キャリアの話ができない職場に未来はない!? リーダーがいますべきこと 〜人事課題の解決策「1on1」に期待される3つの役割ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術(1/2 ページ)

多様な働き方が広がる一方、「若年層の離職」「従業員満足度・エンゲージメント率の低下」「女性管理職の壁」など人事課題に悩む企業が増えています。そんななか1つの解決策として期待されるのが「キャリア1on1(ワンオンワン)」です。なぜ、いま1on1なのか。日本で初めて社外メンター育成・マッチングサービスを事業化し、『女性部下や後輩をもつ人のための1on1の教科書』を上梓した、株式会社Mentor Forの池原真佐子さんに話を聞きました。

» 2023年04月27日 07時04分 公開
[池原真佐子ITmedia]

 この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。


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非公式の場でフォローされていたプライベート

『女性部下や後輩をもつ人のための1on1の教科書』(Amazon)

 ひと昔前までは、組織で働く人は似たような属性で似たキャリアパターンを描いてきたので、キャリア形成の話をわざわざ公式の場でする必要は多くありませんでした。また、プライベートを職場で公式に持ち出すべきではないといった意識もあったかもしれません。

 その代わりに、例えば夜の飲食店や週末のゴルフなどで集まり、ビジネスやリーダーシップの話をしたり、次に目をかける人の話をしたりして、非公式の場で大事な仕事の話がなされて、フォローされてきたのです。

 このネットワークに無理なく入れる人たちは、これまでキャリア1on1がなくても、何となく自分のキャリアについて話したり、助言をもらったりする機会がありました。けれども、そうしたネットワークに入れない人たち、例えば、介護や育児で業務後や週末の集まりに行けない人たちにとっては、キャリアの話は「蚊帳の外」であることが多かったのです。

 ただ、新型コロナウイルスの世界的な流行によってリモートワークが加速したことで、このネットワークが機能していた組織の多くで、これまで当たり前にあった「非公式な隙間時間でするキャリアの話」が、すっぽり抜け落ちてしまったという話を多く耳にします。

 さらに、多様な価値観・属性・生き方の人が、自分の能力を発揮し、ワークライフバランスが取れていて、充実したキャリア形成が実現できる組織であることが、いま以上に求められるようになりました。

キャリア全般をテーマにした1on1へ

 なぜかと言うと、労働人口が減っている中で、これまでのような日本人男性が中心で同質性の高い組織では、企業活動が維持できないだけでなく、多様化する市場に対応することもできないからです。女性や外国人、専門性や年代も異なる多様な人材が自分らしいキャリアを描きながら組織の中で活躍することができなければ、企業は今後、生き残っていくことはできません。

 以上のような理由で、働く人、とくに組織の中では「キャリアの話を後回しにはできない」という空気が醸成され、近年、キャリア全般をテーマにした1on1が注目を集めるようになりました。

 会社は仕事をする場ですが、仕事はキャリアと密接につながっています。

 だからこそ、上司や先輩に「私はなぜ、この組織で働いているのか」「この仕事のやりがいは何か」といった本質的な話を聞いてもらえることが大事であり、キャリアの話を安心して話すことができ、必要に応じて助言をもらうことが重要です。そうした場を作ることが、いま組織で求められています。

うまくいかないのは上司(先輩)が自分の役割を理解していないから

 キャリア1on1を導入している企業においても、1on1を実施する側が自身の役割を深く理解していないことがよくあります。役割を理解しているかどうかで1on1の効果は大きく異なります。しっかりと意識しましょう。

 キャリア1on1を行う側には、次のような3つの役割があります。

1、キャリア支援

2、ロールモデル、もしくはパーツモデルの提示

3、エンパワーメント(励まし、勇気づけ)

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