組織との日常的なトランザクションにおけるユーザーに気付かれないデータ収集です。この種のデータはアナリティクスの目的がなくても利用可能で、そのようなデータの大部分はすでに組織に存在していることがあります。例えば、POS(ポイント・オブ・セールス)データ、インターネット・ブラウザー、ウェブ、モバイルデータなどです。
特定の目標のためにステークホルダーに積極的に情報を求めることです。この種のデータは、組織において最初からは存在しません(サーベイや自己申告が必要)。ビジネスアナリストは、自由回答型または選択肢型の質問の作成方法、リッカート尺度のような評価尺度の使用、二者択一、複数選択肢、質問の流れなどについてサーベイを設計します。
3番目の「データを分析する」領域です。
この領域がBDAで最も重要で、成否の分かれ道とも言えます。それだけ、ビジネスアナリストとデータサイエンティストのコラボレーションが不可欠です。分析する前の計画、準備、探索が重要です。
データ分析の計画では、ビジネスアナリストは次のことを決定します。
【データ準備】
データサイエンティストはデータの準備のため、データソース間の結合またはリンクの確立、データの冗長性を減らすためのデータの正規化、標準化、スケーリング、データの変換、データ・クレンジングを行います。強力な技術的スキルと統計学の知識を使用します。
ビジネスアナリストはデータ分析のためのビジネス上のコンテキストを提供します。ファシリテーション、コラボレーションや引き出しのスキルにより情報を補完します。
【データの探索】
次に、探索的にデータを分析しますが、これはデータサイエンティストの責務です。ビジネス・ドメインの理解が必要な場合はビジネスアナリストが支援します。
探索的データ分析活動は、データ準備活動よりも複雑です。ビジネスアナリストやデータサイエンティストは、潜在的なデータのギャップや変数間の相互関係を発見する機会を提供し、複数の統計的検定を行いデータが調査課題に適しているかどうかを判断します。
【データ分析】
探索的分析によってデータ品質の問題などが解決したら、いよいよ本番の広範な深い「データ分析を実行」します。データ分析の実施には、数学や統計学を応用すること、そしてさまざまなステークホルダーのための調査課題への回答に関連した広範な数学的分析を完了します。
データサイエンティストは広範な数学的スキルを必要とする専門的なテクニックを使用します。(例:相関ルール学習、デシジョン・ツリー分析、k平均法、回帰分析、シミュレーションなど)
ビジネスアナリストは創造的思考スキルを使用して、調査課題に答えるためのさまざまなアプローチを決定します。業界やビジネス・ドメインの知識を活用します。
ビジネスアナリストに必要なもの:
4番目の領域「結果を解釈し報告する」では、収集されたデータからビジネス上の洞察を獲得し、ビジネスデータアナリティクス(BDA)の成果を、関連するステークホルダーに伝達・報告する方法を決めます。
データサイエンティストやビジネスアナリストは、さまざまな方法を用いてデータを理解し洞察を導きます。「データを分析する」領域内では、さまざまな統計ツール、技術的な可視化手法、またはデータ・モデルを使用してデータから最初のレベルの推論を引き出し、パターンを理解します。
データから得られるそのような兆候がビジネスに関連性があり、真のビジネス上の洞察につながるかどうかを、「結果を解釈し報告する」領域の適切な分析によって判断します。
ビジネスアナリストは、収集したデータから洞察を導き出すために、複数の可視化手法を使用します。
技術的可視化:誤差残差グラフ、体系化スキル、システム思考、デザイン思考、創造性、 細部への注意力、ステークホルダー指向、業界知識など全体を俯瞰して結果を見る能力も求められます。
ビジネスアナリストはデータに基づいて結論を導き出します。 データ分析結果をどのようにパッケージ化して伝えるのが最適かを特定し、必要な要約のレベルを決定し、情報をグループ化します。
結果を報告する際に考慮すべきこと:
意思決定者が、データの可視化手法によってアナリティクス情報を、さまざまな視点や粒度のレベルで見ることを可能にします。
ビジネスアナリストはデータ・ストーリーテリングとデータの可視化を連携して、明確で簡潔で、視覚的に魅力的なコミュニケーションを行います。ビジュアル思考やコミュニケーション・スキルを駆使します。
「ビジネス上の意思決定に影響を与えるために結果を活用する」領域では、組織に価値をもたらす意思決定ができるようアナリティクスの結果を活用します。
アナリシスの成功を見極めるための評価を行いますが、成果が見込めない、ソリューションがないときは、BDAのサイクルは繰り返され、新しい「調査課題を特定する」から再度開始します。
価値ある洞察が提供されたら、ビジネスアナリストはビジネス上検討する複数のソリューション選択肢を示しランクを付け、意思決定者に推奨します。
ビジネスアナリストは次のことを行います。
ビジネスアナリストはチェンジを実現するための作業をブレークダウンします。WBSやストーリーマップを作成します。そしてブレーンストーミングや引き出しテクニック、ファシリテーション・スキルも活用します。
ビジネスアナリスト自身がチェンジマネジャーの役割を担うことがあります。チェンジの具現化が最終ゴールで、組織がアナリティクス業務から得られる価値を実現します。ビジネスアナリストはアナリティクス業務とチェンジ具現化の間の継続性を確実にできるため、チェンジマネジャーの役割を果たすのに適任です。
最後に、ビジネスデータアナリティクスの組織レベルの戦略をガイドします。
どのように組織を変革しデータを扱う能力と洞察力を増すことができるかを説明します。
組織戦略の例です。
簡単ですが、IIBA発行の「ビジネスデータアナリティクス・ガイド」の概要を説明しました。理解できたでしょうか。
BDAを通じて分かることはデータ分析をビジネスに活用するためには確立されたプロセス(6つの領域)があり、データサイエンティスト(データアナリスト)とビジネスアナリストのコラボレーションが不可欠であるということです。
データアナリストだけ数多く育成しても肝心のビジネスのことを理解しているビジネスアナリストがいなければビジネス活用には程遠いものになってしまいます。
ビジネスアナリシスはもともとビジネスとITを結ぶ懸け橋の存在としてスタートしたのですが、データ分析とビジネスの間を結ぶ懸け橋も必要になりました。その立場に最も近いのがビジネスアナリシスです。欧米では今、従来のビジネスアナリシスに若干のデータ分析の知識・スキルを加味したビジネスアナリシスが注目されています。それがこのBDAでフォーカスされているビジネスアナリストです。
日本でも早くビジネスアナリシスの重要性が認識され、ビジネスデータアナリティクス(BDA)の専門分野が確立されることを願うばかりです。
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CBAP、(株)KBマネジメント 代表取締役、前IIBA日本支部BABOK担当理事
28年間、YHP/HPにて、営業マネジャー、マーケティングマネジャー、SEマネジャー、SE教育マネジャーを歴任。グローバルシステムの導入でビジネスアナリシスの経験を積む。その後に独立し、KBマネジメント社を設立し現職。現在は、人材教育コンサルタント、研修インストラクターとして、IIBA認定ビジネスアナリシス教育プログラムの開発と提供を手掛ける。
2015年〜2022年(8年間)IIBA日本支部BABOK担当理事
「やさしくわかるBABOK」(秀和システム)(共著)。BABOKRガイドv3(日本語版)監修責任者。キンドル版「よくわかるビジネスアナリシス」(共著)BABOKガイドアジャイル拡張版v2(翻訳・出版)、ビジネスデータアナリティクス・ガイド(翻訳・出版)プロダクトオーナーシップ概論(翻訳・まもなく出版)、資格:CBAP(Certified Business Analysis Professional)(2011年)
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早稲田大学商学学術院教授
早稲田大学大学院国際情報通信研究科教授
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株式会社プロシード 代表取締役
明治学院大学 経済学部准教授