アニマルスピリットで行け――元産業再生機構COOの日本再建論世界で勝つ 強い日本企業のつくり方(4/5 ページ)

» 2010年02月25日 08時00分 公開
[聞き手:怒賀新也, 土肥可名子,ITmedia]

民主党政権をどう見る?

ITmedia 日本の産業を占うとき、政治とのかかわりも無視できません。政治とカネ、事業仕分け、マニュフェストの実現性など、いろいろな意味で世間を騒がしている民主党政権について、どのように見ていますか。

 野党=批評家の立場のときはお気楽に批判していればよかったわけですが、自ら権力を握ってみると、権力がいかに扱いが難しく、制約が多いものか、問題を指摘することは簡単でも解答を見つけることがいかに難しいかに初めて気づきます。今、まさにそうしたリアリズムに直面していると思います。

 極めて専門的で、詳細にわたる問題に対して、最後の最後まで詰めないと現実解には到達できません。そこには非常に生々しい人間関係や利害、政治の意志だけでは動かしようのない民意が絡みます。これは政治主導ではどうしようもないもので、与件として受け入れるしかありません。しかし受け入れたその瞬間から権力を行使できる範囲はものすごく狭くなります。

 自民党はあまりにも長く政権にいたために、このリアリズムを分かりすぎていて何もしなくなっていた。(事業仕分けなどをすれば)面倒なことになるのが分かっていたから、とりあえず現状のままでひっぱっておこうということだったのでしょう。民主党はその大変さを知らなかったために、ふたを開けたはいいが、今度は閉め方が分からないということになりました。これは、長い間政権交代をしてこなかったことのツケなわけです。だから民主党を責めてもかわいそうなので長い目で見てた方がいいとは思います。

 現代の成熟した先進国の民主主義のありようは、成長重視か分配重視かという2軸でバランスをとっています。民主党は相対的に中道左派、分配政策型の政権だといえるでしょう。

 実際のところ、分配型の考え方と成長型の考え方はなかなか両立しません。だから分配政策型の民主党が中途半端に「一応成長も……」などと言いだすと、分配型と政策型のそれぞれの政策がお互い相殺し合ってしまい、どちらも効果をもたらさないというリスクが生じます。

 逆方向に効く薬を一緒に飲んだらどっちも効かないでしょう。現実の問題はそう簡単ではありません。都合の良い処方せんはありません。生活者の分配を重視すれば当然財政が悪化する。財政が悪くなれば人々の財布のひもは固くなって景気には悪い影響を及ぼします。そこで、増税をちらつかせれば、やっぱり景気に対しては悪影響があります。

 だからみんなにいい顔をして、すべての問題が解決する、といったバラ色の幻想を国民に持たせるのは危険です。その後は必ず失望が来る。その失望が重なると、その後にやって来るのは全体主義なのです。

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