今、あらゆる分野でブームを巻き起こしている「生成AI」は、大きな可能性を秘める反面、さまざまなリスクもはらんでいる。この革新的な技術にどのように向き合うべきか。
今、あらゆる分野で大きなブームを巻き起こしている「生成AI」は、大きな可能性を秘める反面、さまざまなリスクもはらんでいる。日本マイクロソフトの業務執行役員 エバンジェリスト、西脇資哲氏は「生成AIの最前線、大きな可能性とリスクを理解し活用する術」と題するセッションを通して、この革新的な技術にどのように向き合うべきかを紹介した。
人工知能(AI)の歴史は古い。Artificial Intelligenceという言葉が生まれたのは1956年にさかのぼり、そこから進化を遂げてきたが、中でも大きな契機となったのは音声や画像の「識別」だ。言語を理解して翻訳したり、カメラで撮影した画像を分析したりして検査に役立てるといった具合に、さまざまなメリットが生まれた。
そして、何より大きなブームを生んだのが講演のテーマでもある生成AIだ。OpenAIが「ChatGPT」を発表した2022年11月から1年以上が経った今、すでに試し、実際に使いこなしている人も少なくないだろう。政府機関や企業、あるいは学習の場でも活用が広がっており、「生成AIを使う、使わないではなくて、どう使うかのフェーズに入ってきています」と西脇氏は述べた。
同氏によると、この生成AIを使いこなす上でポイントになるのが「対話」だ。
「これまではコンピュータシステムに対してあまり対話はしておらず、人間がなんとなくコンピュータシステムに合わせていました。しかし生成AIは、人間の言葉に対して対話をしてくれます。ここがポイントです」(西脇氏)
例えば何か文章を作成する場合、これまでは人がアウトプットに必要なキーワードを考えて検索し、出てきたリンクをクリックして文章を読み、頑張ってまとめていた。それに対し今では、生成AIに質問するだけで文章を得ることができる。さらに文字校正を加えたり、「だである調に変えてください」といったブラッシュアップも容易に行える。
もちろん同じことは、例えばMicrosoft Wordならば「校閲」メニューを使えば可能だが、それには「ここにこういった機能がある」と知っている必要がある。つまり知っている人と知らない人とでは、生産性に差が生まれる。
生成AIはその差を埋めることができる。それも、MBAやアメリカの医師免許試験、あるいは司法試験の合格レベルに達する高い水準でだ。「もともと従業員にはスキルに差があり、生産性に差がありますが、ChatGPTなどの生成AIはそれを補い、全体の生産性を引き上げることができます。誰もが仕事を遂行する能力を高め、しかも均一になるため、経営者にとっても非常にありがたく、さまざまな現場で役立つと言われています」(西脇氏)
とはいえまだまだ、「じゃあ、生成AIではどんなことができるのか」と尋ねられる場面は多いという。西脇氏はそうした時、「まずはChatGPTに聞くか、依頼してみてはどうでしょう」と答えるそうだ。
西脇氏自身も、「英語のニュース記事を要約し、箇条書きにしてください」と生成AIに依頼することで、素早く海外の情報を日本語で読むといった具合に活用している。この結果、時短を実現でき、生産性は確実に上がったという。他にも、ブラウザで動作するゲームのプログラムを書いてもらったり、セミナーアンケートに書かれたフリーコメントという非定型のデータをまとめ、良かった点や悪かった点を整理し、次に向けた改善点を提示してもらうといった作業もやすやすと実現してくれる。
また、同じくOpenAIの「DALL-E」などを使えば、指示に沿った画像を作成することも可能だ。しかも、自分のイメージにピッタリくる画像ができるまで何度も依頼することができ、時間的な制約や金額的な制約なくなる。この結果、仕事のやり方は大きく変わっていくだろう。
こうしたさまざまな可能性を示した上で、同氏は、生成AIから適切な情報を引き出すには、対話のための「プロンプト」がポイントになるとした。「適切なプロンプトを使って指示ができれば、いい結果を得ることができます。プロンプトを制するものが生成AIを制すると言えます」(西脇氏)
具体的には、「あなたは法律の専門家として、万引きがどうして犯罪なのかを教えてください。小学生でも分かるよう、200文字以内の文で説明してください」といった具合に、役割、ゴール、追加情報、例示、そして出力形式という五つの要素を揃えた形でプロンプトを入力することで、意図する結果が得られやすくなるとした。
「冒頭にでも話しましたが、もう生成AIを使わないという選択肢はないでしょう。一部の人ではなくあらゆる人が使い、少しでも質の高い、より良い回答の得られるプロンプトを成熟させてください。その結果として、生産性と働き方に大きな変化が生じます」とし、ぜひ一緒にこの階段を登っていこうと呼びかけた。
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明治学院大学 経済学部准教授