第33回:AI時代、ミドル・シニアこそ「起業家のように企業で働」け!:マネジメント力を科学する(2/2 ページ)
人間のメンバーとAIも使うと、1チーム20人でやっていたことが3人ぐらいでできてしまう時代が来つつある。これからは組織規模などは関係なく、少数精鋭ユニットになり、自分が主体的にいろんなものを駆使して動けるような時代になってくる。
AIによって、マネジャー“以外”が不要になる!?
小杉さんと経営者JPで研究開発したリーダーシップ理論に「リーダーシップ3.0/4.0」があります。
「組織の全ての人がリーダーシップを発揮するのを“リーダーシップ4.0”と言っているんですけどね。2人のように元リクルートの人って、それを当然だと考えている人の比率がすごく高いと思うんです。リクルートにいた時から世の中の“不”を解決するために、どうしたらいいかをずっと考えて、事業提案したりしてきたわけですよね。」(小杉さん)
「なんだかんだ、そういう集団ではあるとは思いますね。」(井上)
「リーダーシップを発揮する人を採用しているので、アウトプットが事業提案だったり、それがリクルート的なのは確かですけど。他の企業で働いている皆さんもそういうのがあったほうがよい時代が、ついに来たってことです。」(黒田さん)
井上は「AIによる、マネジャー“以外”不要論」を提唱しています。「マネジャー不要論」ではなくて、マネジャー「以外」が、AIによって不要になるということがすごく見えてきています。
これはどういうことかというと、「プロジェクトマネジャーの姿が一番理想的だ」と、実は井上は昔からずっと言ってきました。
自分もプレイングしながら、チームに必要な要素を見ます。まさしく「企業で働く起業家」のように、1つのプロジェクトを動かしていくマネジャーです。10〜15年前ぐらいから、そういったスタイルの人が望ましいなと感じていたのですが、これが図らずもAI時代にさらに機能しやすくなっていくと予見されます。
AIを駆使するプロジェクトマネジャーが率いる、少数精鋭チーム
AIが出てきていろいろと便利になり、これまでマネジャーは、メンバースタッフに分担して何かを作ってもらったり動いてもらったりしていたことが、かなりの部分ChatGPTでできてしまうことは実際にあります。
そうすると、例えばこれまでチームの中で若手・中堅で作業をしていた人がいらなくなる部分がけっこう出てきているのです。
もちろん、指示を出して承認印を押しているだけの昭和型マネジャーはそもそも不要で、ちゃんとプロジェクトマネジャーやプレイングマネジャーとして動いている人が今はほとんどです。そういう人たちは、けっこう先が明るいのではないでしょうか。
人間のメンバーと、これからいろいろ出てくるであろうAIも使うと、1チーム20人でやっていたことが3人ぐらいでできてしまう時代が、実感として既に到来しつつあります。
だからこれからは、組織規模などは関係なく、どんどん少数精鋭ユニットになっていくのではないでしょうか。「起業家のように働く」プロジェクトマネジャーのように、ほとんどの組織で、自分が主体的にいろんなものを駆使して動けるような時代になっていると思うのです。
ミドル・シニアだから持っている経験的強みを活かせ!
もう1つ、小杉さんから、特にミドル・シニアは、もちろんスキルを身に付けることは大事ではありつつも、スキルにこだわりすぎている感じもしていると指摘がありました。
「結局、よく言われるように、成長には水平的なもの(知識の量的拡大・スキルの質的向上のこと)と、垂直的なもの(人間としての器が拡大し、認識の枠組みを変化させ人間性を深めていくこと)の2方向があるわけです。前者の「より多くのスキルを身に付けて能力をアップしていきましょう」というのは、ミドル・シニアの人がいくらがんばっても、Z世代やその上のミレニアル世代にもたぶんかなわないですよね。」(小杉さん)
しかしミドル・シニアには、経験から身に付いたスキルが十分にあります。そこにもっと自負を持ったほうがいいのではないでしょうか。水平的な成長より垂直的な成長に取り組むべきで、「自分の器をどれだけ大きくしていくか」という話ですね。スキルはアプリの追加だとすると、ミドル・シニアに必要なのはOSのアップグレードです。
「バージョンをどんどん変えていって、自分の器を大きくしていくような意識を持ったほうがいいと思いますね。もちろん修羅場を経験するのもそうですし、あるいは禅を学ぶとか、すごく精神的な取り組みをするとかね。」(小杉さん)
そういうところで、人としていかに成長していくか。これは人間に死ぬまで課せられている課題であり、職業人としてだけではなく、人として取り組むべきことでしょう。
「そこのメリットをもっと見たほうがいいのかなと思いますよね。若い人にはできないものとして、スキルではない点が逆に求められているんじゃ
著者プロフィール:井上和幸
株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEOに
早稲田大学政治経済学部卒業後、リクルート入社。人材コンサルティング会社に転職、取締役就任。その後、現リクルートエグゼクティブエージェントのマネージングディレクターを経て、2010年に経営者JPを設立。2万名超の経営人材と対面してきた経験から、経営人材の採用・転職支援などを提供している。2021年、経営人材度を客観指標で明らかにするオリジナルのアセスメント「経営者力診断」をリリース。また、著書には、『社長になる人の条件』『ずるいマネジメント』他。「日本経済新聞」「朝日新聞」「読売新聞」「産経新聞」「日経産業新聞」「週刊東洋経済」「週刊現代」「プレジデント」フジテレビ「ホンマでっか?!TV」「WBS」その他メディア出演多数。
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