大き過ぎて分からない海外ベストセラーに学ぶ、もう1つのビジネス視点(2/3 ページ)

» 2012年07月11日 08時02分 公開
[エグゼクティブブックサマリー]
エグゼクティブブックサマリー

問題は情報過多ではなく、上手くふるいにかけられないことである

 1988年、組織理論家のラッセル・エイコフは、使える情報を提供するためにはデータをふるいにかける必要があると報告しました。そして、物質がろ過され不純物が取り除かれる様を例に、ピラミッドを使って説明しました。ピラミッドの底部はデータです。その次の層は情報で、その後知識、理解と続き、先端は知恵です。

 インターネットが誕生する前、出版物を最初にふるいにかけるのは編集者の役割でした。その次に、出版物の中からどれを図書館の棚やマガジンラック、書店の棚に並べようか決める人が、さらにふるいにかけていました。また、どの情報を新聞や辞書、教科書などの昔からある情報媒体に載せ、人々の目に触れさせるか決められていました。すべての情報を載せるほどスペースも紙もないため、中には一生出版されない情報も存在しました。

 ほとんどの人が目にしていたのは「小麦」だけで、不要な「もみ殻」は消えてなくなっていたのです。

 しかし今、デジタルメディアはふるいにかけられることも、制約されることもありません。人々と入手できる知識の間にあるフィルターは、「アルゴリズムのフィルター」あるいは「社会的フィルター」、もしくはこの2つを組み合わせたものです。アルゴリズム技術は、コンピューターで処理を行ってデータを仕分けし操作します。ソーシャル・ツールやオンライン・ネットワークは、選択する上の指針としての役割を担っています。

 これまでにあらゆる形でデジタル化された情報のすべては(それが価値のあるものか不要なものか、あるいは正しいか間違っているかに関わらず)いつまでも入手可能な状態でオンライン上に残り続けます。もはやフィルターは、ろ過して不要物を取り除くことはしません。フィルターは、前に押し出すようにろ過します。そして、ろ過したものを前面に持っていきます。フィルターを通過しなかったものも、目立たない場所で見ることも入手することもできる状態であり続けます。さらには、最近のフィルターは、フィルターを通過していない情報の層にまで到達できるようリンクを提供しています。

 また、インターネットが提供するコンテンツに限りはないため、従来のフィルター技術はもはや使い物になりません。そのため、くだらない情報や、単に間違った情報が山のように生まれているのです。そして、インターネット上のどこかには、認知度や科学的メリットに関係なくありとあらゆる考えを否定したがる人がいるのです。

 インターネットの出現以前、ろ過の構造は、上層部から知恵、そして知識と理解、次に情報、最後に小麦に値するデータだということが分かりました。しかし、ろ過機能のないデジタルメディアに於いて、情報を整理し見極める力のない人々には、場合によって、かなり不利に働くこともあり得ると思います。

従来の専門知識

 知識体系が根本的に変化しても、人々は必要な情報を変わらずに入手することができます。実際、情報は以前よりも入手しやすくなっています。例えば、バスの時刻表は何時にバス停に到着するのか教えてくれます。それでも2足す2は4のままですし、アルバニーもニューヨークの州都のままです。

 相変わらず人々は、専門家や学者が提供する意見や教えてくれることに頼り続けています。しかし、かつては専門家が入念に調べ、記録していた知識は、個人ではなく集団によるアイディアの発展を促すネットワーク内で育つ知識に、取って代わられつつあります。今やすっかり疲弊してしまった従来の専門知識は、次のような特徴を持っていました。

従来の専門知識の特徴とは?

専門知識はトピックに基づいている

 書籍や論文の中で、著者は1つのトピックに焦点を絞り、「一人語り」の手法を使い、最初から最後まで一貫性を保とうとしていました。

専門知識の価値は、結論の確実性にあった

 本が出版されると、その本の中に書かれた意見を修正したり変えたりすることは困難なことでした。

専門知識は一方通行だった

 専門家は本を通して一方的に大衆に話しかけ、大衆はそれに答える術を持ちませんでした。

専門家は特別な人間だった

 限られた少数の人しか本を出版できなかったことから、本を出版した著者は信頼されていました。

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