日本企業の危機、国際競争で勝つための余力を生み出せ今こそ攻めのIT投資を(2/3 ページ)

» 2008年09月30日 07時45分 公開
[伏見学,ITmedia]

改革のための余力作りを


――どうすれば企業は業務改革に踏み出せるのですか。

飯島 改革するための余力を作り出す必要があります。多くの企業には今この余力がありません。例えば製造業では、利益を上げるためにどう営業を効率化するかが課題です。この部分を今までITはほとんどサポートできていませんでした。企業のITコストの7割が保守費用といわれるように、今までの業務を続けるだけで多大な労力が発生しているからです。業務部門も同じで、売り上げを伸ばすためにさらに仕事量を増すのは難しいです。トップも現場も業務改善して利益を上げたいと思っても余力がない。

 余力を生むためのコスト削減や業務改善に取り組むことが重要なのです。新しいことをするとき、今ある業務にそのまま上乗せするのではなく、新しいことをするための余力を作ることが大切です。その点をトップはサポートすべきだし、現場も業務改革のために必要な取り組みだという認識を持つべきです。

 新しいことに挑戦することで、新たな気付きが生まれます。その気付きによって新しいやり方を模索する。変革にはこの繰り返しが重要だと考えています。「変革は一日にしてならず」という言葉があるように、実は老舗といわれる企業であっても、先進的な企業であっても、ある日突然新しい業務スタイルが生まれることはなく、日々の改善活動の中で新しい気付きを積み上げていくことによって、結果的に画期的なものにつながっていくのです。


――余力を作り出すための改善活動はトップダウンで行うべきなのですか。また企業規模についてはどうですか。中小企業だと余力を生み出すための余裕がない気がします。

飯島 10、20人程度の会社だと難しいかもしれませんが、少なくとも1000人以上の会社は改善しなければもう明日がない状況になりつつあります。企業が生きていく能力をどんどん失っていくと忠告したいです。

 トップダウンかどうかは企業の状況によります。BPMを最初から全社で取り組むことができれば理想的ですが、往々にしてそのアプローチは失敗します。あまりにも組織間での調整事項が多過ぎるためです。大企業であるほど会社全体のプロセスを見直すというのは難しく、まずは事業や部門単位で始めるケースが多いです。

 トップダウンでBPMを強制的に全社的に導入することもできます。それは企業の死活問題が絡んでいる場合です。証券取引関連でグローバル展開する米国のある上場企業での実例を紹介しましょう。証券ビジネスに携わる企業は取引活動が監視されているため、業務を可視化していないのは危険です。実際この企業では役員クラスの人が意図せず違法行為していて逮捕されました。これは企業にとっての死活問題です。それを防ぐためにトップ自らが先頭に立ち、業務プロセスを可視化、標準化したほか、コンプライアンスを徹底して法律上問題がないようにしました。

 ただし、業務プロセスはさまざまな部門に重なっています。企業の達成目標の重要度と業務プロセスとの関連性を考えて、トップダウンで本当にやらなくてはならないものと部門単位で始めるものとはすみ分けるべきでしょう。

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