ポケモンスリープで睡眠の質アップ 攻略の要は「快眠」、寝不足日本に効果はバツグンだ

夜、寝るだけで遊べる画期的なゲームアプリ「Pokemon Sleep(ポケモンスリープ)」。ゲームの基本動作は枕元にスマートフォンを伏せて置くのみというシンプルさで、昨年7月の配信開始から1年間で2千万ダウンロードを達成した。

» 2024年09月24日 11時40分 公開
[産経新聞]
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 夜、寝るだけで遊べる画期的なゲームアプリ「Pokemon Sleep(ポケモンスリープ)」。ゲームの基本動作は枕元にスマートフォンを伏せて置くのみというシンプルさで、昨年7月の配信開始から1年間で2千万ダウンロードを達成した。睡眠時間を削ってプレーする従来のゲームとは一線を画し、攻略の近道は「睡眠の質」を高めること。実際、多くのユーザーの睡眠時間は延びており、寝不足がちな日本人に新たな生活習慣を提供している。

ゲームアプリ「ポケモンスリープ」では、自分の睡眠に応じて、ポケモンの睡眠生態について調査することができる(c2023 Pokemon.c1995−2023 Nintendo/Creatures Inc./GAME FREAK inc.Pokemon Sleep is developed by SELECT BUTTON inc.)

週末の「寝だめ」は意味なし

 アプリは、ゲームやアニメなどで幅広く展開し、世界中で人気を集める「ポケットモンスター」のプロデュースやライセンス管理などを手掛ける会社「ポケモン」(東京)などが開発した。睡眠好きの「カビゴン」が住む島で、ポケモンたちの睡眠を研究し、寝顔を集めて「寝顔図鑑」を充実させるという内容だ。

さまざまなポケモンの寝顔を楽しむことができる(ポケモン提供)

 寝る際にアプリを起動した状態で枕元にスマホを伏せて置くと、自身の睡眠具合が計測される。スマホに備わるセンサーとマイクを使い、睡眠時間や寝言、いびきなどを記録。その日の睡眠を「うとうと」「すやすや」「ぐっすり」「とくちょうなし」の4パターンのいずれかに分類し、このパターンによって集まるポケモンが変わる。

 ゲームは1週間ごとに区切りを迎え、月曜に前週分の睡眠リズムが評価される。評価が高いほど価値のある報酬(アイテム)を入手できる。毎日規則正しい睡眠が求められ、週末に「寝だめ」をしても意味がない。目覚めた後や日中も、集めたポケモンにおやつや食事を与える作業などはあるが、いずれも数分で終わるという手軽さだ。

睡眠せず課金プレーは「本末転倒」

 100種類以上のポケモンの睡眠生態が分かるシリーズ初のコンテンツでもあり、現在のアクティブユーザーは200万人以上という人気ぶりのポケモンスリープ。開発のきっかけは、屋外を歩きながらポケモンを集めるゲームアプリ「ポケモンGO」(平成28年配信)だった。

 街中でアプリに熱中する人が続出するブームを巻き起こし、ポケモン社は健康、特に睡眠にフォーカスした次なるアプリを企画することにした。ただ、睡眠の計測アプリはあっても、ゲームは世界でも例がなく、開発は困難を極めたという。

枕元にスマートフォンを置くだけで自身の睡眠の測定、記録ができる(ポケモン提供)

 ポケモン社の代表取締役・最高執行責任者で同アプリの担当役員、宇都宮崇人さん(45)は「開発段階で、睡眠とゲームの相性は非常に悪いことが分かった」と振り返る。

 睡眠を含むゲームは長時間のプレーを促しにくい上、結果が出るのに時間がかかることも懸念された。そこで、機能をシンプルにしてアプリを開く時間を減らす「引き算」を徹底。たどり着いたのが「寝て起きたらプレゼントが届くゲーム」(宇都宮さん)だった。

 アプリには課金されるアイテムもあるが、現在のユーザーの9割が無課金でアプリを楽しんでいるという。宇都宮さんは「睡眠をせず課金してプレーするのは本末転倒。目的は、あくまでも睡眠の質の向上」と言い切る。

3カ月で1時間10分改善

 ポケモンスリープが今回着目した睡眠。そもそも、なぜ人間は眠らなければならないのか。アプリを監修した筑波大国際統合睡眠医科学研究機構の柳沢正史教授(64)は「科学的に明快な答えはまだ出ていない」と明かす。

 ただ、睡眠不足や睡眠障害に陥ると、脳のパフォーマンスが下がったり、感情のコントロールができなくなったりするのは確かだ。慢性的な睡眠不足になると、心身ともに病気のリスクが高まるともされる。

1週間ごとの睡眠分析で高評価を得られると豪華なアイテムが獲得できる(ポケモン提供)

 アプリでは8時間半以上の睡眠を「満点」としているが、柳沢氏は「必要十分な睡眠量は驚くほど長い。健康維持にとって睡眠が重要であることに気づいてほしい」と述べる。

 ポケモン社では、1年間でユーザー10万人以上のデータを分析。日本、米国、英国、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ−の国別の平均睡眠時間を算出したところ、日本は6時間38分で最下位だった。1位のドイツと比べて50分近くも短かった。

 それでも、日本のユーザーが3カ月継続してプレーすると、約1時間10分も睡眠時間を延ばす改善がみられたという。柳沢氏は「アプリで行動変容ができると驚いた。一過性のものとしてほしくない」と評価する。

 今後は、スマートウォッチなど多様なデバイスでの展開も考えているという。宇都宮さんは「より多くの方に『日常のお供』として継続して使ってほしい」と話した。(石橋明日佳)

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