Z世代と呼ばれる1990年代中盤から2010年代序盤までに生まれた若者たち。今、彼らは20代となり、社会に羽ばたいている。これまでの世代とは違う価値観を持つ彼らに、上司はどのように対応すればよいのだろうか。
ライブ配信で開催されているITmedia エグゼクティブ勉強会にFeelWorks代表の前川孝雄氏が登場。就職情報誌・就職情報サイトの編集長や人材育成部門プロデューサーとして活躍後に起業し、「日本の上司を元気にする」というビジョンを持つ前川氏が、Z世代の早期離職を防ぐため、上司としてどのように接するべきか、講演を行った。
現在、多くの上司が若手部下のマネジメントに悩んでいる。Z世代とは、1990年代中盤から2010年代序盤までに生まれた世代で、生まれた頃からデジタルガジェットが身の回りにあったデジタルネイティブ世代でもある。彼らが社会に出ている現在は、アフターコロナで売り手市場傾向にあり、1.75倍と高い求人倍率(2025年3月卒)の中で社会に出ている。
「上司は、X世代(1960年代中盤から1970年代終盤生まれ)やY世代(1980年代序盤から1990年代中盤生まれ)になり、Z世代との間には大きな時代や考え方の違いがあります。厳しく育てられた時代に社会に出た上司は、彼らをどのように育成すべきか、また職場全体のバランスや業績をどう上げていくか、カオスな状態で悩んでいる人が多いですね」(前川氏)
ベテラン上司とZ世代の若手社員の間には、仕事に対する考え方や、他世代のメンバーに対する考えに、大きな違いがあると言えるだろう。仕事を始めたZ世代社員のつぶやきには、以下のようなものがある。
「希望と違う配属。もう辞めたい」
「入社前に描いた理想と現実にギャップを感じる」
「自分が必要とされている実感がない」
「このままでは成長できない」
対する上司は、Z世代社員に、「指示待ち」「主体性が弱い」というイメージを抱きがちである。
「今のZ世代は、実は貢献心や好奇心も強く、学習意欲も高いんです。しかし、入社前後のギャップがあまりに大きいと、諦めてしまうんですね。さらに、売り手市場なことや転職マーケットも活況なため、Z世代の若手社員は辞めやすくなっています」(前川氏)
2022年にパーソル総合研究所が学生や社会人に対して「就職先検討で重視すること」について調べたデータがある。この中で学生の回答を社会人と比較したところ、学生は「社会貢献に積極的」「環境に配慮している」の比率が高かった。また「成長できる」「人材育成に積極的」「強みや専門性を活かせる」といった点も高い傾向が確認されている。
「社会貢献や環境などを意識して就職先を検討している学生は、“SDGs”や“パーパス経営”といった言葉に敏感に反応して入社を決めます。しかし実際に働き始めると、日々の業績・業務に追われて忙しいため、入社前に期待していた会社像・社会人像にギャップを感じてモヤモヤしてしまうことが昔より多くなっています。さらに、インターネットの発達により、フィルターバブルがかかり、自分の観点に合う情報ばかり見るようになり、エコーチェンバー現象で、同じ意見の人々とのコミュニケーションを繰り返すことによって、自分の意見が増幅・強化されていきます。そうやって、ギャップをさらに大きくしていくのです」(前川氏)
また、上司世代はZ世代社員に対し「上昇志向が低い」「出世欲がない」というイメージを持っている。しかし、Z世代社員は出世したくないわけでも、稼ぎたくないわけでもない。ポストや報酬だけでは、強く動機付けされないだけで、終身雇用などは元々考えていない彼らにとって、出世の定義が上司世代と違うものになっているのだ。
「不安定な時代の中で成長してきた彼らは、“サバイブスキルを身に付けて会社がどうなっても生きていける、優秀層ほど世の中や労働市場で評価されるプロフェッショナルになりたい”といった考えを持っています。その会社の中で出世することよりも、自身のキャリアをどう構築していくかを重視しています。さらに、彼らは高い社会貢献意欲を持ち、経営理念やパーパスなどに共感しているので、ポストや報酬だけでは動機づけされないのです」(前川氏)
新入社員が就職先を決めた理由を見てみると、「自らの成長が期待できる」という理由が1位になっている。Z世代社員は会社内での職位や評価よりも、「プロフェッショナルとなること」、「労働市場で評価されること」の方が重要だと考えるように変わってきているのだ。
「Z世代社員に対する日々のマネジメントとしては、あなたの市場価値を上げ、プロフェッショナルとしてのスキルを身に付ける上で、今任せている仕事がどう生きてくるかを説明して、腹落ちさせることがより重要になってきています」(前川氏)
入社後すぐに転職サービスに登録する新入社員は、13年前の28倍で、これは転職サービスの内容が変遷してきていることも影響している。現在は、転職サービスに登録しておくとスカウトやオファーが送られてくる。そのため、すぐに転職を考えているわけではなくとも、自分の市場価値のバロメーターとして転職サイトを利用しているのだ。今自分が現場で任されている仕事や条件と、オファーされた仕事の内容・条件を比較しながら仕事をしている。なおさら、今の仕事がどう成長につながるのかを丁寧に説明する必要がある。
「今の若者はすごく将来への不安感や危機感が強くなっています。将来不安、結婚して家族を持つことに対する負担を感じています。会社もどうなっていくか分からないから、プロになりたいという意識に変わってきています。そのため、仕事を選ぶ上で“知識・スキル”や“資格” “社会貢献” “教育”などをより重要視するようになっています」(前川氏)
Z世代社員は「時間外の付き合い・飲みニケーションを嫌う」というイメージがあるだろう。しかし、彼らは最初から飲み会や社内イベントが嫌いなわけではない。将来に不安を感じている彼らは、プロフェッショナルになるため、自分の成長につながるのであれば時間外の付き合いも許容するという傾向がある。しかし、飲み会に参加して上司・先輩社員と酒を酌み交わすうち、どんどん飲み会が嫌いになっていくのだ。
「Z世代社員は、昔話や武勇伝を聞かされると冷めていきます。飲み会では昔の自分の話をするのではなく、今、彼らが成長するために、どういう仕事を経験していくべきか、など、彼らの話を聞いて、彼らをサポートしてあげる場にするとよいでしょう」(前川氏)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授