ビジネスに効く最強の「読書」:ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(2/2 ページ)
リーダーシップを磨く、人間力を高めたい、グローバリゼーションなど読書から得られるものは多くある。読書家で知られる出口さんが「この本も挙げておけば良かった」と後から思った本を取り上げてみた。
グローバリゼーション
最近「フェルメールの帽子」(岩波書店)という本を読みました。フェルメールは17世紀の中葉、ネーデルランドのデルフトという小さな街に生まれ、ほぼ一生をその街で過した風俗画家です。現在はとても有名になっていて、日本でも最も人気のある画家の一人ではないでしょうか。この本は、そのフェルメールの絵画を主たる題材にして、その絵画に描かれたモノの来歴を1つずつ丁寧に紐解いていくのです。すると、17世紀世界のグローバリゼーションが見えてくるという仕掛けです。例えば、兵士の被っている帽子は北米カナダ東部の森林地帯に棲むビーバーの毛皮から出来ている。では誰が何のためにその時期北米を探検していたのか、という話になるのですが、フランス人が北米の5大湖地帯を必死に探索していたのは、中国への西回りのルートを見つけるためだった、それは何百年も前に書かれたマルコポーロの「東方見聞録」の影響で、クビライ・カアンの都を目指していたのだ、という結論が見事に実証されています。フェルメールは生前自分の絵画がこういう読まれ方をするとは想像だにしなかったに違いありません。彼は身近にあるものを描いただけですから。しかし、その身近にあるものはすべて広い世界に繋がっていたのです。
新たな人生に旅立つ
井伏鱒二の名訳で有名ですが「コノサカヅキヲ受ケテクレ、 ドウゾナミナミツガシテオクレ、ハナニアラシノタトヘモアルゾ、『サヨナラ』ダケガ人生ダ」という中国の漢詩(于武陵「勧酒」)があります。死別や離職などおよそ人生に別れはつきものです。新たな人生、新たなステージに挑戦する、おそらく明治維新の時の僕たちの先達が直面していたのは、まさに新たな世界に旅立つ前の武者震いのようなものだったに違いありません。「米欧回覧実記」全5冊(岩波文庫)という本がありますが、当時の若いエリート達が、徳川250年の鎖国の遅れを取り戻すべく、米欧先進諸国を調査検分に回った岩倉使節団の記録です。鎖国の枷から解き放たれて世界最先端の文明に接した先達の生の驚きや感動がそのまま伝わってくる得難い書物です。新しいステージに挑戦しよう、新しい世界に乗り出そうという皆さんに150年近く前の先達の魂の記録をぜひ心の糧にしていただきたいと思います。
著者プロフィール:出口 治明(でぐち はるあき)
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO
1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。
主な著書に、「生命保険入門 新版」(岩波書店)、「直球勝負の会社」(ダイヤモンド社)、「仕事に効く 教養としての『世界史』」(祥伝社)、「早く正しく決める技術」(日本実業出版社)、「ビジネスに効く最強の『読書』」(日経BP社)、「部下をもったら必ず読む『任せ方』の教科書」(角川書店)、「『思考軸』をつくれ」(英治出版)、「百年たっても後悔しない仕事のやり方」(ダイヤモンド社)など。
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