中期経営計画のあるべき姿――大変革期における経営計画策定・実行のポイント視点(3/3 ページ)

» 2013年12月09日 08時00分 公開
[平井 孝志、佐谷 義寛(ローランド・ベルガー),ITmedia]
Roland Berger
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6.計画実行に必要な取り組み

 また、計画の実行おいては、これまでにない発想の取り組みが必要と考える。(図表4)

6-1)「経営トップ任期の長期化」

計画実行に必要な大胆な取組み

 10年単位での中期経営計画を策定し、成長分野に大胆にリソース配分を行い、結果を出すためにも陣頭指揮を取る社長の任期は長期であることが望ましい。先にも触れたが日本の社長の任期は長くて6年、短ければ3〜4年程度である。この任期内では、短期的な収益確保や失敗しないことが優先され、大胆なリソース配分はできないだろう。経営トップの在任期間が長いほど業績が良い、という研究データがあるくらいである。再成長に向け大きな改革を成し遂げた企業は、その指揮にあたった経営トップの任期が長かったという事例は先にも示したとおりである。ただ、単に任期が長ければ良いというわけではない。他の経営陣や現場を束ね、改革を成し遂げるために必要な資質やスキルを経営トップが持っていることは大前提である。

6-2)「経営企画部門に強い権限とそれに伴う責任を持たせる」

 トップダウンによるありたい姿からのバックキャスティングで計画をつくるには、強い権限を伴った調整機能を持つ経営企画部門が必要である。経営企画は、経営トップが示す大きな目標の実現に向けて、どの事業でどれだけの売上・利益が必要となるか、既存事業や新規育成事業の事業ポートフォリオ上のミッションに照らしながら青図を組み立てる。それを各事業部や機能部門と調整しながら実現に向けた具体策に落とし込むコンダクターの役割を果たさなければならない。大きな成長に向けての全体最適解を出すことができるのは、経営トップに近く、社内で中立的な立場を取れる経営企画だけである。また、経営トップの任期が短期となる場合にも、次のトップにバトンを持たせ、成長戦略に長期視点による一貫性を持たせるのも経営企画の大きな役割になる。

6-3)「次世代の経営幹部として、経営企画や事業企画の担い手となる若手の早期選抜・育成」

 経営計画は、アクションに落とし込み、実行し結果を出せなければあくまでも画餅である。「計画を立てるだけでなく、現場のアクションに落とし込み、PDCAを回せる人材が不足している」といった悩みを持つ企業も多い。日本企業は、強い現場を支える営業や技術開発のスーパースターの育成には躍起だが、これからは「経営企画」「事業企画」に必要な“戦略家”のスターの育成にも注力すべきであろう。そうした人材は偶然育つのを待つものではない。若いうちに資質を見抜き、計画策定や実行の現場で鍛えることで意図的に育成し、将来の経営幹部へと絞り込んで行くキャリアパスを設計する必要がある。

7.最後に

 本稿を目にされた経営に携わる方々及び企画部門の皆様は、自社の中期経営計画についてどのようにお感じになられたであろうか。「10年単位の中計なんて無理だ。あり得ない」と多くの方は所感をもたれたのではなかろうか。もしそうお考えであれば今一度振り返って頂きたい。“今の3年単位の中計を実現すれば、この大変革期の中で10年後、20年後と生き残って大きな成長を勝ち得るのだろうか?”

 では「10年計画」なるものはどのように策定するのか?その点については、「10年後の大きな成長の絵姿の描き方」とともに近いうちに再度寄稿させていただきたいと思う。

著者プロフィール

平井 孝志(Takashi Hirai)

ローランド・ベルガー 取締役 シニアパートナー

東京大学大学院理学系研究科修士課程修了後、米国系戦略コンサルティング・ファーム、デル及びスターバックスなど複数の事業会社を経て、ローランド・ベルガーに参画。米国マサチューセッツ工科大学スローン経営大学院MBA。博士(学術)。消費財、コンピュータ、自動車など幅広いクライアントにおいて、営業・マーケティング戦略、全社戦略の立案および実施に豊富な経験を持ち、最近では、中堅企業のターンアラウンド、組織改革を数多く手がける。企業・事業再生グループの中心メンバーの一人。


著者プロフィール

佐谷 義寛(Yoshihiro Saya)

ローランド・ベルガー シニアプロジェクト マネージャー

東京大学法学部卒。電通を経てローランド・ベルガーに参画。主に、クライアント各部門・各機能の“現場力強化”“生産性向上”を目指し現場に1歩踏込んだオペレーション改善・改革やコスト削減などのプロジェクトを様々な業種にて経験。東京オフィスにおけるオペレーション・チームの中心メンバーの一人


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