行き詰まり内山悟志の「IT人材育成物語」第2幕(1/2 ページ)

川口が、秦野部長の依頼で宮下と奥山の2人を対象に細々と勉強会を始めてから1年の月日が流れた。その後、全社の精鋭を集めて始動した「改革塾」は軌道に乗っていた。「IT人材育成物語」の第2幕をお届けする。

» 2010年11月02日 07時30分 公開
[ITmedia]

 経営企画部の浅賀が、情報システム部企画課の野坂課長の協力を得て、役員や事業部長といった上級管理職をメンバーとして始動したIT戦略委員会は、順調に滑り出したかに思えた。当初は、上級管理職にIT活用の重要性を啓発することを目的に勉強会という位置づけで始めた委員会であったが、回を重ねるにつれて委員会の位置づけや意義について疑問の声が聞かれ始めていたのだった。

存在意義を問い直す

 「経営幹部が10人以上参加しているのに、何の意思決定もしない委員会では集まる意味がない。ただ勉強するだけだったら、推薦図書を全員に配れば済むはずだ。」専務取締役で営業部門を統括する坂本が口火を切った。浅賀と野坂が企画し、3カ月に1回のペースで、外部講師を招いてIT経営などに関する啓発的な内容のセミナーをIT戦略委員会として称して実施した勉強会の今回は3回目となる。講演と質疑応答は事無く終了し、講師は退席していたが、最後の総括と次回の予定を説明している時に、この発言が飛び出したのである。

 「確かに役立つ内容を準備してくれたので勉強にはなったけど、そろそろネタ切れではないかな。」「我々も忙しい中出席しているわけだし、一通り学んだら、そろそろ終了ということでもいいのではないだろうか」

 社内で大きな影響力を持つ坂本の発言に、明らかに同調するような発言が続いた。IT戦略委員会を3カ月に1回ではあるが定例の会議体として立ち上げたことは、あかり食品にとっては画期的なことであった。企画した浅賀や野坂は、まずは上級管理職を委員会に引っ張り出すことが重要だと考え、意思決定や決裁権限を持たない勉強会として立ち上げた経緯がある。

 回を重ねるにつれて、委員会に対するメンバーの姿勢は明らかに2つに分かれていった。一方は非常に前向きで、この委員会をIT戦略に関する最高位の意思決定の場にすべきだと考えており、その意味で、今の勉強会形式の委員会に物足りなさを感じ始めていた。もう一方は、ややITに距離を置くメンバーで、できればITに関する勉強のために忙しい時間を割きたくないという不満を持ち始めていた。

 坂本専務の発言は、前者の前向きな姿勢から発せられた問題提起であったが、メンバーの受け止め方はそれぞれの姿勢によって分かれた。いずれにしても、IT戦略委員会の主旨や内容を見直す時期にきていることは間違いない。浅賀は、いろいろと考えた上で、川口に相談してみる事にした。

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