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» 2016年08月24日 07時24分 UPDATE

知っておきたい医療のこと:がんの多くは治せる (1/2)

医療においては、治療や診断することのみではなく、予防する意識が極めて大切な要因だ。

[阿保義久,ITmedia]

 「がん(癌)」は、悪性腫瘍もしくは悪性新生物とも呼称されます。この「悪性」が意味するところは、「遺伝子の変異によって人体の中に忽然と発生、生理的に制御されない増殖をし続けて、正常組織を破壊しながら最終的には人体を死に至らしめる」、ということにあります。がんは医療界がいまだ完全にコントロールできない極めて厄介な代物であり、皆さんの中でがんを恐れない方はまずいないでしょう。

 英語ではCancer と称されますが、その言葉の歴史は古く、古代ギリシア語のKarkinos(=カニ)に由来しています。無限に細胞分裂して周囲にいびつに広がるがんの振る舞いを、あちこちに爪を伸ばして食い込んでいく様に例えたと考えられます。人類は古代からがんを経験し、苦しまされながら、その対策に尽力してきました。3000年をも超える期間、人類はがんと向き合ってきたわけですが、高度に発展を遂げた現代医療の粋を尽くしてもがんは未だ難治性の疾患として位置付けられています。もちろん、医療技術は日進月歩に発展し続けており、がんの治療技術も言うまでもなく進化を遂げています。

 しかし、社会の高齢化と生活習慣の欧米化により、日本でのがんの罹患数は右肩上がりに増えていることはしばしば指摘されるところです。三大死因の中でも、脳出血や脳梗塞など脳血管疾患は漸減傾向で、心筋梗塞も頭打ちであるのに比べると、がん罹患数の増加は、「がんに対する現代医療が功を奏していない」、と言われてもやむを得ない感があります。

 ただし、あまり強調されないことですが、年々変化する(高齢化する)年齢構成の影響を受けないように、各時代の年齢構成を同一のものに調整した上でがんによる死亡率を算出すると、全てのがんが頭打ちないしは減少しています。すなわち、がんの罹患数や死亡数は絶対的には増えていますが、高齢化社会の影響を統計処理によって取り除くと、がん死は減っており、がんに対する現代医療は効果を示していると見ることができます。

 ここで注意しなければいけないことは、医療においては、治療や診断することのみではなく、予防する意識が極めて大切な要因だということです。医療技術が高度に進化して、診断・治療技術が研ぎ澄まされてきたとしても、医療を受ける主体者である皆さんが、予防を心掛けて早期発見のために健診を励行するなど、医療を享受する行動を起こさなければがん治療の成績は改善していかないでしょう。その点にも留意しながら、昨今のがん治療の現状について考察します。

 2016年になって、日本におけるがん征圧の中核拠点である国立がんセンターから、がんに対する情報提供が盛んに行われています。その中の一つに、全てのがんの全病期の10年生存率があります。

 これを見ると、まず、約60%のがん患者が、治療後10年間はがんで死亡していません。がんが発見され治療をしてから10年死なずに生き延びていれば、がんによる死は免れたと言えます。また、全てのがんで、発見する時期が早ければ早いほど10年生存率は高くなり、例えば、胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、喉頭がんなどは、早期発見できれば(これらは実際に早期発見が十分可能な「がん種」です)10年生存率はほぼ100%と言えるほどです。

 また、前立腺がんや甲状腺がんは、比較的おとなしい「がん種」で、多少病期が進行してしまっていても、遠隔臓器に転移さえしていなければ(ステージ4でなければ)10年生存率は90%を切りません。

 一方で、膵臓がんや、胆管がんは、早期発見が難しいばかりか、たとえ発見が早くても、それ以上に進行が速いために生存率が極めて不良な「がん種」です。ただし、膵臓がんや胆管がんは全てのがんの中で発症率は5%程度です。

 因みに胃がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、喉頭がんを合計すると全体の54%、それに前立腺がんや甲状腺がんを加えると60%に及びます。他に、早期発見が可能で治療成績が比較的良い腎臓がんや膀胱がんを加えると、7割に及ぶがんは、早期治療により治癒が可能ながんと言えます。

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