SOAの熱は冷めた? 経営者が価値を納得できるSAPの新プログラム

SOAに慎重な日本企業を後押しすべく、SAPジャパンは、経営やビジネスの視点でSOAに取り組んだ欧米の先進事例を紹介するほか、SOAによる改善領域を発見する新サービス、「SOA Value Discovery」も無償で提供開始している。

» 2008年12月02日 09時30分 公開
[ITmedia]

 1990年代半ばにガートナーが提唱したシステム構築のためのアプローチ、「サービス指向アーキテクチャー」(SOA)が10年の年月を経た後に人気を博したものの、ほかの業界三文字略語と同様、一時の浮かれた熱はすっかり冷めたかのようだ。実施が1年前というやや古い資料だが、野村総合研究所の調査では、そうした実態が浮き彫りになっている。

 日本企業の情報システム部門長や経営企画の責任者らから300を超える有効回答を得た同調査では、実に半数以上がSOAについて「詳細までよく理解している」、あるいは「概要は理解している」と回答しているものの、実際にSOAのアプローチでシステム構築に取り組んでいると回答した企業は8.1%にとどまっている。3年以内に取り組む計画がある、という回答を加えても16.6%に過ぎない。

SAPの福田ビジネスプロセスプラットフォーム本部長

 こうしたSOAの現状を「知ってはいるが、一歩が踏み出せない」と表現するのは、SAPジャパンでビジネスプロセスプラットフォーム本部長を務める福田譲バイスプレジデントだ。ややもすれば新技術の採用に慎重な日本企業のこと、成功事例に乏しいSOAでは、なおさら難しい。

 しかも、これまでのSOAは技術中心の話に終始していたきらいがあり、経営層やエンドユーザー部門の理解は進んでいない。システム化の目的は本来は経営やビジネスの視点であり、SOAはそれを具現化する手法のひとつに過ぎないのだ。

 「変化が激しい経営環境の下、SOAも経営やビジネスの視点で価値が問われている」と福田氏。

 SAPジャパンは今週、都内で開催する「SAP Tech World 2008」に北米の石油精製最大手、Valeroを招き、経営やビジネスの視点でSOAに取り組んだ事例を紹介するほか、10月中旬からは経営やビジネスの視点からベンチマークを実施し、SOAによる改善領域を発見する新サービス、「SOA Value Discovery」も無償で提供開始している。

 「SOA Value Discoveryでは、同業他社とのベンチマーキングを通じて、会社の現状や方向性、ITの現状などが診断され、どこから着手すれば効果が得られるかを理解できる」と福田氏。

 SAP ERP 6.0が標準で提供する「エンタープライズサービス」を活用し、SOAアプローチによるシステム構築の恩恵を享受している企業は世界で200社に上っている。ライセンスの数から推し量れば、日本の企業も10社以上あってしかるべきだが、まだまだこれからだ。

 SAPジャパンでは、これまでにも提供してきた、ブループリントを策定する「SOA Value Proof」や、コンセプトを実装して効果を実証する「SOA Proof of Concept」と併せ、新たに「SAP SOA Value Program」に仕立て直した。これによって、企業は、経営、ビジネス、そしてITの各視点からバランス良く課題を理解できるようになる。年間20社を支援するのが目標だが、既に5社が新しいバリュープログラムによってSOAアプローチ採用の検討に入ったという。

 「景気は悪化の一途をたどっており、IT投資も抑制される見込みだが、こういう厳しい環境だからこそ、既存資産をうまく活用し、迅速に投資効果が得られるSOAにとっては追い風だ」と福田氏は話す。

関連キーワード

SOA | SAP Business One | SAP


Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆