ニュース
» 2008年10月30日 17時21分 UPDATE

危機を乗り切るマネジメント術:名指南役が教える「このスキルを磨かないと危ない」 (1/2)

株式会社武蔵野の小山昇社長は「部門や現場の責任者が当事者意識を持って仕事に取り組まなければ、この難局は乗り切れない」と語る。

[村上敬,ITmedia]

 世界的景気減速と急激な円高が、輸出産業を中心とした企業の業績を直撃している。内需中心の企業も他人ごとではない。リーマンショックに端を発した世界同時株安は底が見えず、27日に東京株式市場でバブル崩壊後の最安値を更新。多額の含み損を抱えた金融機関の貸し渋りは既定路線で、企業倒産の増加も避けられそうにない。



 はたして部門や現場のリーダーたちは、この経済危機をどう乗り切っていけばいいのか。多くの経営者から幹部育成ノウハウを支持されている武蔵野の小山昇社長に、管理職に必要な心構えを聞いてみた。

中堅中小企業は、すでに青色吐息

koyama2.jpg 「中堅中小企業が倒れれば、大企業にも大きな影響が出る」と語る小山社長

――米国視察から帰国されたばかりだそうですが、向こうの様子はいかがでしたか。

小山 弊社では毎年ラスベガス研修を実施していますが、今年は去年までと明らかに様子が違いました。まず驚いたのは、渋滞に一度もあわなかったこと。道路はガラガラで、ホテルには客待ちのタクシーが二重になって列を作っていた。また、去年まで予約を取るのが難しかったレストランも、今回は直前の予約でオーケーでした。不景気の影響で、明らかに観光客は激減している。それを肌で実感してきました。

――米国は相当に深刻ですね。

小山 米国だけじゃありません。ここ数年目立っていた中国や韓国からの観光客も、今年はほとんど見かけなかった。まさしく世界同時進行で景気が減速している証拠です。

――日本の状況もかんばしくありません。

小山 いま、日本の中堅中小企業の経営者は真っ青な顔をしています。なにしろモノが売れる売れない以前の問題で、銀行が融資をしてくれないのですから。

 かつて銀行が経営危機に陥ったとき、国民は血税を投入して銀行を救いました。その後、都銀は経営基盤強化のために再編を繰り返して、現在は4つのメガバンクになった。国民生活を守るという意味で公的資金の導入は正しい選択だったのかもしれませんが、中堅中小企業は再編によって取引実績や担当者との人間関係まで白紙に戻され、ただでさえ厳格化されつつあった融資審査がますます通りにくくなった。そこにきてこの金融危機。中堅中小企業の経営者は本当に困っていますよ。

 もちろん困るのは中堅中小の企業だけではありません。下請けがバタバタと倒産すれば大企業も直接的な損害を被るし、日本のサラリーマンの圧倒的多数である中堅中小の社員たちが路頭に迷えば、消費がさらに冷え込んで大企業の業績も悪化する。それを見て、銀行はますます貸し渋るようになるはず。この負の連鎖を断ち切れるかどうは銀行しだい。審査を無闇に甘くしろというわけではないが、せめて業績のいい企業や取引実績のある企業には積極的にお金を回すべきです。

自分の生活を守るために会社の利益を確保せよ

――こうした危機的状況を回避するために、部門や現場のマネジャーに何か具体的にできることはあるのでしょうか。

小山 現実的な話ですが、まずは経費を使わないことが大切です。例えば導入したいシステムがあっても、それがいますぐ必要なものでなければ、棚上げして来年度に先送りしたほうがいい。もっと細かな備品も同じ。とにかくいまは我慢の時期です。

 現場を管理するマネジャーにとって、経費削減は愉快な話ではないでしょう。ただ、経費削減は会社のためではなく、自分のためだと思えばいい。例えば住宅を買うためにローンを申し込んだとします。このとき銀行は勤務先の業績までチェックしている。現在それなりの収入があっても、勤務先の経営状態に不安があればローンの審査も通りません。会社の利益を確保することは、結局、自分の生活を守ることにつながるのです。

 会社の業績と個人の生活に密接な関係があるのは好景気のときも同じですが、不景気のときほど関係は近くなります。経済危機は他人事だと思っていたら大間違い。管理職にも、ぜひその意識を持ってもらいたいですね。

――経費削減の一方で、現場には売上を伸ばすことも求められます。消費や企業の設備投資が冷え込むなかで、どのような点に気をつければよいでしょう。

小山 お客様を区別することでしょうね。売り上げを伸ばすためには顧客満足の追及が重要ですが、実はすべてのお客様に当てはまるわけではない。お買い上げ100万円のお客様と1000円のお客様がいれば、区別して戦略を変える必要があります。

――具体的にはどういう区別の仕方なのでしょうか。

小山 通勤電車に乗って「椅子が硬い」「混んでいて座れない」とクレームをつけるお客様はいません。ところが、電車が遅延して時間どおりに到着しないとクレームが殺到する。つまり1000円のお客様に必要なのは、顧客満足の追及ではなく、顧客不満足の予防や解消。そこを間違えて通勤電車にグリーン車のサービスを展開しても、売り上げは伸びないし、経費の無駄遣いになるだけです。

 大切なのは、100万円のロイヤルカスタマーにリソースを集中的に投下する一方で、1000円のお客様が不満足に陥らないよう品質管理を徹底すること。そうすれば両方のリピート率が高まるはずです。この感覚がないマネジャーは、非効率で無駄の多い営業を展開しているのに、自分では一人前の仕事をした気になっている。それでは管理職失格です。

       1|2 次のページへ

Copyright© 2017 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ITmedia エグゼクティブのご案内

「ITmedia エグゼクティブは、上場企業および上場相当企業の課長職以上を対象とした無料の会員制サービスを中心に、経営者やリーダー層向けにさまざまな情報を発信しています。
入会いただくとメールマガジンの購読、経営に役立つ旬なテーマで開催しているセミナー、勉強会にも参加いただけます。
ぜひこの機会にお申し込みください。
入会希望の方は必要事項を記入の上申請ください。審査の上登録させていただきます。
【入会条件】上場企業および上場相当企業の課長職以上

ピックアップコンテンツ

- PR -
世界基準と日本品質を極める Clients First with Innovation & Japan Quality

アドバイザリーボード

早稲田大学商学学術院教授

根来龍之

早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授

小尾敏夫

株式会社CEAFOM 代表取締役社長

郡山史郎

株式会社プロシード 代表取締役

西野弘

明治学院大学 経済学部准教授

森田正隆