実行に効く計画の技術ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

コンサル現場では、よく「実行できない計画」に出くわします。フォーマット通り、日程や作業工程、予算などを列挙しただけで、それぞれの実現性や必然性が明らかでない計画。これを実行に移しても、間違いなく遠からず頓挫するでしょう。計画は目標を達成するために立てるものです。ここでは、実行に効く計画の立て方を学んでいきましょう。

» 2013年04月11日 08時00分 公開
[浦 正樹,ITmedia]
※本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」のバックナンバーへ。


 まずは、ハイテク家電メーカーの新任課長、鈴木さんを例に、マネージャの計画業務を考えてみましょう。

 鈴木さんは今年、課長に昇格しました。マネージャとしての最初の仕事は、担当する商品領域の予算計画の作成です。彼は前任者の計画を参考にして今年度の予算計画を立てました。ところが半年後、彼の目標は達成不可能な状況に陥ってしまったのです。

「実行」に効く 計画の技術

 事業部長:「君は今の状況をどう考えているのかな? いったい何がいけなかったのかね?」

 鈴木:「わたしは普通に計画を立てました。景気の影響で、市場ニーズが変化してしまったのです」

 事業部長:「ほう、君は市場ニーズの変化を予測できなかったわけだ。では聞くが、君は市場をどう予測し、何を根拠に予算計画を立てたのかね?」

 鈴木:「予測というか……前年度の実績に基づいて前年比10パーセントの成長を見込みました」

 事業部長:「これまでの成長は、景気上昇に引っ張られてのものだったが、今回はそうはいかなかったわけだ。10パーセントの成長に向け、君はどのような行動をとったのかな?」

 鈴木:「春先に新商品を発売しました。これが売上アップに貢献するはずでした。ところが景気の後退で思うように売り上げが伸びず……」

 事業部長:「わたしが聞きたいのは、新商品の発売後、売り上げを伸ばすために計画していた何かだ。活動計画の内容とその結果を知りたい」

 鈴木さんは言葉を失いました。

 なぜなら鈴木さんの予算計画は、単なる数字の羅列でしかなかったからです。それは、地域を縦軸に、商品群を横軸にとり、数字を割り振ったにすぎないものでした。地域担当者と話し合って決めた数字ではありましたが、話し合った内容は手帳にメモとして残っているだけ。そもそも、活動計画など、立てていなかったのです。

 鈴木さんの計画は、いわゆる「計画することが目的の計画」です。しかし本来、計画とは、目標を達成するために立てるものなのです。

 すべてのビジネスは、目標を達成するための活動です。そして、その活動は、計画と実行に分かれます。計画と実行、このどちらに着目するかによって、皆さんの行動は全く違ったものになります。

 計画が間違っていたら、実行段階で修正するしかありません。計画に積み残しがあれば、実行に何倍もの時間をかけてやり遂げるしかありません。計画で決めた内容が不十分で実行に右往左往するようでは、実行する側はそれだけで疲弊してしまいます。計画が大雑把すぎれば、担当者は勝手に都合のいい解釈で行動してしまい、収集がつかなくなってしまいます。実行力も大切ですが、計画力がお粗末なままでは、その実行力さえ削がれてしまうのです。

 スポーツやものづくりに「技術」があるように、計画には「計画の技術」があります。計画の技術には、計画の種類は関係ありません。これは、プロジェクト計画にも、事業計画にも、イベント計画にも共通に使える技術なのです。

 難問を攻略するとき、よく「外堀から埋める」という作戦を取りますが、計画も同じです。思いついた端から攻めるのではなく、計画すべき対象の全体像を把握し、計画のポイントを整理するのです。いわば、計画のための計画です。「計画の技術」の8割は、この「全体計画」に関するものです。全体計画さえきちんと押さえることができれば、そのあとの詳細化はうまくいきます。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

アドバイザリーボード

根来龍之

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

小尾敏夫

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

郡山史郎

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

西野弘

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

森田正隆

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆