プロジェクト環境は、年々、複雑さを増していき、ステークホルダーの増加、コミュニケーション数の増大、市場要求の拡大は止められない。今、プロジェクトの課題に向き合わなければ増大し続けてしまう。
この記事は「経営者JP」の企画協力を受けております。
ビジネス書の著者たちによる連載コーナー「ビジネス著者が語る、リーダーの仕事術」バックナンバーへ。
プロジェクトマネジメントに無関心な人はいても、無関係な人はいないでしょう。
企業活動を行っている以上、個人であれ、組織であれ、何らかのプロジェクトに関係しているのです。プロジェクト環境は、年々、複雑さを増していき、ステークホルダーの増加、コミュニケーション数の増大、市場要求の拡大、こういった流れは止められません。あなたが現在抱えているプロジェクトに関する課題は、1年前、2年前、5年前と同じではないでしょうか。その課題が、さらに1年後も、2年後も、5年後も解決できずにいるとしたら、あなたやあなたが属する組織は耐えられるはずもないでしょう。今、課題に向き合わなければ、その課題は増大し続ける一方なのです。
計画時にリスクを把握していたかどうかにかかわらず、プロジェクトを進めていくと毎回のように同じ問題が発生する、といった経験を多くの人が持っています。それには、2度と同じ問題を繰り返さないように対策を打っても、また同じような問題が発生し続けてしまう、という経験も合わせて持っているのではないでしょうか。
プロジェクトの問題はさまざまですが、それは必ず「遅れ」として顕在化します。
品質未達、リソース不足、部門連携不足などの問題は、プロジェクトの遅れとして現れることで、はじめて皆が認知することになり、事の重大さに気が付くのです。
納期よりもずっと前に遅れそうであるということが共有されていれば、まだ良い方です。多くの場合、サプライズ遅延が発生します。前回の報告までは納期に間に合うと聞いていたのに、今回の報告では大幅遅延が突きつけられる、ということも多発します。そして、慌てて対策を検討しますが、納期間近のギリギリの報告で遅延を報告されても、実行できる対策は限られてしまいます。結果として、QCD(品質、コスト、納期)のいずれかを犠牲にせざるを得なくなります。
プロジェクトは、問題が発生し続けて遅れるものであるならば、「遅れ」を前提としたマネジメントに変化させるのはいかがでしょうか。
プロジェクトが「遅れるリスク」をいち早く察知できれば、その遅れの要因をいち早く把握でき、いち早く対策を実行することが可能となります。
それは「プロジェクトにバッファを配置する」というシンプルな方法です。「バッファなんてない」という声が聞こえてきそうですが、「バッファ=安全余裕期間」と捉えるのではなく、「バッファ=遅延リスク察知期間」と捉えるのです。
プロジェクトの最後に「バッファ=遅延リスク察知期間」を設定します。それぞれのタスクに遅れが発生した場合、バッファがその遅れを吸収します。一つひとつのタスクが計画日程を守れるかどうか心配し続けることも、全てのタスクに対して遅れが発生したら対策を打ち続けるということも必要ありません。タスクの遅れがバッファの消費に結びついた場合のみ、遅れ理由の特定と対策実行を行うだけでよいのです。
プロジェクトの遅れを把握するのは非常にシンプルです。プロジェクトのバッファの消費状況を信号機のように「色」で把握するだけでよいのです。
全てのタスクの遅れに対して対策を実行する必要はないのです。プロジェクトのバッファに影響した場合のみ課題特定と対策実行を行うだけで、プロジェクトの遅延リスクは軽減できるのです。信号機の色と同じなので、誰もが直ぐに同じ判断基準を持つことができます。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上
早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授