリュープロポジションを作り上げて成果を生みだしてるかも紹介している。

 アベノミクスのおかげで日本経済にやや明るさが見えてきた。いま、多くの企業が新たな価値創造に挑戦している。本書がその一助となることを願っている。

著者プロフィール:永井孝尚(ながい・たかひさ)

オフィス永井代表。1984年に慶應義塾大学工学部卒業後、日本アイ・ビー・エム入社。

IBM大和研究所の製品プランナーとして企画した製品がバブル崩壊で大苦戦するも、プロモーションの傍らで全国を駆け回りセールス活動を展開、さらに製品開発マネージャーも兼任し3年間で多くの大規模プロジェクトを獲得する。98年よりマーケティングマネージャーとしてCRMソリューションの戦略策定・実施を担当し、市場シェア1位と市場認知度1位獲得に貢献。同社ソフトウェア事業で事業戦略担当後、人材育成責任者として人材育成戦略策定と実施を通じて事業の成長を支える。

2013年に30年間勤務した日本アイ・ビー・エムを退職。オフィス永井を設立し、ビジネスパーソンの成長支援を通して日本企業がより強くなることを目指し、マーケティング・戦略などの講演・研修を提供している。

主な著書に、シリーズ50万部となった『100円のコーラを1000円で売る方法』シリーズ(全3巻、コミック版全3巻、図解版)、『残業 3時間を朝30分で片づける仕事術』(以上、KADOKAWA中経出版)、『「戦略力」が身につく方法』(PHPビジネス新書)などがある。最新著書は、『戦略は「1杯のコーヒー」から学べ』(KADOKAWA中経出版)。


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