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» 2016年05月10日 08時00分 UPDATE

ITmedia エグゼクティブ勉強会リポート:尊厳ある人生を享受するために――病から自分を守る予防術とは (1/2)

日本は世界一の長寿大国といわれているが、医療行為により単に長生きすることは幸せなのか。尊厳を保つ人生、高い質の生活を維持するためには、日々どのように健康管理に取り組めばよいのだろうか。

[山下竜大,ITmedia]

 「ITmediaエグゼクティブ勉強会」に、北青山Dクリニック院長の阿保義久氏が登場。「がん・脳梗塞・心筋梗塞――突然の病から自分を守る、医師が教える予防術」をテーマに、単に長生きするだけでなく、突然の病から自分を守り、より質の高い生活を維持するためのポイントについて紹介した。

日本の死亡原因で圧倒的に多い「がん」

北青山Dクリニック院長 阿保義久氏

 厚生労働省の調査では、日本の死亡原因は圧倒的にがんが多く、心疾患、肺疾患、脳卒中と続く。一方、世界保健機関(WHO)の調査では、世界の死亡原因は心疾患が最も多く、脳卒中、肺疾患、下気道感染症と続いている。

 日本の世代別の死亡原因を見ると、50〜60代をピークに死亡率が増えているのががんである。高齢化社会に向かっているためにがんの発病率が高くなると言われているが、まだ社会で活躍できる年代においてもがんの死亡率は高くなっている。がんをいかにコントロールできるかが極めて重要なポイントになるだろう。

ポイント1

  • 死因として先進国はがんが多く、途上国は心疾患、脳疾患、感染症が多い。
  • 各主要国では、死亡原因に大きな差はない。
  • 各世代別では、社会で活躍できる世代のがん死が目立つ。
  • 死亡率の中で、がんが占める割合が急増している。

がん、脳卒中、心疾患、認知症の現状

 日本の部位別のがん罹患率は、胃がんが多いと言われているが、ライフスタイルの欧米化に伴い、大腸や乳腺、肺、前立腺など、これまであまり多くなかったがんも増えている。男女別のがん死亡率では、男性が女性の約1.5倍多くなっている。

 部位別の罹患率では、男性が(1)胃、(2)前立腺、(3)肺で、女性が(1)乳腺、(2)大腸、(3)胃と続く。部位別の死亡率では、男性が(1)肺、(2)胃、(3)大腸、女性が(1)大腸、(2)肺、(3)胃と続いている。

 ただし、胃がん、子宮がん、肝臓がんの死亡率は徐々に減っている。増加傾向が続いていた大腸がん、乳がん、肺がんも2012年以降は減少傾向にある。その理由として、早期診断、予防に有効な手法や根治性の高い治療法の確立などが挙げられる。

 別の側面として、5年相対生存率という統計がある。一般的には、がんの治療後5年経過するとその後の経過観察は不要といわれてきた。最近、国立がんセンターから10年相対生存率が初めて報告され、治療5年後以降に再発して死亡にいたる例もあることが示された。今までは5年の経過観察で十分と言われてきたが、より長期の経過観察が必要だと示されたことになる。一方、ステージ1に比べてステージ4では、5年、10年相対生存率は著しく低下するため、早期の発見、治療が重要になるのは言うまでもない。

ポイント2

  • がんによる死亡率は依然高いが徐々に減少していく可能性がある。
  • がん死を減らすためには早期発見が非常に重要になる。
  • がん種によっては、早期発見ができないものがあり対策が急務。
  • 5年生存率と10年生存率にかい離があり、治療後長期の経過観察が重要。

 次に、脳梗塞、脳出血、クモ膜下出血などの脳血管疾患の現状だが、予防方法の確立や生活習慣の管理が功を奏して死亡率はあまり増えていない。

 脳血管疾患や心疾患の最大の原因は、動脈硬化である。動脈硬化が発生しやすいのは、脳や心臓の周辺などの血流が豊富なところ、血流が乱れやすいところである。脳血管疾患や心疾患とは別に、ASO(慢性閉塞性動脈硬化症)の患者数も増えている。

 認知症について阿保氏は、「認知症は、発症数、出現率ともに年々増加しています。ただ以前は、認知症の発症数、出現率を統計していなかったので、実は10年前とあまり変わっていない可能性もあります」と話している。

ポイント3

  • 30代以降の全年代で血管性疾患はがんに次ぐ死因である。
  • 発症因子が同定され、管理方法が発展したことでコントロールされつつある。
  • 心筋梗塞、脳卒中は動脈硬化が背景にあり、重症動脈硬化は死亡率が高い。
  • 認知症は、発症数、出現率ともに増加傾向にある。

がんの発症メカニズムと予防・検査法

 一般的な体細胞は分裂により数を増やす。このとき染色体末端のテロメアが分裂ごとに短くなり、ある長さになると分裂が止まる。一方、がん細胞は、テロメアの末端を伸ばす酵素の活性が高く、半永久に分裂・増殖を繰り返す不死の細胞である。そのためがんと不老長寿は表裏一体とも言われる。

 がん細胞が発生する原因は、食品添加物や農薬、紫外線、放射線、活性酸素などにより、正常細胞のDNAが変異し、がん遺伝子とがん抑制遺伝子のバランスが崩れるためである。人の体は60兆個の細胞で作られているが、がん細胞は毎日1000個以上発生している。このがん細胞は通常は免疫系で消去されるが、免疫力が弱まるとがんを発症する。

 それでは、がんはいかに予防すればよいのか。

 科学的に「確実」とされる予防方法には、節度ある飲食、禁煙、加工肉・赤肉を控える、運動、減量、肝炎ウイルス・HPVウイルス、ピロリ菌の除去などがある。また「ほぼ確実」とされる予防方法には、野菜・果物を食べる、熱い飲み物を摂取しない、減塩などがあり、非科学的だが「可能性がある」予防方法には、コーヒーを飲む、授乳などがある。

 「がんを早期発見するためには、胃カメラ、レントゲン、CT/MRIなど、さまざまな検査があります。また全身のスクリーニングとしてPET/CTがあります。さらに新しい検査方法として、がん発症リスク検査、がん遺伝子検査、マイクロアレイ検査なども登場しています。部位によって必要な検査頻度は異なりますが、1〜2年に1回の頻度で定期的にがん検診を受けることが重要です」(阿保氏)

ポイント4

  • がん細胞は、正常細胞の複製時に、遺伝子に障害が発生することで発生する。
  • 発生したがん細胞は、通常は免疫系により消去される。
  • 大量のがん細胞が発生したり、免疫力が低下したりすると発病する。

脳卒中、認知症の予防と検査法

 動脈硬化性疾患とがんの違いは、動脈硬化性疾患は元気だった人がある日突然発症することである。動脈硬化だけでは、突然死に陥る脳梗塞や心筋梗塞などは発症しない。動脈硬化が背景にあって、そこに血栓が発生して血管内腔が閉鎖する血栓症が生じることでこれらの疾患は発症する。

 阿保氏は、「血栓症には、(1)局所で血管を閉塞させるアテローム性動脈硬化による脳梗塞や心筋梗塞と、(2)心房細動による血栓や深部静脈の血栓が飛散して別の臓器の血管を閉塞させる心原性脳梗塞および肺梗塞の大きく2つのタイプがあります」と言う。

 動脈硬化症の発症リスクは、加齢、喫煙、糖尿病、脂質異常症、高血圧、高ホモシステイン血症、アディポネクチン定価、活性酸素による酸化ダメージ増加など。一方、血栓症のリスクは、血流うっ滞、凝固能亢進、血栓京成傾向、血管内皮障害などである。

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