業務改革の原動力となるのはやはり「ヒト」今こそ攻めのIT投資を(1/2 ページ)

いかなる経営者にとっても、企業の利益の最大化と継続的な成長こそが最大の関心事といえる。それを実現するための経営手法の1つがBPMである。日本企業への普及に向けて“草の根活動”を行う日本BPM協会の横川省三事務局長に、BPM導入の勘所を聞いた。

» 2008年09月05日 08時00分 公開
[伏見学,ITmedia]

 企業の業務改革を推し進める手法として注目を集めているビジネスプロセス管理(BPM:Business Process Management)。業務プロセスを整理、分析し、いかに仕事を効率化していくかを熟慮しながら継続的に改善を繰り返していく。例えば日産自動車では、情報システム部門を世界レベルにまで引き上げることを目指した「BEST戦略」の一環としてBPMを導入し、各ビジネスプロセスで用いられているITと、ITに起因するコストの徹底的な洗い出しを行うことで、無駄なコストを削減し業務改善を実現した。

 このような成功事例に倣い、BPMの導入を検討する企業は多いが、とりわけ日本においてはあまり進んでいないのが現状だろう。BPMを推進できる人材の不足が阻害要因の1つだと指摘する日本BPM協会の横川省三事務局長に話を聞いた。

日本BPM協会の理事と事務局長を兼務する横川省三氏 日本BPM協会の理事と事務局長を兼務する横川省三氏

 日本BPM協会は2006年1月に設立された。同協会の母体である日本能率協会コンサルティング(JMAC)で以前からBPMを実践していたことや、独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)がIT産業の発展の場としてBPMに期待していたことなどが設立背景にあった。

 同協会の主目的はBPMの啓蒙活動だ。主な事業内容は、BPMの概念、方法論について実務者と有識者が発信する知識や先進的な研究を基に共通の概念(コモンセンス)を構築したり、BPMを推進するための方法論の研究や人材の育成を行ったりしている。横川氏は「BPMを社会で普及させるにはある程度の共通化、標準化が必要」とコモンセンスの重要性を強調する。また、ワークショップなどを開催することでBPMにかかわる知識の相互交流の場を提供している。

ワークフローが見えずブラックボックスに

 BPMといえばITの専門的な技術だと勘違いする人も多い。同協会の定義によるとBPMとは、「企業活動の俊敏性・業績・コンプライアンスの向上といった経営目標の実現に向けて、人・組織のシナジーを高め、ITを有効に活用して、業務プロセスの可視化・改善を迅速かつ継続的に実現する新しいマネジメントの考え方・領域」という。ここでいうITとは、業務プロセスを自動化、可視化するミドルウェアであるBPMツールを指す。

BPMの推進フレームワーク BPMの推進フレームワーク(日本BPM協会資料より)

 あくまで業務改革の担い手は社員であり、そのサポートとしてITを活用するのである。現在はほとんどの企業においてITなしで業務を回すことはほぼ困難であるため、「BPMにおいてITは必須」(横川氏)という。

 ただしITはツールにすぎず、ITの前にBPMの仕組みを理解しておく必要がある。

 横川氏は時系列に沿って解説する。現場のカイゼンやTQC(統合的品質管理)が活発であった80年代にワープロのようなOA機器が導入され、ある程度の業務のシステム化が可能になった。

 90年代に入り、業務改革(BPR:Business Process Re-engineering)や統合基幹業務システム(ERP:Enterprise Resource Planning)などの登場によって企業でIT化が加速しホワイトカラーの生産性が向上した。一方で、これまで属人的に管理されていたワークフローや情報システムが見えなくなり、ブラックボックス化が生じてしまった。

 さらには、多くの企業で組織のフラット化が進み中間管理職の人数が減少したため、彼らに業務上のさまざまな負荷が一極集中することになった。そのためBPMツールを使って業務プロセスを可視化し、最適なワークフローを見直すという動きが出てきた。これがBPMだという。

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