今や、IT抜きで仕事は語れない。しかし、専門家ではないのだからITの習熟に時間をかけすぎるのも考えもの。リーダーに求められる知識レベルとは?
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
今日、多くの企業にCIO(Chief Information officer)が置かれ、戦略的なITの導入に高い関心が寄せられています。広く組織全般の問題に対処しなければならないリーダーたる者、人、モノ、カネ、情報の四大経営リソース全てに精通できるわけではない。日進月歩で進化するITは、専任の者にまかせっきりで、トップは何も知らない、ということになりがちです。
しかし、ITは、企業にとって、とてつもない「カネ食い虫」です。ひとたび会社のIT環境を変えようとすると、零細企業でも数百万円、大企業なら数千万円、システムまで入れ替えれば数億円というコストが発生します。
例えばCIO、あるいはITに詳しい部下が「そろそろわが社も、Windows 8を導入しましょう」と進言してきたら、みなさんはどう答えるでしょうか。言われるがままにIT投資を行っていたのでは、その会社はもちません。
ほとんどの企業にとって、Windows 8は無用の長物です。
先日、拙著を発刊した講談社にしても、社内のパソコンはいまだにWindows XPを使っていました。講談社に限らず、実感値で約半数の会社がWindows XPを使っています。これを変更することは、10年ほど前に導入した基幹システムを全面的に変更しなければならない場合が多いからです。Windows Vista、Windows 7、Windows 8と、数年おきにバージョンアップするWindows。これにいちいち対応などしていられません。
特に、今回Windows 8は、限りなく、マイクロソフトの都合によるバージョンアップです。スマートフォン、タブレットが急速に普及することで、グーグルやアップルに対し「パソコンの王者」マイクロソフトの地位は、相対的に低下してきています。グーグル、アップルに対抗し、スマートフォン、タブレットの分野に切り込んでいくためのWindows 8なのです。タッチパネルに対応し、操作方法が従来のWindowsから大幅に変更されたといっても、パソコンユーザーにとっては、慣れた操作方法が変わるだけで、メリットはありません。
もちろん、営業社員などにスマートフォン、タブレットを持たせ、出先でもデータベースと連携できる新たなシステムを構築する、という選択肢もないわけではありません。情報端末としてスマートフォンやタブレットを広く取り入れ、抜本的にシステムを見直す戦略性があるかどうか――これは、経営トップが判断すべき重大な経営マターです。
Windows 8は、「買い」か「待ち」か――。
これは、ほんの一例ですが、こうしたIT投資の是非を判断する材料は、残念なことに、ほとんど私たちの耳には入ってきません。雑誌やWebなどに載る記事は、淡々と機能を紹介するものばかりで、「要するに、それは“買い”なのか」という肝心な部分がないからです。
これは、書き手が無能だから、というわけではもちろん、ありません。立場上、書けないのです。
わたし自身、パソコン誌の編集長を務めていたから分かりますが、メディアビジネスは、広告収入で成り立っています。したがって「Windows 8は、パソコンユーザーには無用の長物」などと書こうものなら、マイクロソフトはもちろん、パソコンメーカーからも総スカンを食らってしまい、広告収入が入ってこなくなってしまいます。
その点、書籍は、広告と無縁ですから、書きたいことを自由に書けます。
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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明治学院大学 経済学部准教授