スマホで健康維持 NECと富士通、セルフケア支援のAIを開発 医療費の抑制狙う

少子高齢化が進む国内では医療費の増加が大きな課題となっている。AIをうまく使い、自分自身で健康を維持するセルフケアを促進することで、医療費を抑制し、ビジネスとして収益化する狙いがある。

» 2025年03月27日 09時03分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 NECと富士通が人工知能(AI)を活用し、個人の健康維持を支援するサービス開発に力を入れている。少子高齢化が進む国内では医療費の増加が大きな課題となっている。AIをうまく使い、自分自身で健康を維持するセルフケアを促進することで、医療費を抑制し、ビジネスとして収益化する狙いがある。

NECが開発した慢性の腰痛患者向けに正確なエクササイズを支援するAI技術。タブレット端末を使って、専門家が注視するポイントと合っているのか、その場で動きの善し悪しを判定する=3月、東京都港区(黄金崎元撮影)

 NECは慢性の腰痛を抱える患者向けにスマートフォンやタブレット端末を使って、手軽に自宅で正確なエクササイズ(健康の維持・改善)を支援するAI技術を開発している。

 昨年に技術提供を始めたが、患者が正しく使えず、症状が悪化する事例もあったという。そこでAIを活用し、専門家が注視するポイントと合っているのか、その場で動きの善し悪しを判定し、正確なエクササイズを支援する技術を開発した。2025年度にサービス提供を目指す。

 セルフケアのAI活用について、NECバイオメトリクス研究所長の宮川伸也氏は「スマホやタブレットを活用した高精度な計測は使いやすさの観点から伸びていく」と期待する。同社はAIを使い、脳卒中のリハビリテーション患者の歩き方を支援する技術なども開発している。

 一方、富士通は医療費の増加の予備軍となる若い世代を対象とした「セルフケアAI支援サービス」のビジネス展開を視野に入れている。同社が健康の意識調査を実施したところ、30代前半が健康への関心が低いという結果が判明した。

 そこで若い世代の健康無関心層に行動変容を促すアプリを開発した。医療情報サイト運営のエムスリーが開発した健診結果と生活アンケートから健康指標を算出するAIをベースに、個人の特性に合った最適なプランを提案する。

 さらに富士通のAIを活用し、個人の行動要因を推定し、運動などを習慣付ける機能を搭載した。「企業や健康保険組合などの団体向けにサービス提供を目指している」(広報)。

 調査会社の富士経済によると、国内のセルフヘルスケア市場は24年の7兆1190億円から、30年に7兆4944億円に拡大すると予測する。「高齢化が進む日本で、医療費上昇の社会課題への解決策の一つとして、医療機関の治療からシフトが進む」(同社)としている。

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