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» 2015年07月02日 08時00分 公開

ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術:「任せ方の教科書」〜部下を動かし成果を上げる「任せ方」とは〜 (2/3)

[古川裕倫,ITmedia]

「完成形」を見せて仕事の質を高める

 入社3年目ぐらいまでの部下を教育するときは、仕事の完成形を先に見せることが非常に大切です。

 部下の仕事がいいかげんになってしまうのは、その仕事の意味を理解していないことが原因になっていることが少なくありません。部下のモチベーションを高め、仕事の質を高めるには、まず仕事の目的や全体像を理解させることが必要なのです。

 私は以前、スポーツクラブに通っており、エアロビクスをやったことがあります。エアロビクスでは、まずインストラクターが基本の足踏みやさまざまなステップを教えてくれます。それらをやさしいものから順に組み合わせ、ステップを加えていき、完成形にしていきます。

 常々、「インストラクターが最初に完成形を見せてくれたらいいのに」と思っていました。見てすぐその通りにできるわけではなくても、最終的に何をやるのかイメージをつかんでおいたほうがスムーズにインストラクターの動きを追えますし、習っている間も「今日のプログラムの半分ぐらいまで進んだな」などと理解でき、モチベーションも高まるからです。

 仕事の完成形を見せることも、これと同じだと思います。何が最終目的なのか、そのために今やっていることがどう影響するのか、ゴールまであとどれぐらいなのかといったことをイメージできれば、取り組み方や心持ちは大きく変わるものでしょう。

 さらに言えば、リーダーがどんな「完成形」を部下に見せるかによって、部下の仕事の質は大きく左右されます。

 例えば自動車セールスの仕事で、ゴールを「契約を取ってくること」とするのと、「2年後、3年後に買い換えるときにもまた契約すること」とするのでは、仕事に対する部下のスタンスは変わってくるでしょう。「とにかく売れればいい」と考えていれば、顧客への対応はそれなりのものになってしまいます。一方、「買い換えでもまた頼りにしてほしい」と思っていれば、より顧客の満足度が高まるよう熱心に取り組み、契約後のアフターケアにも配慮するに違いありません。

 仕事の完成形を正しく教え、何をどこまでやるべきかを明確にすることは、部下を育成する上で欠かせないステップです。

仕事の流れをイメージさせる

 仕事の完成形を見せるときは、部下が仕事の流れもイメージできるように教えましょう。

 例えば、部下にプレゼン資料を作らせるときは、ただ「プレゼンの資料を作れ」と指示するのではなく、プレゼン資料は誰がどんな場面で見るものなのか、プレゼンの目的は何なのか、プレゼンがうまくいけばどのようなビジネス上の成果が期待できるのかといったことを説明すべきです。

 プレゼンの目的やそのために必要なステップを部下が理解すれば、同じ資料でも作り方が変わってくるでしょう。もし資料を見るのが年配の人なら、文字のサイズを大きくし、シンプルな箇条書きで分かりやすく端的な説明にすべきです。現場の実務家向けのプレゼンなら、詳細でより多くの情報を盛り込むことが必要になります。

 このような、10秒でできる説明を端折ると、部下が見当違いな資料を作ってしまってやり直しを命じることになりかねません。ちょっとした説明の手間を惜しまず、仕事の目的や理由に加え、そのためには具体的にどこに注意して仕事を進めるべきなのかなどもよく説明すると、部下の仕事の質が高まり、任せたときにきちんと働いてくれるようになります。

 仕事の流れをきちんと理解させると、部下は想像力も働かせられるようになります。

 例えば営業の仕事でも、社外から注文を取ってくることだけを教えるのではなく、取ってきた注文が社内でどう処理されて納品までたどり着くのかをしっかり説明すべきです。すると、部下は社内の関連部署の仕事にもアンテナを立てられるようになり、「この件は先に生産部に確認したほうがいいかもしれない」「会社に戻ったら経理部の○○さんにすぐ連絡しておこう」などと先回りして考えられるようになります。

 自分の仕事に誰がどのように関わっているかを知れば、仕事をスムーズに進めるためのポイントが分かり、自ずと周囲の人に対する配慮も生まれます。

仕事の流れを教えることは、「自走」する部下を育てるための第一歩なのです。

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