既存の自販機に短時間かつ低コストで設置できるアプリ対応端末のメリットを生かして普及を図り、キャッシュレス化の遅れで離れた自販機ユーザーを取り戻す狙いだ。
サントリー食品インターナショナル傘下で自販機事業を担うサントリービバレッジソリューションは27日、年内にキャッシュレス決済に対応した自販機の比率を現在の約2割から約6割に引き上げる方針を明かした。独自開発したキャッシュレス決済アプリ「ジハンピ」の本格運用にメドが立った。既存の自販機に短時間かつ低コストで設置できるアプリ対応端末のメリットを生かして普及を図り、キャッシュレス化の遅れで離れた自販機ユーザーを取り戻す狙いだ。
既存の自販機をキャッシュレス化するには、さまざまな決済アプリに対応する高機能な端末の設置が必要で、普及にはコスト面で大きな課題があった。
こうした課題の解決に向け、同社はジハンピを立ち上げたスマートフォンをかざすだけで決済できる機能に絞った端末を3年かけて開発。専門業者や特別な器具を必要とせずに約5分で設置が可能になり、従来の端末に比べて設置や運用にかかるコストを半減させることに成功した。
他社の自販機のキャッシュレス決済では、スマホで決済アプリを起動してQRコードを読み取るなど手間がかかったが、ジハンピはアプリを立ち上げて端末にかざすだけで決済が完了する。同社マーケティング本部の井上尊之副部長は「決済スピードの早さで差別化できる」と自信をみせる。
ジハンピ対応の自販機は昨年12月に北海道で先行導入し、今月までに全国で約4万台を試験的に稼働。ユーザーから「早くて便利」といった好評の反応を多く得たことから、本格的な導入に踏み切った。
ジハンピをダウンロードすると自販機内の飲料商品3本が無料になるキャンペーンなどを実施して認知を図り、25年内に200万ダウンロードの達成を目標に掲げる。また、同社が全国に設置している約35万台の自販機のうち、15万台をジハンピ対応機に切り替える。既存の対応機と含めて計約20万台(約57%)がキャッシュレス対応となる見通しだ。
同社によると、コンビニの約9割が対応している一方で、自販機市場全体のキャッシュレス対応は約4割にとどまると試算。また、キャッシュレス決済ができずに自販機での購入を諦めたことがあると答えたユーザーは約3割に上るといい、井上氏は「キャッシュレス化の遅れが自販機の利用機会の大きな損失を招いた」と説明する。
実際、20年に外出が規制された新型コロナウイルス禍で落ち込んだ自販機市場の売上数量は、人の流れが戻ってきた22年以降も回復せず、横ばいが続く。その要因の一端がコスト面によるキャッシュレス化の遅れに加え、自販機によって決済の方法が異なる使い勝手の悪さだと同社は分析する。
今回、同社はこうした自販機特有の課題に対応したキャッシュレス化戦略で、「事業成長を勢いづけ、自販機市場の活性化につなげる」(井上氏)と息巻く。
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