アビームコンサルティングは、グローバル展開する企業における人材管理の在り方について、大企業への調査を基にした考察を明らかにした。
アビームコンサルティングは8月5日、グローバル展開する企業における人材管理の在り方について、大企業への調査を基にした考察を明らかにした。世界で勝てる究極の組織は、世界に分散した権限と機能を効率良く統合し、1つの企業としての全体最適を実現する「ワン・カンパニー」だとしている。日本のやり方を海外で横展開するこれまでの成功パターンが、新興国企業の急成長や海外企業の買収の増加で通用しなくなってきているという。
海外進出の初期から最適化までの道のりとして「分権化」「分散化」「二元化」「ワン・カンパニー」の4段階を経るという。分権化は海外子会社への権限移譲が進んだ段階、分散化は海外企業の買収や研究開発の一部海外移管など権限と機能の分散が進んだ段階、二元化は海外事業を管理する専門組織を設置し、日本と海外の二元的なマネジメントをする段階、ワン・カンパニーは、分散した権限と機能を有機的に統合した段階としている。日系製造業17社の内訳は、分権化35%、分散化41%、二元化12%、ワン・カンパニー12%だった。
これにより、8割近い企業が、権限と機能が分散していることが分かった。この中で、分散化段階にある企業では、海外企業を買収しているケースが多いため、海外部門へのガバナンスが効きにくいことが問題になるという。そこで、権限の有機的な統合が必要になり、ワン・カンパニー化が求められることになる。
ワン・カンパニー化するために不可欠なのが、グループで価値観を共有し、一体感を醸成すること。価値観に基づく行動規範を明文化し、全社員がそれを理解し、実践するための仕組み作りが不可欠になるという。経営幹部向けにリーダーシップ研修などで価値観を伝えるなどの方法がある。特に、日本本社の社長が自ら話し、参加者と議論する機会などが有効という。
現地の人材を最大限に活用することもワン・カンパニーの要件になる。外資系の先進的なグローバル企業では、本国の人材をグローバル化するのではなく、現地の人材を発掘し、計画的に育成する企業が増えているようだ。具体的には、現地人材の発掘、育成、配置、処遇というプロセスの整備が必要になる。
ワン・カンパニーでは、グローバル本社を確立し、日本でさえも1つのローカル拠点として位置付けることになる。こうした組織を支えるためにはグローバルな視野を持つ経営人材を育成する必要がある。国を越えた組織横断チーム、組織横断活動、組織横断人事、人的ネットワーク、グローバル・マトリックス組織などを活用することが考えられるとしている。
調査は、アビームが2009年3月から5月にかけて、東証一部上場で連結売上高が1000億円以上、海外売上高比率が20%以上の日系グローバル企業20社と、マイクロソフトおよびGEの外資系2社を対象に、人事部門または経営企画部門の責任者との対面インタビュー形式で実施した。日本企業ではヤクルトと資生堂以外は社名を伏せている。業種としては製造、素材、製薬、石油、海運、商社などとしている。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授