全固体電池、EV以外で開発加速 パナソニックはドローン マクセルは産業機械

大手自動車メーカーが電気自動車への移行を急ぐ中、次世代の全固体電池の開発が世界中で過熱している。

» 2023年11月06日 09時37分 公開
[産経新聞]
産経新聞

 大手自動車メーカーが電気自動車(EV)への移行を急ぐ中、次世代の全固体電池の開発が世界中で過熱している。高速充電可能で安全、長寿命、さらに大容量も期待できるとされるが、すべてを同時に実現するのは容易ではない。そこであえて大容量を目指さず、EV向け以外にも用途を広げることでスムーズに全固体電池の開発を進めようとする日本メーカーが注目を集めている。

アイ・ロボティクスが提供するドローンに搭載されたパナソニックHDの全固体電池=大阪府門真市

 全固体電池は電流を発生させる電解質に液体ではなく固体を使う。安全性が高く、液漏れを防ぐ必要がないため自由に設計でき、現在主流のリチウムイオン電池に変わる電池として期待され、各社が開発にしのぎを削っている。

 そんな中、パナソニックホールディングス(HD)は9月、EVではなく小型ドローンなどを対象とした全固体電池を2020年代後半に実用化する方針を明らかにした。既存のリチウムイオン電池だと容量の8割を充電するのに1時間かかるところを3分に短縮。配管検査用のドローンなど、短時間で充電を繰り返す用途を想定する。

 同社テクノロジー本部の松村忠朗主幹研究員は「われわれの技術で今できるものを作ろうと考え、ドローンで求められる高い出力と高速充電に重点を置いた」と話す。

マクセルが量産開始した産業用機械向けの小型の全固体電池(左から2番目)=京都府大山崎町

 電池大手のマクセルは6月、産業用機械向けの全固体電池の量産を始めた。大きさは1センチ四方、厚さ4ミリの小型で容量は少ないが、105度の高温でも使うことができ、過酷な環境でも劣化しにくく10年以上の寿命を誇る。これまで頻繁に行っていた電池交換の作業が不要になることで、製造現場での人手不足にも対応できる。

 同社ビジネス開発部の山田将之部長は「社会課題を考えると耐熱、長寿命は重要。長く使える電池は環境にも資する」と強調。30年ごろまでにスマートフォンや中型ドローンにも対応可能な容量の製品を開発する考えだ。

 全固体電池を研究する立命館大生命科学部の折笠有基教授は「小型でも特長を生かせる分野なら社会実装できる。パナソニックなどの技術者は研究する中でそれを実感したのだろう」と指摘する。

 一方、EV向けに必要な大容量化は開発が難航しているが、トヨタ自動車と出光興産が10月、全固体電池で提携すると発表。27〜28年の実用化を目指す。折笠教授は「自動車メーカーが本気なのでEV向けも20年代後半にはある程度できているのではないか」としている。(桑島浩任)

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