戦略と実行の橋渡し、ビジネスアーキテクチャの役割――デジタル時代を生き抜く、企業の新しい羅針盤ビジネスとITを繋ぐビジネスアナリシスを知ろう!(1/2 ページ)

デジタル技術の進化が加速する中、ビジネスとITの連携強化は不可欠であり、ビジネスアーキテクチャはその橋渡し役として注目されている。

» 2024年09月18日 07時06分 公開
[藤重茂ITmedia]

ビジネスアーキテクチャへの期待

 現代のビジネス環境はグローバル化やデジタル化により複雑化し、企業は迅速な変化への対応と全体最適化が求められています。しかしながらDX推進や基幹システムの更新の失敗、不十分なデジタルビジネス対応など課題が顕在化しています。このような状況下で、ビジネスアーキテクチャは企業全体の構造と機能を可視化し、戦略と実行の整合性を確保することで、変革を推進し、持続的な成長を支援する重要な役割を果たします。

 特に、デジタル技術の進化が加速する中、ビジネスとITの連携強化は不可欠であり、ビジネスアーキテクチャはその橋渡し役として注目されています。また、顧客ニーズの多様化に対応するため、顧客中心の視点からビジネスプロセスや情報システムを設計する上でも、ビジネスアーキテクチャの重要性は高まっています。

 そのビジネスアーキテクチャですが、この言葉はさまざまなシーンで少しずつ異なる意味で使用されています。ここでは混乱を避けるためにその代表的なものを上げ、ここでの解説対象とするビジネスアーキテクチャを特定します。その上でビジネスアーキテクチャが企業、組織内で果たす役割について、その概要を解説します。

多様なビジネスアーキテクチャ

 以下にビジネスアーキテクチャに関連する3つの例を挙げます。

  • エンタープライズアーキテクチャ(EA)のビジネスアーキテクチャ:EAの4つの層における最上位層となり、企業全体の構造と機能を俯瞰し、ビジネスの全体最適化を図るための設計図。
  • IPAのDX推進スキル標準のビジネスアーキテクト: IPAの定義するビジネスアーキテクトは、DX推進において、ビジネス課題を特定し、デジタル技術を活用した解決策を設計・実装し、関係者を調整しながらプロジェクトを推進する役割を担うと定義。この定義からすればビジネスアナリストのことだと考えられる。
  • 特定の業界やフレームワークにおけるビジネスアーキテクチャ: 特定の業界やフレームワークにおいて、ビジネスの構造やプロセスを記述するためのモデルまたは方法論。

Bizbok(R)のビジネスアーキテクチャ

 先に上げたビジネスアーキテクチャとビジネスアーキテクトは、それぞれの考え方や体系の中でその役割が定義されたものです。これに対して、ビジネスアーキテクチャの考え方とテクニックを汎用的に体系化したのが、米国に本部があるBusiness Architecture Guild が提唱する知識体系であるBizbokのビジネスアーキテクチャです。

 Bizbokは業界や特定のフレームワークに依存しない一般的な定義を提供していますが、業種、業界向けのリファレンスも示しており、個別業種での適用も可能な体系となっています。Bizbokでは、ビジネスアーキテクチャを「ビジネス戦略を実現するための構造と振る舞いの設計」と定義しています。「構造と振る舞い」とは、ビジネスの仕組み、機能、およびプロセスを指します。

Bizbokのビジネスアーキテクチャの構造

 ビジネスアーキテクチャは10個のビジネスドメインを持ちます。さらにドメインは、4つのコアドメインと6つのその他ドメインに分類されます。

 コアドメイン:Capability(ビジネス能力)、Value Stream(価値創造の流れ)、Organization(組織構造)、Information(ビジネス情報)

 その他ドメイン:Stakeholder(関係者)、Strategies(戦略)、Policies(方針)、Products & Services(製品とサービス)、Initiatives & Projects(イニシアチブとプロジェクト)、Metrics & Messures(指標と物指し)

ビジネスアーキテクチャ ドメイン

 上記の図はドメインをマッピングしたものです。中心にあるコアドメインはビジネス的に安定した、あまり変化しないビジネス領域です。外側のその他ドメインはビジネス環境によって変化する、ビジネス領域です。

 ビジネスアーキテクチャはこのドメイン毎にMapと呼ぶモデルを作成し、ビジネス構造を可視化します。またそれぞれのモデルをクロスマッピングすることで、さらにビジネスの状態を多角的に理解する手段を提供します。

Bizbokのビジネスアーキテクチャのアウトカム

ビジネスアーキテクチャは次のようなアウトカムを創出します。

  • 戦略と実行の橋渡し: ビジネス戦略と日々の業務、ITシステムとの間のギャップを埋める役割を果たします。
  • 全体最適化: 組織全体の構造と機能を俯瞰し、最適化を図るための視点を提供します。
  • 変化への対応: ビジネス環境の変化に対応するために、柔軟かつ持続可能なビジネスモデルの構築を支援します。
  • 共通言語: 関係者間のコミュニケーションを円滑にするため、ビジネスに関する共通の言語と認識を提供します。
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