知識体系とは、ある分野やテーマに関する情報を整理し、理解しやすくするための道具で、コラボレーションが可能になり、専門活動において重要な役割を果たす。
第2回目はビジネスアナリシス知識体系(BABOKガイド)について学びましょう。BABOKの内容は膨大(500ページ)なので。前編と後編に分けて紹介します。今回は前編です。
知識体系とは、ある分野やテーマに関する情報を整理し、理解しやすくするための道具だと思いましょう。多くの概念や原則を整理し、関連付けることで、その分野における基礎知識や専門知識がより明確になり、その分野の専門家や関係者が共通の言語や枠組みを持ちますのでコラボレーションが可能になり、専門活動において重要な役割を果たしますね。
プロジェクトマネジメントの活動をまとめた知識体系としてPMBOKガイドが有名です。同様にビジネスアナリシスにもBABOKガイド(a Guide to the Business Analysis Body Of Knowledge(R))という知識体系があります。
まず、ビジネスアナリシスにおいて最も重要な6つの用語(コンセプト)をしっかり理解しましょう。
・チェンジ:ニーズに対応するトランスフォーメーションの行為です。
企業のパフォーマンスを向上させるためのもので、DXまで含んでいます。他の知識体系には見られないBABOKを際立たせる用語(コンセプト)です。
・ニーズ:対処するべき問題または機会です。
ニーズがステークホルダーの行動意欲を駆り立てて、チェンジを引き起こします。 「何かしたい」「何かしなくてはいけない」という、まだ要求とは言えない潜在的なものまで含みます。要件定義作業ではステークホルダーの「要求」を重要視していますが、このビジネスアナリシスの知識体系では(聞けば教えてもらえる)要求より、まだ潜在的な(ひとが認知していないレベルの)ニーズにより重きを置きます。その潜在的なニーズを発見しソリューションを提供することができれば、より大きな価値を実現できるだろう、という考えです。
・ソリューション:あるコンテキストにおいてニーズを満たす具体的な方法です。
決してITシステムだけではありません。プロセス変更、ビジネスモデル変更、組織力も対象です。
・価値:あるコンテキストにおいてステークホルダーに対する値打ち、重要性、または有用性です。実現されたリターン、利益、改善などです。損失、コスト、リスクなどの低減も価値です。
・ステークホルダー:チェンジ、ニーズ、ソリューションと関係するグループや個人です
・コンテキスト:チェンジに影響を及ぼし、チェンジから影響を受ける周囲の環境です。
態度、振舞い、信念、文化、人口動態……チェンジに関する環境内の全てを指します。最初はとっつきにくいのですが、慣れると非常に便利な概念です。国内、海外、グローバル、日本語、英語など。 最近ではアジャイル・コンテキストという言い方もあります(アジャイル開発でビジネスアナリシスを行うことを意味します)。
上記の「チェンジ」、「ニーズ」、「ソリューション」、「価値」、「ステークホルダー」、「コンテキスト」の6つの用語のことをビジネスアナリシスのコア・コンセプトと言います。
あるコンセプトが別のコンセプトで定義されていますから、その関係を示したものが次の図です。
最終的には「価値」が出ないといけませんが、その大元はステークホルダーの「ニーズ」です。そのニーズを満たす「ソリューション」を作成して提供すればよいと考えがちですが、ソリューションを作成するだけではいけません。
「ステークホルダー」がソリューション(例えばERPやCRM)を使うことにより今までになかった価値が生まれます。従来、エクセルで作業をしていたものを新しいソリューションに切り替えて(それがチェンジ)使うわけです。どんなに優れたソリューション(ERPなど)でも、誰も使わなければそこには価値は生まれません。ですからチェンジする(エクセルからERPに切り替えて使う)ことがとても重要です。
ですがそのチェンジ(ソリューションを使うこと)も環境や組織文化に影響されます。同じソリューションでもそれが有効に機能する組織もあればそうでない組織もあります。それが「コンテキスト」で、言語、年代、性別、国、文化……などチェンジの環境全てです。どのコンセプトも同等に必須のものですが、最近注目されているデジタルトランスフォーメーションの観点で見るとチェンジが密接な関係があります。
チェンジは「ニーズに対応するトランスフォーメーションの行為」と定義されていますから、まさにデジタルトランスフォーメーションそのものも含まれます。BABOKはチェンジ(トランスフォーメーション)に重きを置いた知識体系ということが言えるだけにDXと相性がよいのではないでしょうか。
そして、ビジネスアナリシスは上記6つのコンセプトにより定義されています。
「ビジネスアナリシスは、コンテキストを考慮しながら、ニーズを定義し、ステークホルダーに価値を提供するソリューションを推奨することにより、エンタープライズにチェンジを引き起こすことを可能にする。」(IIBA発行「ビジネスアナリシス標準」より)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
株式会社CEAFOM 代表取締役社長
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明治学院大学 経済学部准教授