日系電機メーカーにとって中国市場は魅力的だが難しい市場である。中国で成功するためには共存共栄が選択肢のひとつである。その具体的な方策は。
日系電機メーカーにとって中国市場は魅力的だが難しい市場である。中国市場における多くの製品カテゴリーで日系企業のシェアは低迷する一方、中国企業が中国政府の支援を得ながらばく進している。その勢いはすでにグローバルに及んでおり、大きな脅威になり始めている。日系電機メーカーが中国で成功するために、中国政府や中国企業と共存共栄する道が一つの選択肢であることを事例を参考にしながら論じる。
日系電機メーカーにとって中国は魅力的な市場である。中国は国内総生産(GDP)で米国に次いで2位にある経済大国である。以前のような爆発的な成長から減速したと言われているが、約13億人の消費パワーは絶大である。全世界のコンシューマー・エレクトロニクス市場において中国が占める割合は、2011年時点で約16%(額にして1,230億ドル)。これまで年率12%で成長しており、この成長基調は今後も続くと予想されている。
しかし、日系電機メーカーにとって中国市場には多くの問題が存在する。第一に儲けることが極めて難しい。低価格は当たり前、その中でさらに価格崩壊が起こる。第二に、あらゆる形で存在する国内保護規制。日系を含め外資系企業は事業活動が公式・非公式な形で制限されており、思うように事業展開でき
ない。第三に「コピーできてこそ本物」という通常であれば特許侵害・ビジネスマナー違反ともいえることを堂々とできてしまうマネ文化。特に電機業界はデジタル化が浸透していることからマネすることは容易である。
日系電機メーカーはこれまで多くの電機製品を中国で展開してきた。元々日系ブランドは評価されていたこともあり、ハイエンド製品を中心にそこそこ売れていた。しかし、現状はより厳しい状況にある。すでに多くの白物家電製品は中国勢の牙城にある。パソコン、テレビ、携帯電話など多くの製品カテゴリーでは中国勢が急激に追い上げており、日系を含む外資の勢いは失速している(図1参照)。
電機業界における中国勢のばく進はグローバルでもすでに始まっている。例えば、コンシューマー・エレクトロニクスの中でも通信分野に強いHuaweiが良い例だ。1999年にインドに子会社を設立した後、インドネシアやアフリカ市場へ展開を進めており、成功している。同社はインドでは通信機器でのリーダーであり、セットトップボックスで24%のシェアで一位、3Gモデル市場では65%のシェアで一位のポジションを確立している。インドネシアとアフリカではスマフォ市場でそれぞれ二位と一位である。
Huaweiのような中国企業の成長とグローバル展開の成功の背景には様々な要因が考えられる。中国企業自身の中国市場におけるリーダーシップの形成、国内・海外市場の融合・グローバル化、中国以外の新興国市場の急成長、低コストを武器にした競争優位性の確立などだ。これらに加え、大きな影響があるのは、中国政府の産業育成に対する政策である。中国政府は、これまでの成長を支えてきた、労働集約産業から脱却するために、様々な産業育成に力をいれており、その中核となる中国企業を直接・間接的に支援している。経済成長に伴う賃金上昇で他国との製造コスト上の優勢性が少しずつ低下する中、早急に中国企業のグローバル化を急ぐ中国政府の焦りが見え隠れする。
実際に中国政府は、電機業界において中国企業の成長とグローバル展開を積極的に支援する方針を明言している。指導部の明確な方針のもと、モバイル通信端末や家電産業では具体的な政策を打ち出し、中国企業の成長とグローバル化を後押ししている(図2参照)。
こうした状況の中、日系電機メーカーは中国市場でどのように戦い、どのように中国と付き合うべきであろうか。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授