役に立つと思えば、まずは利用してみる。その感覚がICTによるサービスの発展には必要なのではないだろうか。
さきごろ開催されたフォーラム「超高齢化社会と情報社会の融合」(早稲田大学電子政府・自治体研究所主催、ITmediaエグゼクティブ協賛)で、NTT東日本 小園副社長は、過疎地の高齢者への生活支援の取組みについて語った。
NTT東日本は、20年前から光ファイバーネットワークの構築を所管地域で進めてきた。光ファイバーは音声通信だけでなく、画像や動画などの通信にも大いに利用できるとして、その利用方法についても長年模索が続けられていた。
そうした動きの中での取組みの1つが、過疎地の高齢者に対する健康相談のプロジェクト。このプロジェクトに長年深くかかわってきたNTT東日本 代表取締役副社長の小園文典氏は、次のように語る。
「全国には無医村と呼ばれる地域が75カ所あり、人口にして14万人になる。この中には高齢者がとても多くいる。あきらかに病状が悪化すれば、大規模病院に移送する仕組みは、たいていの場合できているが、普段の健康管理がなかなかできない。無医村ではないまでも、地元には小さな診療所があるだけという地域のことも考えれば、健康管理が行き届かない高齢者は意外に多い」(小園氏)
高齢者の健康管理は国や自治体にとっても大きなテーマだ。普段から運動をするなど、体温や血圧などのデータを収集管理することで、大事に至らずに済むことが増え、医療費の削減にもつながるからだ。
NTT東日本では、岩手県遠野市からの相談を受け、2008年10月に同社と遠野市、そして医師や医療スタッフ、システム運用を担う団体による2カ年の実証実験プロジェクトが始まった。この活動は総務省の「地域ICT利活用モデル構築事業/遠隔医療モデルプロジェクト」の採択を受けている。
その後、2010年からこの遠隔健康相談の仕組みは運用が開始され、NTT東日本は「遠隔健康相談システム」の構築とネットワーク提供を行っている。
遠隔健康相談システムは、広帯域のブロードバンド回線である「Bフレッツ」や「フレッツ光ネクスト」(インターネット接続サービス)とIPテレビ電話端末「フレッツフォン」を利用し、医療機関と住民が直接コミュニケーションを行い、遠隔からの健康指導を実現する。
利用する高齢者は、事前に渡されている万歩計、血圧計などをフレッツフォンに接続。そのデータは医療期間に転送されデータが蓄積される。フレッツフォンではTV電話で医療スタッフと直接会話ができ、健康増進のアドバイスを受けることができる。
この仕組みは各家庭でも利用は可能だが、多くの地域では、公民館などに高齢者が集まって実施することが通例だという。
「万歩計のデータなどは知人と見せ合ったりしながらのほうが励みになり、次回はもっと頑張ろうというモチベーション向上にもつながる。独居の高齢者が今後増加することを考えればこうした取組みは大きな効果が期待できる」(小園氏)
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授