エンタープライズ2.0は話題先行のバズワードなのか? これに対する答えは「ノー」だ。これまでとは異なり現実的な選択肢へと変化しており、エンタープライズ2.0という言葉自体、もはや目新しいものではなくなりつつある。
WEB2.0のテクノロジーや思想を、企業システムにも取り入れようという「エンタープライズ2.0」。従来は社内ブログや社内SNS程度だったものが、最近では社内Wikiや社内YouTube、社内ソーシャルブックマークなどといったシステムを構築する企業も登場し、名実共に「エンタープライズ」と呼べるような状況になってきている。2009年、エンタープライズ2.0はどこへ向かうのだろうか。
個人的に2007年、2008年と続けて社内ブログおよび社内SNSをテーマに講演する機会をいただいたのだが、観客の反応が変化しているのを感じた。2007年以前は「社内でブログやSNSなんて論外」という否定や疑問、あるいは「ブログ、SNSがあれば社内コミュニケーションが劇的に変わる!」という手放しの賞賛が入り交じっていたのが、2008年には「長所も短所もあるのは分かったが、どうやったら使いこなせるのか?」といった現実的な議論に変わってきている。2008年を通じてさまざまな成功例、失敗例が世に出たことで、冷静な判断が行われるようになったのだろう。
さまざまなベンダーから関連製品がリリースされたのが2008年だった。こちらもブログ、SNSといった従来からある分野に加え、Wikiやミニブログ、ソーシャルブックマークなどの新しい分野でも製品が登場している。またベンチャー企業だけでなく、大手企業からも製品の発表や導入サポートサービスの提供が始まっており、エンタープライズ2.0は話題先行の「バズワード」から現実的な選択肢へと変化してきていると言えるだろう。
2009年もこの傾向は続き、社内Wikiや社内ミニブログといった新しい分野でも成功例、失敗例が共有され、認知と定着が進むのではないだろうか。特に社内Wikiは米国では社内ブログ、社内SNSと同レベルの支持を得ており、日本でも導入が進む素地はあると考える。「社内〜」などという形式ではなく、統合基幹業務システム(ERP)や顧客情報管理(CRM)などのシステムの一部として提供され、「気付いたらエンタープライズ2.0的機能のユーザーになっていた」という例も増えるだろう。本年中には無理かもしれないが、もはやシステムを「エンタープライズ2.0」という特別な言葉で意識する必要がなくなるかもしれない。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授