見捨てられる日本市場藤田正美の「まるごとオブザーバー」(1/2 ページ)

どうすれば日本が世界にとって魅力的な市場になるのだろうか。日本経済を活性化させるためにも、今やらなければいけないことがある。

» 2009年11月02日 08時15分 公開
[藤田正美(フリージャーナリスト),ITmedia]

東京モーターショー不振はたまたまか

 第41回東京モーターショー。世界の五大自動車ショーのひとつと言うわりには、幕張の会場には大げさに言えば悲哀感さえ漂う。何といっても出品者数は2007年の246社から今回は113社へと半減した。しかも海外の自動車メーカーで出品したのはわずか3社である。

 もちろん昨年秋からの金融危機に伴う景気の悪化で、米GMは政府の支援を受けざるを得なくなった。フォードも公的支援までは受けなかったものの業績の悪化は同じである。欧州勢も同じような状況である。しかしそれだけではあるまい。日本という市場が自動車メーカーにとって魅力のないものになっているという証左でもある。

 実際、今年4月に開かれた上海国際モーターショーでは、新国際博覧センターの展示室をすべて使い(合計17万平方メートル)、1500社の展示が行われた。中国の自動車市場は、昨年は金融危機の影響を受けて1000万台に乗せ損なったが今年は間違いなく1000万台に達する。単独の市場としては世界最大になる可能性が高い。

 人口だけとってみても、日本の10倍。日本の自動車販売台数がざっと500万台だから、中国の消費者の所得が伸びてくれば、将来的には中国だけで年間販売台数が5000万台という時代もやってくる(この販売台数はヨーロッパ、北米、日本の総販売台数よりもはるかに大きいのである)。

 それに比べて日本はどうだろう。ピーク時には日本でも780万台の車が売れた。それが現在500万台ということだが、景気の悪さだけが理由ではない。かつては若者(自動車ユーザーのエントリー層と呼ばれる)が最も欲しいものといえば、自動車だった。団塊の世代であるわたしたちでいえば、自動車を買うことは夢であり、運転免許証を取ることはその夢への第一歩でもあった。

 しかし今では一番欲しい物は何かというアンケートで、自動車が上位に来ることはない。ベストテンにかろうじて残る程度なのである。エントリー層である若者が自動車を欲しがらなくなっては、車の販売台数が伸びるはずもない。まして若者の数は減っている。日本の自動車販売台数がかつてのピークを超えるということはあり得ないのである。景気が多少回復しても500万台前後が精一杯ということになれば、海外の自動車メーカーが日本市場に興味を持たなくなるのも無理はあるまい。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆