多くの人は他人からのフィードバックを素直に受け入れられない傾向にある。かつてのわたしも同様で、まったく耳を貸さなかった。ところが、ある女性社員の手紙が人生を大きく変えることとなった。
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前回、経営者やリーダーが陥りやすい20の悪癖について話した。今回はそれを踏まえた上で、リーダーとしてその能力を開花させる「フィードフォワード」という方法を紹介する。
フィードフォワードとは、言葉からも分かるように、フィードバックの反対の意味を指す。あなたは人からのフィードバックを素直に受け取れるだろうか? 自分の言動というものは自分自身で気付いていないことが数多くある。そこで周りの人からフィードバックをもらうのである。フィードバックをもらい、自身を改善することで、ビジネスパーソンとして成功していくのだ。
しかし、人間というのは素直にフィードバックを受け入れにくい傾向がある。社員数1000人の会社だと、フィードバックを受け入れて行動変革をしようとするのは、恐らく30〜100人、全体の3〜10%程度である。フィードバックすると、多くの人は「自分は正しい」と自己正当化する。あるいは、フィードバックをくれた人に悪感情を持つ人もいるだろう。ましてや、部下から上司にフィードバックするというのはとても難しいことだ(上司と部下の間に深い信頼関係があり、部下が自分のことを考えてフィードバックしてくれていると上司が考えた場合などは機能することもある)。
わたし自身、フィードバックに関して人生を変える大きな体験をしたことがある。15年ほど前、生命保険会社に勤務していたわたしは32歳で100人以上を抱える営業部の次長に任命され、有頂天になっていた。札幌支店から福岡支店に転勤し、福岡支店の売り上げを3年間で4倍にしたという実績もあり、自分は成功していると思っていた。そのうぬぼれによって知らぬ間に部下に対して横柄な言動や行動をとっていたのである。
あるとき、部下の女性営業職員が営業日誌に挟んでわたし宛てに手紙をくれた。そこには次のようなことが書かれていた。
「福岡に赴任してきたとき、細川さんは非常に謙虚でした。素晴らしいリーダーで、わたしも尊敬していました。しかし、最近の細川さんはおごり高ぶっています。昔のように謙虚になって、皆から愛されるリーダーになってほしいと思います」
この手紙を見て、わたしは激高した。自分ほど成功し会社に貢献している人間はいないのに、なぜこのようなことを言われなくてはいけないのか。すべてを否定された気がしてその晩は眠れなかった。2日目になってもまだ怒りは収まらなかった。3日目になって少し冷静になり、自分は至らなかったと反省した。そして、自分が悪かったと女性職員に謝った。
怒りを収めるのに2日かかったが、今考えると、彼女のフィードバックはわたしの人生を変えたのである。彼女は自分のためにフィードバックをしたわけではない。わたしによくなってほしい、職場をよくしたいという思いから手紙をくれたのである。手紙を通して彼女の気持ちを理解することができたから、謝ることができたのだと思う。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授