消費者意識の激しい変化をつかむには、「個」への訴求が欠かせない。そのとき、古臭いツールと思われがちのダイレクトメールが力を発揮する。
今、消費者の意識が激しく変化している。その中にあって、企業が成長し続けていくためには、「個」の顧客の心をつかんで囲い込むことが非常に重要なポイントになる。そのために、リレーションシップ・マーケティングに関心を持つ企業が多くなっている。
リレーションシップ・マーケティングは、「新客創造」、「離反防止」、「ファン作り」、「ランクアップ」、「商品作り」という5つのアクションアイテムでデザインされる。企業にとっては、何よりもまず新規の顧客を取り込まなければならない。ターゲットを明確化し、マスコミを使って顧客にリーチし、商品を購入してもらう。これが、「新客創造」である。
どんな商品にしても、マーケットの規模は最初はそんなに大きくならない。したがって、顧客には2度、3度と繰り返し購入してもらうことが非常に大事になる。そのためには、顧客の「離反防止」が必要になる。
リレーションシップ・マーケティングと言えば、一般的にイメージされるのが「ファン作り」である。これは、いかに自社が優れているかを顧客に教え込むプロセスである。さらに、その顧客の興味を喚起し、より上位の顧客にしていくのが「ランクアップ」である。そして最後には、新客を呼んだり、リピートを促したり、ニーズに応えたりする「商品作り」が必要になる。
リレーションシップ・マーケティングは、こうした一連の流れで行われるが、最近はほとんどの企業が顧客データベースと売上をリンクさせたオペレーションを行っている。
ある百貨店でリレーションシップ・マーケティングを実施したことがある。その結果、顧客の離反が売上下落の大きな要因の1つになっていることが明らかになった。その百貨店では、1年間に44%の顧客が離反し、それにより売上高は32%も失われている。もしも離反が防止できていれば、売上高の3分の1は失われずにすんだのである。顧客の離反はこれだけ大きなインパクトを与えるのだ。だからこそ、企業の関心も高くなるわけである。
また、こんなことも分かった。顧客をAからEまでの5つにランク付けして、それぞれの離反率を見ると、ランクが上になるほどその率は低くなる。Aランクは約17%なのに対し、Eランクは約69%といった具合である。さらに新規の顧客でAランクになる率はわずか12%だが、Eランクになるのは64%にのぼる。確かに、顧客の入れ替わりが激しいのは下位ランクにおいてであるが、上位でもかなり入れ替わりがあり、そうした動きがビジネスの新陳代謝を促進している。これは、業界を問わず、どこでも見られる傾向である。
売上高をアップするためには、離反率を下げればいいわけだが、それにはどれ位の効果があるだろうか。例えば、離反率をAランクで3%、Bランクで7%、Cランクで9%、全体で4%それぞれ改善したとすると、向こう5年間の顧客資産(現在の“個”客がもたらす未来売上総額の現在価値)は15%もアップする。離反率を下げることがいかに重要であるかが、この数字からも分かる。
それは、B to Bにおいても全く同じである。売上を作ってくれるのは顧客だからだ。テクノロジーがなくてもビジネスはできるが、顧客がいないビジネスというものは世の中に存在しないのである。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授