駅前を歩いていたら主婦らを相手取ったたたき売りが行われていた。これはと思い店の中に入ってみると……。
先日、筆者はたまたま密室商法(催眠商法、SF商法、あるいはハイハイ商法とも言われる)に紛れ込むことができた。最初はバカバカしくて半身に構えていたが、実は企業営業にとっても多くの学ぶべき点があることに気付いた。
妻の買い物に付き合って出掛けたときのこと、駅前で妻がビニール袋入りの黄色いビラを受け取った。「面白いからあなたももらったら」という妻の勧めで筆者もビラ配りの若者に近づいたが、ビラの受け渡しを拒否された。3度ほど要求すると、若者は「あのお母さんと一緒ですか」と言いながら、渋々ビラを渡してくれた(ちゅうちょした理由は後で分かる)。
黄色いビラには「砂糖を10円で売ります」と書いてある。その20〜30メートル先にある、既に閉鎖したはずの小さな店の前で、机の上に砂糖袋を並べて10円で売っているのだ。妻が2人分の代金を支払うと、砂糖と一緒に1枚の白いビラを手渡された。先ほどの黄色いビラも、この白いビラも薄汚れているので、何度も使い回しているのだろう。
白いビラには「トイレットペーパー、ラップを無料で差し上げます」と書かれている。主婦ならば店の中に入りたくなるような殺し文句だ。筆者は店の入り口で20人も入れば一杯になる店内をのぞいていた。中では老婦人たちが十数人立っていて、中年男の説明を熱心に聞いている。若者が来て、筆者に靴を脱いで中に入れと勧める。「靴を脱いで入らないと商品をもらえませんよ」と若者は言うが、筆者は外から首だけ突っ込んで話を聞いていた。
中年男は、当社は通信販売の会社だとカタログを見せながら説明し、ここにある商品を差し上げますなどと面白おかしく口上を述べている。30分ほど経過したところで「これからいよいよ商品を差し上げます」と言う。再び若者が筆者に近寄って来て、靴を脱いで中に入ることを勧める。「ただ聞いているだけだ」、「中に入らないと品物をもらえませんよ」、「品物はどうでもいい」と押し問答した途端、若者は「どうでもいいのなら帰ってよ」とすごんで体を押してきた。仕方なく、筆者は興味本位で靴を脱いで中に入った。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授