データドリブン経営へ向けて、IIBAではビジネスデータ分析分野におけるビジネスアナリシスを拡張した知識体系としてBusiness Data Analyticsガイドを発表した。
第5回目は「データードリブン経営へ向けて:BDA入門」です。まず、データアナリティクスにおけるIIBAの最新調査結果を紹介します。まさに、データドリブン経営をすることが現在の経営課題です。
この調査では経営者の75%は自社がデータドリブンな組織にならなければいけないと信じています。そして80%は自分の業界は今後2年以内に壊滅的打撃を受ける可能性があると感じているとのことです。
そこでIIBAではこのビジネスデータ分析分野におけるビジネスアナリシスを拡張した知識体系としてBusiness Data Analytics(略してBDA)ガイドを発表しましたので、その概要を解説します。
BDAにおいて重要な4つの方法(アプローチ)があります。
データを記述したり要約したりすることで、過去についての洞察を提供します。「何が起こっていたのか」という質問に答えることを目的としています。
例:地域別の売上データの集計と要約。
なぜ結果が発生したのかを探ります。「なぜ特定の事象が発生したのか」という疑問に答えるために使用されます。
例:特定の四半期における売上げの急な落ち込みについての調査。
データの過去の傾向を分析し、将来についての洞察を提供します。「何が起こりそうか」という疑問に答えるために、予測分析を活用します。
例:来期に発生しそうな損益の予測
さまざまなアナリティクスから得られた知見を利用して、検討中の意思決定の予想される効果と成果を定量化します。「もし私達があることを実行したら、何が起こるだろうか」という質問に答えることを目的としています。
例:組織がマーケティング費用を10%増額したとき、総売上はどうなるか。
記述的、診断的は比較的単純なデータ分析で済みますが、予測的、処方的となるとかなり高度な分析をしなくてはいけないことが想像できますね。
BDAの幅広い応用例を紹介します。
これだけの応用例があると実際に活用してみたくなるのではないでしょうか。
次の図はBDAの基本的なアプローチですが、いわゆる一般的な仮説検証と同じものです。
最初に、この書籍での「ビジネスデータアナリティクス」の定義です。
「ビジネスアナリシスとデータアナリティクスの専門領域の両方の面を含み、エビデンス駆動型のビジネス上の意思決定を通じてより良いビジネス成果を創造するために利用される専門的研究領域 (a Specialized area of study)」
要するに、ビジネスアナリシスとデータ分析の両方の知識を必要とする体系です。次の図が全体像として分かりやすいと思います。
要するに、BDAはビジネスアナリストとデータサイエンティストが協働で問題解決にあたる専門分野と言えます。
それでは具体的内容に入っていきましょう。ビジネスデータアナリティクス(BDA)には次の6つの領域(ドメイン)があります。
最初の「調査課題を特定する」領域で主に行うことは次のとおりです。
「ビジネス上の問題または機会を定義」はまさにビジネスニーズを特定することにほかありません。そして「ステークホルダーを特定し理解する」は関係者を特定します。
「現状を評価する」はBABOKの戦略アナリシスのタスクと同様で、ビジネスの現状分析です。そしてそれらのあるべき姿を「将来状態として定義」しゴール、目標・KPIを定義します。
「調査課題を定式化する」では、ビジネスニーズから調査課題として前述の4つの方法のどれを採用するかを決定します。
質問例:小売店の顧客体験を改善する場合
2番目の「データを入手する」領域です。
与えられた調査課題に必要なデータを決定するトップダウン活動です。
組織のデータ・アーキテクチャーに関するテクニカル・スキルを持ち、異なるデータソースから関連するデータを取得、抽出できるスキルを持つ人が実行します。
データサイエンティストはデータ(セット)を変数(のセット)であると見ますが、ビジネスアナリストは、データ変数の背後にある意味や組織にとってのそのデータの重要性を理解します。良い構成のチームは、ビジネスアナリストとデータサイエンティストの両方が必要です。
データを収集するには以下のように、受動的データ収集と能動的データ収集があります。
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明治学院大学 経済学部准教授