日本企業が「重要な経営課題をデジタルで解決するために」どのような取り組みが必要かを考えてみたい。
第2回:ビジネスアナリシスの知識体系BABOKガイドとは(前編)
第3回:ビジネスアナリシスの知識体系BABOKガイドとは(後編)
第7回:戦略と実行の橋渡し、ビジネスアーキテクチャの役割――デジタル時代を生き抜く、企業の新しい羅針盤
第8回:要件定義をツールで行なう:ビジネスアナリシスツールの紹介
2000年代に入り、日本の生産性(1人当たりGDP)の成長が止まった。時を同じくして、ITがインターネットと共に大きく進化し、それを活用した欧米は着実に生産性を上げてきた。
日本企業もデジタルを使ってはいるが、小規模な改善にとどまり、生産性を上げるまではできていない。もっと、重要な経営課題に踏み込んで、デジタルを活用することに取り組む必要があるのではないかと考える。
そこで、「重要な経営課題をデジタルで解決するために」どのような取り組みが必要かを考えてみたい。
(1)表面化している課題(例)
(2)長年の懸案課題(例)
デジタルだけですべてが解決できるわけではない。しかし、デジタルを使うことで一定の生産性向上効果が実現できるうえに、新しいビジネスプロセスを導入しやすくなり、プロセスを可視化して継続的な改善のためのデータも取集できる。
しかし、いざ実際に経営課題に取り組もうとすると、いくつかの壁がある。例えば、ホワイトカラーの変動費化・生産性向上をテーマに、デジタルをどのように活用できるかを経営が考えようとしたとき、以下のような問題に遭遇することが多い。
(1)課題解決を担当する部門がない
ホワイトカラーの生産性を組織ヨコグシで調査・分析・改革を担当する部門がない。そこで、各部門それぞれに指示するも、改善を図る部門はない。
(2)デジタルだからIT部門に頼んでも
IT部門は、ビジネスからの具体的な要請をソフトウエアにする役割だから、ビジネスの生産性向上を企画できる能力は持たない。
経営課題を解決しようとしたとき、解決したいとする経営者の手の届くところにデジタルがない。大きな空白地帯の向こうにデジタルがありそうだが、声が届かないという感じになっている。もう少し具体的に「空白」を分析してみると、以下のようにいろいろなところに空白がある。
(1)「現場」と「経営」の間にある「空白」
日本企業は「現場の改善」を大事にすることで成功を手にしてきた。一方、このアプローチは、部分的な効率化を追求するもので、企業全体を見渡す構造改革の視点に欠けることがある。故に、ホワイトカラーの生産性という企業全体での視点で行動する部門が存在しない。また、利益率20%を目指そうとすれば、既存のオペレーション改善のレベルでは不可能だが、抜本的な改革を企画する部門がない。
2)「事業部門」と「IT部門」の間にある「空白」
ITの技術が日々高度化していくなかで、その技術進化を追うIT部門と多忙な事業部門との間に「空白」が生まれている。その空白が、密なコミュニケーションをとりにくい深い溝になっており、ざっくばらんな対話の機会が持てない。
よって、「事業改革」レベルの案件を深く相談する機会がつくれない。結果、小規模な改善を繰り返すことになり、経営課題とデジタルがますます遠くなっている。
(3)「事業部門」と「顧客」と「IT」の間にある「空白」
企業の商品やサービスを、ITを使って顧客とダイレクトに手続きする業務が増え続けている。一方で、事業部門縦割りでのサービス提供になっているとか、顧客がこれらのITサービスに関してストレスを感じているなど、新たな問題が出てきているが、それらをマネジメントする部門がない。
(4)「ERP」と「経営」と「事業部門」と「IT部門」と「現場」との間に「空白」
業務改革は、必ずそれを支えるソフトウエアを調達する必要がある。ERPを選択したケースでは、投資額の超過、改革効果が出ない、導入そのものが失敗など、多くの失敗事例が報告されている。
この問題も、社内のどの部門もERPとの間に「空白」があることに起因しているのではないだろうか。
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早稲田大学商学学術院教授
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明治学院大学 経済学部准教授